高血圧を予防するには?食事と適切な薬を飲むことがとても大切です
高血圧の薬、実は日本で使えるものだけでも何十種類もあるんです。ここでは高血圧の合併症や薬の種類・副作用や高血圧予防のための食習慣まで一挙ご紹介しています。
高血圧の薬とはどんなもの?
「定期検診で高血圧だと診断された」という方も多いかもしれません。それもそのはず、なんと、日本全体で1000万人以上が高血圧だと考えられているんです。その一方で、高血圧の治療を受けている人は70万人以下。このことから、高血圧の方のほとんどが何の治療も受けていないことが想像できます。
高血圧は、お薬でコントールすることができることが多い病気ですが、それと同時にその薬の種類も非常にたくさんあります。ここでは、高血圧という病気のご説明、病院でよく処方される薬のご紹介をしていきます。
高血圧の症状は?
自覚症状はほとんどない
高血圧で最も恐ろしいのが、これといった自覚症状がないことです。これはつまり、高血圧が悪化しても、お薬によって良くなっても、ご自身で感じ取れる変化はあまり無いことを意味しています。
ではなぜ高血圧は治療しないといけないのでしょうか。それは、高血圧のまま放っておくと様々な合併症を引き起こし、重い病気を引き起こして命に関わることまであるからです。このような高血圧の特徴を指して、「サイレントキラー」つまり、沈黙の殺し屋と例えられることもあるほどです。
頭痛、めまいが起こることも
かといって、高血圧が全くの無症状というわけではありません。場合によって、頭痛やめまい、吐き気を感じることがあります。実際に吐いてしまったり、視界がダブって見えたりということがあることも知られています。胸が痛くなる・息が浅くなるなどの症状が現れることもあります。
これらの症状は、血圧が急に上がった時などに起こることが多いです。その一方で、症状が全く現れない方もたくさんおられるので注意が必要です。症状が出ないからといって高血圧ではないと決めつけないことが大切でしょう。
怖いのは、症状ではなく高血圧の合併症
さきほど、高血圧になると様々な合併症を引き起こす可能性があるとお話ししました。この合併症、怖い病気がたくさん含まれているんです。命に関わる合併症は、心臓・脳・腎臓に現れることが多いです。心疾患(心臓の病気)であれば心不全、狭心症や心筋梗塞などがあります。
脳であれば、脳血管障害といって脳出血や脳梗塞・くも膜下出血など、これまた命に関わる病気に繋がる可能性があります。高血圧によって腎臓が悪くなり、腎不全になってしまう方もおられます。
高血圧の薬はなにがある?
いくつかの種類がある
高血圧薬を治療するお薬はいくつもの種類があり、それぞれが別のメカニズムで血圧を下げています。さらに、同じ種類のお薬でも複数の商品が存在しています。病院では、これらのお薬の効き方や患者さんの状態などを総合的に判断して、どの薬が最適なのか決められていきます。
病院を受診し処方してもらう
高血圧を治療するお薬は、基本的には病院を受診し、医師から処方してもらうことになります。病院では患者さんごとに適したお薬が選ばれることになります。病院によっては同時に生活習慣の指導や、食生活の指導を行ってくれるところもあるようです。
市販の薬やサプリメントでも、高血圧対策を銘打っているものはありますが、医師から処方してもらう方が安心でき、効果も期待できるといえるでしょう。
飲み続けて血圧をコントロール
高血圧のお薬は、血圧を下げるためにはずっと飲み続ける必要があります。これは、高血圧薬は基本的には高血圧の原因を治すものではなく、対症療法にすぎないからです。なので、一旦血圧が下がったからといって飲むのをやめるとまた血圧が上がってしまうことになります。
なお、高血圧の方のうち、1割ほどは「二次性高血圧」と呼ばれる、原因が分かっている高血圧だと言われています(ほとんどの方は原因のよく分かっていない「本態性高血圧」と呼ばれるものです)。この場合は、もとの病気を治療すれば高血圧が治る可能性もあります。二次性高血圧かどうかは病院で様々な検査を行うことによって調べられます。
下がらないときは医師に相談
お薬を飲んでも血圧が下がらない、あるいは血圧が下がりすぎるといった場合には、自分の判断で飲むのをやめたりせず、医師に相談する方が良いでしょう。ただ、副作用かな、と思えるような危険な徴候があった場合にはひとまず中断してすぐに医師に相談する、という対処法も考えられますね。
妊娠高血圧の場合に注意することとは?
