更年期障害の症状って?男性・若い人も注意!チェックリストでセルフ診断!
中高年女性特有の症状と思われがちな更年期障害ですが、実は30代~40代の若い女性や男性にも更年期障害があるって知ってますか?更年期障害の代表的な症状、3つの更年期障害の原因と特徴、診察や治療方法、症状を緩和するための対策などをまとめてみました。セルフチェックシートもあるので、「もしかして…」と気になっている人はチェックしてみてくださいね。
更年期障害の症状って?
何となく気分が晴れない、何となく身体がだるい、何となく夜もぐっすり眠れない…。こんな「何となく不調」を感じていませんか?それは、もしかしたら「更年期障害」かもしれません。更年期障害が起こるのは中年女性だけでしょ?なんて大間違い!実は30代の人や男性にも見られる症状なんです。
「何となく不調」を感じている人、「もしかして更年期?」と自覚症状がある人、パートナーの様子が「ちょっと気になる…」という人は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。更年期のチェック方法や辛い症状を緩和する方法などを紹介しましょう。
約10年も続く!?更年期障害とは
女性の閉経時期は、一般的に50歳前後だと言われています。更年期とはその閉経を挟む10年前後、45歳~55歳ぐらいまでの期間をさしています。生殖機能が消滅した後、その後の自分とどう向き合っていくのか?いかに健康的な生活を送るか?を考える、女性にとっては節目の時期。肉体的にも精神的にも不安定な状態になることから「揺らぎ期」と呼ばれることもあります。
更年期障害は病気なの?
更年期障害は、ホルモンバランスの乱れが原因で起る自律失調症状、心理的ストレスによる精神的な疾患、加齢によって起こる身体症状などが複雑に絡み合って起る不定愁訴の総称です。
不定愁訴とは、自覚症状はあるのに検査をしても原因となる病気が見つからない状態のことで、イライラや不眠、疲労感などの「何となく不調」や、頭痛やめまいなど、原因となる病気がいくつも考えられ、原因がはっきりしない場合などがこれにあたります。
更年期障害にも種類があるのを知っていますか?
更年期障害は中高年の女性特有の症状だと思っている人が多いと思いますが、実はそうではありません。
その1つが「若年性更年期障害」。最近では、30代~40代前半の人の中にも生理不順や無月経などの症状に悩む人が増えています。これは過度なダイエットや日々のストレスによって卵巣の機能が低下し、ホルモンの分泌が低下してしまっているためだと考えられています。
このような状態の人には、中高年の更年期障害と同様の症状が表れることがあります。これが「若年性更年期障害」と言われるもので、「プレ更年期」とも呼ばれています。
そして男性の更年期障害と言われているのが、「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」です。男性の更年期障害もホルモンバランスの乱れや加齢による身体症状の変化が原因で起るもので、女性の更年期と同じような症状が見られるようになります。
3つの更年期症状に違いはあるの?
更年期障害は、非常に症状が重く病院での治療が必要になるほどの人もいれば、更年期を自覚することなく過ごしてしまうほど軽い人もいます。またその症状の現れ方も精神的な面が強くでる人もいれば、身体的な辛さを訴える人もいるなど、人によって異なるものです。
若年性更年期や男性の更年期は、種類は違いますがその主な原因は「ホルモンバランスの乱れ」にあるため、女性特有の更年期と同様、人によって症状の出方は異なります。また3つの更年期の症状には、共通する症状もあれば、それぞれ特有の症状もあります。
更年期障害の代表的な症状とは
では、更年期障害の代表的な12の症状を説明しましょう。これらは3つの更年期の症状に共通する症状です。
ホットフラッシュ
更年期障害で最も多くみられるのが、「ホットフラッシュ」。いわゆる「のぼせ・ほてり」と言った症状で、突然、顔や身体がカーと熱くなって汗が止まらなくなることがあります。これは自律神経の働きが乱れることで、血管の収縮や拡張といったコントロールが出来なくなることで起こります。
多汗
ホットフラッシュと同時に起こるのが大量の汗をかく「スウェッティング」という症状です。エアコンの効いた室内や冬など、特に「暑い」と感じているわけではないのに、頭や首筋、胸や背中などから大量の汗が出て止まらなくなることもあります。「こんな時になんで?」「大量の汗をかいて恥ずかしい」など、気にすれば気にするほど汗が止まらなくなってしまいます。
肩こり・頭痛
今まで感じたことがなかったのに、急に肩がこるようになったり、元々コリ症だった人は、首や肩のコリをさらに強く感じることが多くなります。ホットフラッシュは更年期障害の代表的な症状で、閉経後の女性の40~80%が感じています。しかし、日本ではホットフラッシュより肩こりの症状を訴える人のほうが多いというデータもあるようです。
