尿潜血って何の病気なの?尿潜血になったら知っておきたい原因と症状
尿潜血検査は血尿などとはちがい、異常が分かりにくく、何も症状が出ていなくても、検診結果で陽性と出てしまうので、驚かれる方も多いと思います。尿潜血で陽性といわれた人のどのくらいがどんな病気であるのかなど、尿潜血についてまとめてみました。症状がでないからこそ、病院で確認する必要があります。
尿潜血って?
尿潜血とは、尿に血が混じること
尿潜血とは、おしっこの中に血液の中の赤血球が混じってしまう状態のことです。
一般的に言われている血尿と尿潜血の違いですが、
目で見ておしっこに血が混じっているとわかるくらい赤かったりすると、血尿といい、
目で見てもよくわからないくらいの血ですと、尿潜血(尿の中に血が潜んでいる状態)といいます。
なんらかの症状が出れば(例えば血尿や激しい腹痛など)、すぐに病院に行こうという気になるのですが、症状がでなくても、なんらかの病気が隠れている可能性があるものを健康診断の検査などでおこなうのです。
もし陽性と判定されたら、一度病院を受診して、精密検査をうけることをおススメします。
尿検査でわかること
健康診断や、クリニックなどで初診でかかる場合など、おしっこを紙コップにだして、提出することがあります。
それが尿検査なのですが、尿検査をおこなうことによっていろいろな病気が分かることがあります。
尿を出すのはちょっと恥ずかしさも伴いますが、これだけの病気が一度の尿で判明する可能性があるのです。苦痛を伴わない検査ですし、一度検査しておけば、安心なので、尿検査は受けるようにしましょう。
尿たんぱく・・・腎機能が低下していると、身体に吸収されるはずのたんぱく質が腎臓から漏れて出てきます。
基準値(-) 要注意(+)(±) 異常(2+以上)
尿糖・・・血液中にある糖が増えすぎると、再吸収されずに尿中に出てきます。糖尿病の方や、甲状腺機能亢進症、腎性糖尿でも陽性が出ます。
基準値(-) 要注意(±) 異常(+)
尿沈渣・・・尿の中にある物質の凝集のことです。いろいろな物質があるのですが、その種類によって、その疾患に由来しているのか判断する材料となります。
尿比重・・・蒸留水に対する尿の比重のことです。この比重の変化を調べると、腎機能の異常などの判断ができます。
尿比重が高いと、糖尿病、脱水症など
尿比重が低いと、腎不全、尿崩症など尿を濃くする機能が低下している可能性を考えます。
尿潜血・・・尿の通り道のどこかに出血した原因があると考えられています。尿路結石、膀胱炎、糸球体腎炎などで陽性と出ることが多いそうです。女性の場合、病気でなくても陽性になる確率が高いです。
基準値(-) 要注意(+)(±) 異常(2+以上)
▼関連記事
検診で尿潜血反応が陽性だと言われたら
尿潜血検査は、血尿などとはちがい、おしっこの色はいつもの色と変わりがないので、異常が分かりにくく、何も症状が出ていない場合が多いので、検診結果で、「陽性」と出てしまうので、驚かれる方も多いと思います。
潜血として、たとえ少量でも血液が混入しているので、これが腎臓や尿路などに異常がある場合に限らず、様々な全身疾患の兆候の可能性も視野に入れ、早期診断、早期治療の手がかりになります。
そのため、尿潜血で陽性の反応がでたら、何らかの原因となる疾患があることを視野に入れて、さらに精密な検査をすることも必要となることもあるそうです。
尿潜血で考えられる疾患で多いのは、糸球体腎炎、腎梗塞、腎のう胞、水腎症、前立腺疾患や、腎臓・尿管・膀胱・尿道等尿の通り道に生じた癌、結石、外傷、結核菌や病原菌による感染症の他、心臓血管疾患、膠原病、出血性素因など、さまざまにあります。
しかし、尿潜血で陽性反応がでたとしても、上記のような疾患ではなく、一過性のものがあるのも事実です。たとえば、激しい運動や過労、寒冷への曝露、月経血の混入などです。
そのため、医師の指示にしたがい、再検査をおこない、潜血反応が続いているのか、詳しい検査が必要か、他の症状がでていないのか、など、冷静に判断し対応していく事が大切だそうです。
尿潜血陽性でも、7割の人に精密検査で異常なしの判定
尿潜血で陽性反応が出た方で、精密検査を行った判定結果についてお知らせしたいと思います。(これは岡山労災病院での結果です。)
尿潜血で陽性反応が出た方の約3割に腎結石,腎のう胞,軽症の腎炎などが発見されたとのことです。
しかも、そのほとんどの方は治療の必要はなく経過観察を続けるだけになるそうです。
また、残る7割の方、実は精密検査をおこなっても「異常なし」だったんです。
この結果に、尿潜血で陽性反応が出て今まで落ち込んでいた方、ちょっとは心が軽くなったのではないでしょうか。
上記のように検診などで判明する症状のない尿潜血陽性ですが、すぐに重大な病気になるということは少ないのです!