妊娠高血圧とは、ごく簡単にいえば妊娠中に高血圧になってしまう病気のことです(実際には細かい診断項目があり、医師により診断されます)。妊娠高血圧では、赤ちゃんやお母さんに様々な悪影響があることが知られています。例えば子癇(しかん)というけいれん発作の一種や、胎盤の早期剥離になりやすくなります。
妊娠高血圧は普通の高血圧とは異なった病気であり、治療法も異なってきます。妊娠高血圧と診断された場合には必ず医師の指示に従右葉にしてください。
ジェネリック薬が使えることも
ジェネリック薬とは、新しく開発された薬の特許が切れた後、別の製薬会社などがつくったお薬のことです。研究開発費がかからず、同じような成分でつくることができるために値段が大幅に安くなることが多いです。高血圧薬では、1年間の薬代が1万円近く安くなることもあるようです。
ただ、ジェネリック薬は、もとの薬と製造方法や添加物は異なっていることがあり、それによって新たな副作用が起こる可能性も否定はできません。また、お薬によってはジェネリック薬が存在しない物もあります。
よく使われる高血圧薬をご紹介
カルシウム拮抗薬
カルシウム拮抗薬は、血管の中にある、血管を収縮させる筋肉を緩めることで血圧を下げるお薬です。血圧を下げる力が強く、第一選択として使われることの非常に多い薬です。
また、糖尿病や脂質異常症の持病がある方にも使いやすいお薬としても知られています。日本で販売されているカルシウム拮抗薬は10種類以上あり、アムロジン、ノルバスク、アダラート、ヘルベッサーなどが有名です(いずれも医師の処方箋が必要なお薬です)。
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬
アンジオテンシンII (アンギオテンシンIIと書かれることもあります)は、ホルモンの一種で、血圧を上昇させる効果があります。アンジオテンシンII受容体拮抗薬(略して「ARB」と呼ばれることが多いです)は、アンジオテンシンIIが血管に結合するのを防ぎ、血管を緩める働きがあります。
また、「アルドステロン」と呼ばれる、体内に水を貯めこもうとするホルモンの分泌を抑えることで血液量を減らし、血圧を下げる効果もあります。お薬の商品名としてはディオバン、ミカルディス、オルメテックなどが知られます。これらも処方箋が必要な薬剤です。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(「ACE阻害薬」と略されます)は、先ほどのARBに似たお薬です。先ほどのARBは、アンジオテンシンIIが血管などにくっつかないようにする薬でした。
ACE阻害薬は、アンジオテンシン「I」というホルモンがアンジオテンシン「II」に変換されるのを妨げるお薬です。レニベース、コバシル、コナンといった薬があります。
利尿剤
利尿剤は、体の中の余分な水分を尿として排出させる薬です。水分量を減らすことで血液の量も減り、血圧を下げることができます。利尿剤には非常に沢山の種類がありますが、大別するとサイアザイド系利尿薬・ループ利尿薬・カリウム保持性利尿薬という3つの種類に分けられます。
種類ごとに副作用や、効果が異なっているためこちらも医師によって適した薬が選ばれることになります。商品名としてはラシックス、アルダクトンなどがよく知られています。
β遮断薬
β遮断薬は、アドレナリンやノルアドレナリンが心臓に結合するのを抑え、心臓の働きをゆっくりにすることで血圧を下げる効果があります(他にもいくつかの血圧を下げるメカニズムがあります)。メインテート、ミケランといった名称で処方されます。
α遮断薬
α遮断薬は、アドレナリンやノルアドレナリンが血管に結合するのを抑えるお薬です。β遮断薬は心臓に作用していましたが、α遮断薬は血管です。血管に作用することで血管を拡げることができ、結果として血圧が下がります。カルデナリン、ミニプレスなどの薬が知られています。
配合剤
配合剤は、今まで見てきた複数のお薬を組み合わせてひとつの薬にしたものです。例えば「ユニシア」や「エックスフォージ」はARBとカルシウム拮抗薬を組み合わせた薬です。
高血圧薬の副作用にはどんなものがあるの?