同じように頭痛が悪化してくることがあります。更年期の頭痛は、エストロゲンの分泌が低下することによって、脳の血管の血管壁が痙攣したり収縮してしまうことで起こります。
その症状は、全体が重い感じがする、頭の一部だけが痛い、うなじが痛いなど、人によって異なりますが、頭痛が起きるのは更年期だけが原因とは限りません。頭痛が頻発する場合は、病院できちんと検査を受けましょう。
不眠・眠気
なかなか寝付けない、眠りが浅い、夜中や早朝に目が覚めてしまうなどの不眠の症状も、自律神経の乱れによって起こるものです。このような睡眠障害の状況が続けば、当然日中に眠気を感じたり、倦怠感を感じることも多くなるでしょう。
日中は、軽く疲労感を感じる程度に身体を動かしたり、ぬるめのお風呂にゆっくりつかるなど、自然な眠りに入れるような工夫をしてみましょう。
めまい
急に立ち上がったときに、血圧が急激に下がって目の前が真っ暗になってしまう「立ちくらみ」や頭を動かしたときに天井や壁がグルグルと回転してみえる「回転性めまい」などを感じることもあります。
めまいを生じるのは、主に耳に異常がある場合が多いのですが、更年期の場合は、加齢による血圧の異常、自律神経の乱れ、首コリなどが原因でめまいを起こすと考えられています。
動悸・息切れ・不整脈
ちょっとした階段の登り降りで息が上がってしまったり、激しい運動や興奮しているわけでもないのに心臓がドキドキするなど、突然に起こる「動悸・息切れ」も更年期症状の1つです。
また、脈拍が早くなったり、脈が飛んだような感じがする「不整脈」が見られることもあります。これらは自律神経の乱れによって起こる症状ですが、呼吸器や循環器系に異常がある場合もあるので注意が必要です。
冷え・むくみ
冷えやむくみはもともと女性にはよく見られる症状ですが、男性も更年期障害になると冷えやむくみといった症状が見られるようになるようです。自律神経の働きが低下すると、血行不良になり新陳代謝も低下してしまいます。これが手足の先が冷たくなったり、むくみを症じる原因です。
肌質の変化
ホルモン分泌が低下すると、皮下のコラーゲン、脂肪、水分保持力など、肌のバリア機能が低下します。今までは問題なく使えていたスキンケア製品や衣類などの刺激でかゆみが生じたり、カサカサとした乾燥肌になる人もいるようです。もともと肌が弱い人やアレルギー体質の人は、蕁麻疹や湿疹を頻発することもあります。
またこのような症状は、膣にも見られるようになります。膣内の分泌液も減ってしまうため自浄作用が低下して膣炎を起こしたり、性交痛が強くなることから、性行為から遠ざかってしまう人も多いようです。
頻尿・尿漏れ
男性より女性に多く見られるのが、頻尿・尿漏れといった泌尿器系の症状です。40歳以上の女性の41%が尿失禁について悩んでいるというデータもあるほどで、これは女性の尿道が直線的で短いことや膀胱や尿道を支える骨盤底筋が出産により緩んでしまっていることなどが原因だと言われています。
更年期でホルモンの分泌が低下してしまうと、尿道粘膜や粘膜下組織が萎縮・硬化し、尿道内圧を保つ血管床も減少します。さらに交感神経受容体も減少することから、尿失禁に拍車がかかると言われています。
尿漏れには、咳をしたときや大笑いしたときなど、腹圧がかかったときに起こる「腹圧性尿失禁」と尿意が強くなりトイレまで間に合わずに尿漏れしてしまう「切迫性尿失禁」の2つがあり、「切迫性尿失禁」の軽度なものを頻尿と言います。
抜け毛・薄毛
女性ホルモンの分泌が減少し相対的に男性ホルモンが過剰になることによって起こるのが、抜け毛や薄毛です。生え際から頭頂部にかけて抜け毛が進行し、毛髪も細く軟毛化してしまうために、全体的に髪の毛が薄くなってしまいます。
最初は太い毛髪から抜け始めますが、徐々に細い毛も抜けていくようになります。男性のAGAと似たような症状ですが、髪の毛がすべて抜け落ちてしまうようなことはありません。
不安定な精神状態
ちょっとしたことで不安になったり、イライラと怒りっぽくなったりするなど、感情の起伏が激しくなります。自分をコントロールすることができずに、自己嫌悪を感じることも多くなります。
また、やる気がおきない、わけもなく悲しくなる、いつも不安感がある、何を見ても感動できないなど「うつ病」と同じような精神状態になることもありますが、更年期障害で起る不安定な精神状態とうつ病の精神状態は別物です。病院で検査を受ければ適切な治療を行うことができますので、我慢せずに病院を受診するようにしましょう。
倦怠感
疲れやだるさなどの倦怠感を感じる人も多くいます。「やる気がおきない」「身体が重い」などの感覚は、なかなか周囲に人には理解してもらえずに、それが精神的なストレスに繋がってしまうという悪循環にもなりかねません。ホルモンを調整する服用薬や経皮剤(塗り薬・張り薬)などで改善が期待できるので、辛いときにはムリをしないことが大切です。
更年期障害セルフチェック!あなたはいくつ当てはまる?