ですが、また反対に膀胱がんや腎臓がんなどが発見されるケースがあるのも確かなのです。
症状がない場合でも、ちゃんと信頼のおけるかかりつけ医の診察を受け、医師の指示にしたがうことが大切です。分からないことや疑問に思ったことはしっかり解決しておくことが重要です。
特に多くありがちな陽性となりうる原因
細菌感染などの炎症
尿潜血反応で陽性が出る原因のひとつとして、細菌感染などによる炎症があげられます。尿に血が混じるということは、尿路、つまり「腎臓」「尿管」「膀胱」「尿道」のいずれかの臓器から出血している可能性があり、その出血の原因となるのが、細菌感染などによる炎症だと言われています。
細菌感染などで起こる炎症は、例えば男性よりも女性に多いという「膀胱炎」や、性交渉などがきっかけで、細菌が尿道の入口から尿道内に感染するという「尿道炎」、他にも「前立腺炎」や「腎盂腎炎」などがあります。
こういった細菌感染などの炎症が原因の場合、一般的には排尿後に痛みがあったり、尿が濁ったり、腰や背中が痛くなる、熱が出るなど、尿潜血以外の症状が出ることが多いと言われています。
▼関連記事
尿路結石症
尿潜血反応で陽性が出た場合、尿路結石症が原因の可能性もあります。これは「腎臓」「尿管」「膀胱」「尿道」で構成される尿路のどこかに、結石がひっかかっている状態を指すそうです。
腎臓で排泄された尿は、尿管を通り膀胱に溜まって、尿道から1日数回、体の外へ排出されますが、その途中で不要になった物質が結晶化して大きくなることがあり、これを尿路結石と呼びます。例えば腎臓内で発生したものは「腎結石」、尿管に発生したものは「尿管結石」というように、発生する場所によって名称が変わり、日本では腎臓や尿管に発生する「上部尿路結石症」が、95%を占めると言われています。
結石の成分はシュウ酸、尿酸、カルシウムなどで、その大きさは数ミリから数センチに及ぶものまでと様々です。ただ小さな結石ほど尿管に落ちていきやすく、それが尿管に詰まると、「七転八倒の苦しみ」と言われるように、突然腰や背中、下腹などに激痛が走り、苦しくて一定の姿勢で寝ていられないほどだと言われています。
尿路結石症はそういった突発的に起こる、非常に強い痛みで発見されることもありますが、痛みなどの症状がなく、尿に血が混じっていることでわかることも多いようです。
▼関連記事
尿路のがん
尿潜血の陽性反応は、尿路にできるがんを総称した「尿路のがん」が原因の場合もあります。尿路のがんは胃がんや肺がんほど頻度は高くないものの、泌尿器科領域の3大がんのひとつとされ、男性に多いことが知られています。その原因は他のがんと同様、明確にはわかっていないようですが、喫煙が深く関与している可能性が高いと言われています。
尿路のがんは、がんと聞いて多くの方がイメージする通り、急激に体重が落ちることや、強い痛みに襲われる、といった症状が起こることもありますが、早期から現れることが多い特徴的な症状として、尿潜血や血尿があげられます。
尿潜血反応で陽性と言われた場合、必要以上に不安になるのはよくないものの、尿路がんの可能性も考えられるので、できるだけ早く医療機関を受診することが勧められています。
膀胱がん
膀胱は下腹部にある、尿を溜めて排出する働きを持つ臓器で、そこにできる腫瘍を膀胱腫瘍と呼びます。膀胱の内部にできる腫瘍は、90%以上が悪性のもの、つまりがんだと言われています。
