尿崩症の症状・治療法とは?強烈なのどの渇きや頻尿は尿崩症のサインかも

あまり聞いたことのない「尿崩症」についてわかりやすく症状・原因・治療法などについて解説します。胎児や乳幼児、そして大人までかかってしまう病気です。強烈なのどの渇きや頻尿なんて困ってしまいますよね。症状が比較的わかりやすいので、もしかして?と思ったら病院へ行きましょう。

尿崩症(にょうほうしょう)とは?

尿崩症とは1日で尿が3リットル以上でてしまう病気のこと!

みなさんは1日に尿がどれだけでるかご存知ですか? 健康な成人では1日約1.2~1.5Lの尿がでるそうです。しかし尿崩症になると1日に3L以上もでてしまうようです。健康な人がとる1日の水分量では足りないということになり脱水症状が出るということになります。

なぜそんなにたくさんの尿がでてしまうのでしょうか? 人の体では腎臓に脳から分泌される抗利尿ホルモンが作用して尿の量を調節しています。そのホルモンが腎臓で効かなくなってしまったり産生量や分泌量が減ることでこのようにたくさんの尿がでてしまうようです。

尿崩症には腎性尿崩症と中枢性尿崩症がありそれぞれに先天性と後天性があります。それでは詳しく見てみましょう。

★★用語の解説★★
・抗利尿ホルモン…利尿とは尿の出を良くするという意味です。利尿に抵抗するという意味の「抗」がついて尿の出を抑えるという意味になります。抗利尿ホルモンは脳で産生され必要なときに分泌されます。そして腎臓に作用して尿量を調節しています。このホルモンを「バソプレシン」といいます。

・先天性…生まれつきそうであることという意味で、先天性疾患はうまれつき何らかの障害を持っている場合をいいます。

・後天性…生まれた時は正常であったが、その後事故や環境、食事などさまざま要因で病気や障害を負うことを後天性の疾患といいます。

尿崩症の3大症状と、小児での症状

1.のどの渇き

尿がたくさんでる病気のため、その分を補おうと極端にのどが渇きます。1日に約3L~30Lもの水分を飲んでしまうこともあるようです。また冷水や氷水を欲するのが特徴のようです。それによっていろいろな合併症がおこってくる可能性も増えるということです。

2.多飲

のどが極端に渇くため大量の水分を飲んでしまいます。尿がたくさんでる病気のため水分を大量に摂らないと脱水症になってしまうことがあるようです。脱水症がひどくなると低血圧になったり、ショック症状がでることもあるようです。大量の水分として1日におよそ3Lからなんと30Lも飲んでしまうこともあるようです。

★★用語の解説★★
・ショック症状…脱水によって循環血液量が極端に少なくなってしまい命に関わるほどの低血圧になってしまう症状。

3.多尿

腎臓に作用して尿量を調節する抗利尿ホルモンが効かなくなるため、尿が大量にでます。大体1日に3L以上の尿がでるようです。多い人では20L以上でる人もいるようです。そのため夜間でも頻回にトイレに行かなければならないので睡眠不足にもなってしまうようです。

腎臓では尿を濃縮する働きもありますが、その働きも効かないので薄い尿がでます。白色からうすい黄色のような尿になるといわれています。

4.胎児や新生児の症状は?

この病気は先天性疾患として胎児期や新生児期にも発症することがあるようです。胎児期にはお腹の中で大量に尿がでるため羊水が多くなります。

また、新生児期や乳幼児期ではのどの渇きをうまく伝えることができず、水分がうまく摂取できないと脱水になってしまいけいれんを起こしたり、原因不明の熱をだすこともあるそうです。いつもよりぐずぐずというときなどしっかり観察してあげましょう。

体重があまり増加しなかったり、おねしょで気づくこともあるようなのでパパやママがしっかり成長を観察しましょう。

尿崩症の主な3つの原因

1.腎臓の異常…腎性尿崩症

腎臓ではたくさんの重要な働きがありますが、その中の一つに尿量の調節があります。尿量は脳から分泌される抗利尿ホルモンが腎臓に作用して調節しています。この抗利尿ホルモンのことを「バソプレシン」といいます。