自覚症状
高血圧薬を飲み始めると、だるさや食欲不振を感じることがあります。これは、薬の副作用というよりも血圧が一気に下がったことによる影響であることが多いようです。
また、薬の種類によっては咳が出る場合もあります。これらの症状が現れたら医師に必ず相談するようにしてくださいね。場合によっては薬が変更になうこともあるかもしれません。
血液検査でわかること
頻度はそれほど高くないと考えられますが、人によっては肝機能障害や、血清のカリウムが低下する低カリウム血症、血清の尿酸値が上昇する高尿酸血症になることがあります。これらは初期のうちは自覚症状がなく、自分では気づけません。心配な方は定期的に採血を受けるなどして検査しても良いかもしれません。
どんな食事にすればいい?
塩分を減らす
食事の塩分量を減らすことで、高血圧を予防したり、高血圧を軽くしたりできることがあります。一日1gの減塩ができれば、血圧が1mmHg下がるとも考えられています。
1しか下がらないのでは大した効果はないように思われるかもしれません。ですが、アメリカの研究では、アメリカ全体で一日1gの減塩をすると心臓病・脳卒中ともに2万人近く減らすことができると予想されています。ほんの少しでも、食事から摂る塩分を減らすことは効果があるのです。
日本でも、2015年に厚生労働省が一日の食塩の摂取目安を引き下げました。新しい基準では、男性が一日8g未満、女性が一日7g未満となっています。売っているものの食塩の量を確認してなるべく少なめのものを選んだり、普段使う調味料を少しでも減らしたりといった工夫をして健康的な食事にしたいものですね。
カリウムをとる
高血圧を予防するには、減塩を心がけることの他にカリウムを多く摂ることも大切です。これは、カリウムが体の中の余分な塩分を取り除いてくれる働きがあるためです。カリウムは、リンゴやバナナ・ほうれん草・納豆などに多く含まれています。
おすすめレシピ
減塩で、カリウムを多く含んだレシピを二つご紹介しています。ひとつ目は、ズッキーニとニンジンを使った、オリーブオイルベースのドレッシングのサラダです。
市販のドレッシングでは、もとから入っている食塩の量を調節することができませんがこのレシピだと自分で食塩の量を調節できます。舌を薄味に慣らしていくつもりで、徐々に食塩を減らして行くと良いかもしれませんね。
ふたつ目は、塩を使わずにレモンとコショウだけで味付けした鶏胸肉のレシピ。胸肉に砂糖を揉み込み、片栗粉をまぶしてから茹で、そこにコショウとスライスレモンで味付けしています。食塩を一切使っていないので減塩には持って来いですね。
高血圧はとても身近な病気
日本人の10人に1人近くが高血圧。身近で、誰でもなる病気と考えても良いでしょう。しかも、高血圧になっても自分では気づかず、じわじわと血管にダメージが加わっていきます。
病院や市役所、ジムなどには無料で使える血圧計がおかれていることもあります。不安な方は一度測ってみることをおすすめ致します。また、高血圧の薬は、非常に多くの種類があります。特徴や副作用をあらかじめ知っておけば、実際に治療を受けられる際に安心材料になるのではないかと思います。
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