膀胱がんは上でご紹介した尿路のがんのひとつで、人口10万人あたり、毎年6~8人が発症すると言われ、そのほとんどは男性です。また非喫煙者に比べて、2~3倍の割合で喫煙者が発症する傾向にあると言われています。
ただ膀胱がんは、そのほとんどが早期に発見されるため、胃がんと同じようにお腹を切らずに行う、内視鏡手術によって切除が可能とされています。症状として最も多いのは尿潜血や血尿で、それも痛みなど、血尿以外の症状がないものが多く、更に膀胱がんの場合、毎回血尿が出るとは限らないようです。
血尿が出なくなると安心してしまいがちですが、治った訳ではないので、楽観視せず泌尿器科など、医療機関を受診することが勧められています。
▼関連記事
良性疾患
尿潜血反応が陽性だと言われた場合、がんかもしれないと不安になる方も多いようですが、良性疾患が原因ということもあります。良性疾患とは例えば「膀胱炎」など細菌感染で起こる炎症や、「尿管結石」などの尿路結石症など、すぐに命の危険があるものではない疾患を指すそうです。
また良性家族性血尿という、遺伝による糸球体基底膜の異常で、尿潜血反応が陽性になる場合もあるとのことです。逆に「膀胱がん」などの場合は、悪性疾患と呼びます。
なお良性疾患の場合、例えば膀胱炎なら排尿する時の痛みや、残尿感など、尿潜血以外の症状があることから、比較的容易に診断ができると言われています。
良性疾患はご紹介したように、すぐに命の危険があるものではない、とされていますが、治療せずに放っておくと日々の生活に支障が出たり、その後ろに大きな病気が隠れている可能性もあるので、必ず医療機関を受診するようにしましょう。
▼関連記事
ナットクラッカー現象
尿潜血反応が陽性になる原因として、ナットクラッカー現象があげられます。これは左右にある腎臓から還流する静脈のうち、左側にある左腎静脈が、腹部大動脈と上腸間膜動脈によって押し潰されて、血液が停滞し、腎臓内に出血することを指します。
ナットクラッカーとはくるみ割り器のことで、腹部大動脈と上腸間膜動脈の2つの動脈に挟まれている、左の腎静脈の位置関係が、ちょうどくるみ割りに似ていることから、そう名付けられたと言われています。
このナットクラッカー現象は、超音波検査や造影CTなどで診断されます。なおナットクラッカー現象の多くは、時間の経過と共に、側副血行路と呼ばれる、血液循環を維持するために新たに形成される血管の迂回路ができるため、自然に治ることがほとんどだと言われています。
尿潜血の次に行う精密検査ってなに?
1.再度、尿検査を行う
まず、再度尿検査をすることになります。
またこのたびも、尿潜血(+)~(+++)であれば、すぐに尿を遠心分離器で処理する尿沈渣をおこないます。そのとき、医師が沈殿した赤血球や白血球、細胞、結晶成分などの固形成分を顕微鏡で直接見て判断することになります。
尿に沈殿した固形成分の数の増加や有無を調べて、腎臓などに異常がないかの診断や病状の経過観察をおこないます。
▼関連記事
2.尿細胞診を行います。
1.の尿で、尿細胞診検査というものを行います。
尿細胞診とは、個人のクリニックでは行っていないことが多いので、検査を行っている病院に提出することになります。
顕微鏡で病変の細胞を観察し、ガンかどうかなど、性質を詳しく調べる検査になります。
3.超音波検査を行います
医師が、超音波検査で、腎臓や膀胱を観察し異常の有無を検査し、観察します。
超音波を体の表面に当て、その超音波が体の中で反射する様子により、体の断面をみる検査になります。痛みはなく、すぐに結果がわかります。
尿潜血に多い腎結石ってどんな病気?