しかし何らかの原因で腎臓のバソプレシンに反応するところが障害を受けると尿量の調節ができなくなってしまい大量の尿がでてしまいます。このように腎臓に異常が生じて尿崩症になってしまった場合を「腎性尿崩症」といいます。腎性尿崩症は、病気を持って生まれた場合と、生まれた後に様々な要因から起こる場合の2種に分かれます。

病気を持って生まれることを先天性と言い、先天性の多くは遺伝子異常により発症します。また、生まれた時は正常で、のちに起こる病状を後天性といいます。この後天性の場合は高カルシウム血症や低カリウム血症、慢性腎盂腎炎、多発性のう胞腎などから発症するようです。

腎性尿崩症はほとんどが先天性(遺伝性)で男性に多いようです。また医薬品の副作用として腎性尿崩症が発症することもあるようです。

2.抗利尿ホルモンの減少…中枢性尿崩症

抗利尿ホルモンであるバソプレシンは脳の視床下部というところで作られ、下垂体に貯えられます。そして体内で必要なときに下垂体から分泌されます。その視床下部や下垂体に何らかの障害が生じると尿崩症になります。このような場合を中枢性尿崩症といいます。中枢性尿崩症にも先天性と後天性があります。

バソプレシンの産生量や分泌量が減ってしまう原因は先天性のものとしては遺伝子異常などがあります。後天性のものは頭部外傷、髄膜炎、脳炎、動脈瘤、結核、脳の手術による損傷などがあるそうです。

★★用語の解説★★
・視床下部…脳の中心にある器官で、バソプレシンなどのさまざまなホルモンを産生したり体温調節など本能行動を司る。

・下垂体…脳の中にある器官で多数のホルモンを分泌する。

3.医薬品による副作用

尿崩症は医薬品の副作用として生じてしまうこともあるようです。その場合は腎性尿崩症となります。原因となる医薬品は抗ウイルス薬、抗リウマチ薬、抗HIV薬、抗菌薬、躁状態治療薬、リチウム製剤などがあるそうです。

副作用として尿崩症が発症する時期は原因となっている医薬品を服用し始めてから数日から1年ぐらいが多いそうです。

尿崩症の治療って?

1.腎性尿崩症の治療法とは

先天性の腎性尿崩症は完治させるのが残念ながら難しいようです。症状が軽度の場合はバソプレシンなどの抗利尿ホルモン薬を使用して尿量を減らすそうです。

先天性の場合は生まれてからすぐ症状がでるようです。生後すぐの赤ちゃんや乳幼児はすぐに治療を開始しないと脳の発達に遅れが生じてしまうこともあるとのことです。また水分管理がうまくいかず脱水症状を繰り返すと身体の発達にも問題が生じるそうです。ただし、治療をきちんと行えば正常に問題なく成長する可能性が高くなるので、治療はとても重要となります。

後天性の場合は原因となっている疾患の治療に努め、十分な水をしっかりと摂取させます。また尿量を減らす作用のある薬の服用や食事療法(減塩、低たんぱく食)などを治療として行うことがあるそうです。

2.中枢性尿崩症の治療法とは

中枢性尿崩症は先天性でも後天性でもバソプレシンの産生量や分泌量が減少しているので、それを補ってあげます。具体的にはバソプレシンかそれに類似したデスモプレシンという薬を点鼻薬として使用します。この薬には点鼻薬のほかにも口腔内崩壊錠もあるそうです。

また、後天性の場合はその原因となっている疾患の治療に努めます。治療法の例としては1日に2回決められた量の薬を点鼻し、水中毒にならないよう注意します。また毎日の体重測定と血清ナトリウム濃度も適正に保つようコントロールされます。

★★用語の解説★★
水中毒…水分の摂り過ぎで生じる中毒症状。けいれんや低ナトリウム血症などを引き起こす。ナトリウムは体内の水分を調節する働きがあります。

3.医薬品による副作用が考えられるときは

医薬品の副作用として尿崩症が考えられる場合は原因となっている薬の服用を中止します。服用を中止して少なくとも約1ヶ月で自然に良くなってくるようです。医薬品の副作用はすぐに出る場合と少し時間がかかって出ることもありますので、内服しているときは常に注意するようにしましょう。

原因となっている薬の服用をやめても症状が続く場合は尿量を減少させる薬などを使用して治療することもあるそうです。

尿崩症の検査は? 