ざっとここではお話しておきます。
腎臓結石とは、尿路に結石ができることで、尿路結石ともいいます。
結石の成分はカルシウムで、尿路結石の80%以上を占めます。
この他に、痛風の原因になる尿酸や、シスチンというアミノ酸や、尿に細菌が入って感染を起こす腎盂腎炎にできやすいリン酸マグネシウムアンモニウムなども原因としてあげられます。
年間、尿路結石にかかる人は 日本では人口10万人で約53人位です。
また、一生にすると100人のうち4人が一度は尿路結石になるそうです。
そもそもおしっこというのは、身体にとって不必要なものが溶けて、体外へ排出されます。しかし、濃度が濃すぎて溶けきれない上記の成分が析出して核ができ、次第に結石になってきます。
結石は、腎臓の乳頭部という尿のしみ出してくる所でできます。出来てしまった石が腎臓の乳頭部から流れ出て、腎杯や腎盂で詰まってしまったり、もっと移動してしまい尿管に落ちてしまったりすると、痛みなどの症状がでてくるといわれています。
▼関連記事
尿路結石の症状
尿路に結石がありますと、急に、脇腹あたりが激しく差し込むような痛みがでてきます。エビのように体を曲げると多少は楽になるけれど、激痛であるので、慌てて病院に来られる方が多いです。この痛みを疝痛(センツウ)といいます。
このとき、尿路を結石がきずつけることで尿潜血が行ってしまうのです。
また他の症状として、嘔吐や、下腹部や大腿部に痛みが走ることがあります。
結石が小さい場合、おしっこが出てくる勢いで、少しずつ尿管を降りてきて、痛みも下腹のほうに移動してきます。結石が膀胱の近くにある尿管まで降りてくると、おしっこをしても出にくかったり、何となく尿が残った感じをうけます(残尿感)。一旦膀胱に落ちたら、あとはほとんどの場合、自力で出すことができます。
しかし、少し大きな結石になると腎盂や尿管の途中で詰まって、そのまま止まってしまう可能性があります。この場合、しばらく下腹部の痛みは続くのですが、次第に痛みがなくなります。これで治ったと思って、そのまま放置してしまうと、今度は尿が流れなくなり、腎臓が働かなくなってしまう可能性も出てきます。
尿路結石と言われたら、症状が無くなったら安心とは思わずに、早めに泌尿器科に受診することが大切です。
尿路結石の原因
尿路結石の約60%は原因不明の急になってしまう特発性結石症といわれいます。
そして、1~2%が遺伝、また、残り20~40%がもともと何らかの疾患があって結石ができてしまった場合とのことです。
その原因疾患として、尿の流れを停滞させるような病気(たとえば寝たきり状態など)やなんらかのばい菌に感染してなる尿路感染、ある種のホルモンの影響で結石ができることもあるそうです。
尿潜血に多い腎のう胞ってどんな病気?
腎のう胞とは、腎臓にできる玉のようなかたちをした袋のことで、中に水が入っています。これは、1個のこともあるし、数個見られることもあり、多くの場合は無害で健康に被害はないといわれています。
老化の一つで、女性より男性に多いとのことです。
しかし、一部の腎のう胞で、悪性腫瘍になったり、腎のう胞が多くできることで腎機能が低下するものもあります。
腎のう胞の症状
腎のう胞のほとんどの場合が無害で、健康に影響することはないと言われています。検診の際の腹部超音波やCT検査でわかることが多いとのことです。
ただ、のう胞が大きくなりはじめると、腹痛や背部痛、潜血尿、血尿などがおこるそうです。
▼関連記事
尿潜血に多い腎炎ってどんな病気?
糸球体が炎症をおこすことによって、蛋白尿や血尿が出るような病気をあわせて糸球体腎炎といいます。様々な種類があり、一概にはいえません。
大まかに分けて、一年以上腎臓が炎症を起こしている慢性糸球体腎炎と、子どもがなりやすい急性糸球体腎炎があります。
▼関連記事
尿潜血が陽性だと、内科か循環器内科がおススメ
尿潜血が陽性だと、内科または循環器内科が良いと思います。
心配な方は、個人がやっているクリニックではなく、精密検査があるので、入院施設の整ったベッド数が100床以上200床未満の病院で院内処方がある病院がおススメです。
というのも、クリニックだと、一旦検査を受けたあと、すぐに検査結果がでないこともあり、再度別の日に検査結果を聞きに行く必要などがでてきます。(すべてのクリニックではないですが…)
その度に時間と診察料(初診料810円、再診料は360円)、そして薬代や検査代が必要となってきます。クリニックの場合は医学管理等料が(1回700円程度)別途かかりますし、もし、大きな病気が見つかったときは、他の中規模な病院などへ検査をたらいまわしされてしまう可能性もあります。
クリニックでも、信頼できる医師がいるのであれば、時間やお金がかかってもそちらに一度かかって相談してみるのもよいでしょう。
尿潜血のまとめ
尿潜血で陽性と判定され、再検査で不安になっている方も多いと思いますが、尿検査で陰性がでても、ただたんにその時だけ、出血がなかっただけで、本当は病気が隠れていた、なんて人もいます。その人は、また次の検診まで、尿を検査する機会はないので、悪化してしまう恐れがあるのです。
となると、今回、尿潜血が発見されたあなたは、ラッキーだったのかもしれません。
血尿でもなく、尿潜血ですので、ごくわずかな血液が見られただけです。ご自分の身体に向き合う良い機会だったのかもしれません。
ご自身の身体をいたわってあげられるいい機会です。病院を受診し、一度、再検査をうけてみてください。
このまとめのキュレーター
カテゴリ一覧