尿崩症と同じ多尿の症状を示す糖尿病や心因性多飲症などの病気と判別、また腎性か中枢性かを診断するためにも検査は重要となります。

1.血液検査

血液中のバソプレシン量や電解質、浸透圧、また腎臓の機能がわかる血清尿素窒素や血清クレアチニンなどを測定します。

特に電解質である血清ナトリウム値は重要になります。尿が大量にでて、脱水状態になると高ナトリウム血症になることもあります。

2.尿検査

尿中のバソプレシン量や浸透圧、尿糖、尿量などを測定します。

3.水制限試験

約12時間の間水分摂取を禁止し、その間決まった時間に尿量や体重の測定、採血をして血中の電解質濃度を測定します。12時間が経過したらバソプレシンを注射し、バソプレシンの効果によって多尿が止まり、心拍数などが正常に近づけば中枢性尿崩症と診断されるようです。

またバソプレシンを注射したあとも濃縮されない薄い尿が続き、心拍数などに変化が無い場合は腎性尿崩症となるようです。

4.バソプレシン負荷試験

バソプレシンを注射して30分ごとに尿量を測ります。尿量が減っていき、尿の浸透圧が上昇すれば中枢性尿崩症となるようです。

5.MRI(画像検査)

磁力を使った検査方法で、安静に横になって行う検査です。放射線を使用しないため被ばくの危険はありませんが、磁石の大きな音がしたり、狭い空間いはいるため閉所恐怖症の方は検査できません。また、磁力を使うため、体の中に鉄が入っている人などは行うことができないといわれています。
ここでは、バソプレシンを分泌する脳の下垂体に異常がないかを検査します。

6.高張食塩水負荷試験

濃度5%などの高張食塩水を注射して血しょう浸透圧を上昇させて、バソプレシンがどれくらい分泌されるかを検査します。

尿崩症の経過の見通し(予後)は?

先天性の腎性尿崩症は遺伝性が多いということもあり新生児や乳幼児などでは水分調節不良による中枢神経障害にもっとも注意をしなければならないようです。治療が遅れると尿路系に異常をきたし重症化してしまうと腎不全になってしまうこともあるそうです。しかし脱水症をしっかり予防すれば予後は良好なようです。

脱水症に陥らないためにのどの渇きを感じたらすぐに水分を摂ることが大事です。特に乳幼児や高齢者は頻繁に水分を摂らせます。

中枢性尿崩症は約10万人に7から10人というまれな病気だそうです。そして残念ながら完治が難しい病気でもあるようです。しかし尿崩症は後天性の場合の予後は原因となっている疾患によってさまざまですが、尿崩症自体はバソプレシンやデスモプレシンなどの使用で良好に保つことができるようです。

尿崩症は何科? 

尿崩症の専門家は内分泌科となりますが、初めは内科でかかっても問題ありません。症状や検査からある程度診断がつけば内分泌科を紹介してもらえるでしょう。

まずは自覚症状があればなるべく早く病院を受診することが大事です。

☆尿崩症のまとめ☆

いかがでしたか? 尿崩症という病名はあまり身近な病名ではないですよね。尿が1日3L以上、もしくはそれ以上でてさらに多い人では20Lも水分を摂ってしまう。そしてつきまとう極度ののどの渇き、トイレにも何回も行かないといけないません。こうなってしまうと日常生活もままなりません。

尿崩症は原因となっている疾患をしっかりと治療したり、バソプレシンの点鼻薬などをうまく使用すれば予後は比較的良好なようなのです。

このように、口渇・多飲・多尿の症状が生じた場合は早めに病院を受診しましょう。また同じような症状を示す糖尿病などともしっかり鑑別することも大事です。尿崩症と診断されたらしっかり治療し、尿崩症ではなく糖尿病だった場合でも決してほったらかしにしないようにしましょう。

※先天性腎性尿崩症と先天性中枢性尿崩症は難病に指定されているようです。詳しくは下記リンクを参照してください。

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