更年期に入ると心と身体には様々な変化が表れます。症状の現れ方や症状の重さは人それぞれですが、今の自分がどの程度当てはまるのかチェックしてみましょう。
女性の更年期障害チェックリスト
女性の更年期障害の症状は、日本産科婦人科学会の「日本人女性の更年期症状評価表」に沿って診断されます。評価は症状の程度が「強い」「弱い」「無い」の3段階で行われ、当てはまるものが多いほど「更年期の症状が重い」ということになります。若年性更年期障害でも、症状の現れ方はほぼ同じです。
1. 顔や上半身がほてる(熱くなる)
2. 汗をかきやすい
3. 夜なかなか寝付かれない
4. 夜眠っても目をさましやすい
5. 興奮しやすくイライラすることが多い
6. いつも不安感がある
7. ささいなことが気になる
8. くよくよし、ゆううつな事が多い
9. 無気力で、疲れやすい
10. 目が疲れる
11. ものごとが覚えにくかったり、物忘れが多い
12. めまいがある
13. 胸がどきどきする
14. 胸がしめつけられる
15. 頭が重かったり、頭痛がよくする
16. 肩や首がこる
17. 背中や腰が痛む
18. 手足の節々(関節)の痛みがある
19. 腰や手足が冷える
20. 手足(指)がしびれる
21. 最近、音に敏感である
男性の更年期障害チェックリスト
男性の更年期障害「LOH症候群」のチェックリストです。このリストも症状の程度によって診断します。
非常に重い:5点、重い:4点 中程度:3点 軽い:2点 ない:1点でカウントし、合計点が17~26点は低い、27~36点が注意、36~49点は高い、50点以上は重度と判定されます。
1.総合的に調子が思わしくない
2.関節や筋肉の痛みを感じる
3.思いがけず突然汗が出る
4.寝つきが悪い、眠れないなどの睡眠の悩みがある
5.よく眠くなる・疲れを感じる
6.イライラする
7.神経質になった(緊張しやすい・落ち着きがない)
8.不安感を感じる
9.身体の疲労や行動力の減退を感じる
10.筋力の低下
11.憂うつな気分(落ち込む・意欲がわかない)
12.「人生の絶頂期は過ぎた」と感じる
13.力尽きた、どん底にいると感じる
14.ひげの伸びが遅くなった
15.性的能力が衰えた
16.早期勃起(朝立ち)の回数が減少した
17.性欲が低下した
更年期障害をアプリでチェック!
「もしかしたら更年期かも?」と、ちょっと気になってきた方におススメなのが更年期障害の度合いをチェックしてくれるスマートフォンアプリです。
■簡単更年期障害チェック
産婦人科医小山嵩夫氏が開発した更年期障害を定量的に図る指数「更年期指数(SMI)」によって、今の自分の状態をチェックすることができる無料アプリ「簡単更年期障害チェック」です。
病院で診察をうけるべきかどうか?の1つの目安として活用することができます。アンドロイドのみの対応ですが、気になった方は探してみてください。
■ルナルナエイジング
生理日予測や女性の健康管理アプリでお馴染みの「ルナルナ」ですが、30代後半から50代女性向けには、健康管理サイト「ルナルナエイジング」があります。
これはアプリではなくモバイルからマイメニュー登録をして行う有料会員制サイトで、会員登録をすれば、更年期の症状チェックや体調記録の他、専門家によるアドバイスやサポートを受けることができます。月額324円(税込み)。
一般的な女性の更年期障害
さて、今まで見てきたように、3つの更年期障害の代表的な症状は共通しています。しかし、原因はそれぞれ異なっていて、女性、男性、それぞれに特有の症状も見られます。まずは一般的な女性の更年期障害の原因や特有の症状から紹介しましょう。
女性の更年期障害が発症する時期
更年期とは「性的成熟状態から、卵巣機能が完全に消失するまでの期間」と定義されており、具体的には閉経を挟む10年間、一般的には45歳~55歳ぐらいまでの年齢を指しています。
ただし閉経時期には個人差があるため、40代前半から更年期障害の症状を感じる人もいます。この時期は心も身体も不安定な状態が続きますが、60代に入る頃には症状が落ち着いてくることがほとんどです。
女性の更年期障害の原因
更年期の不快な症状は、女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌量と大きく関わります。エストロゲンの分泌量は、初潮を迎えた10代から増えはじめ、性成熟期である20代中期にピークを迎えます。
その後ゆっくりと下降しはじめるのですが、40代に入ると閉経に向かって急激に減少しはじめます。この突然の変化に身体がついていけなくなることから、様々な不調が現れるようになります。
エストロゲンが減少すると、脳の視床下部にある下垂体は「もっとエストロゲンを出すように」と指令を出しますが、卵巣機能が低下してるためエストロゲンの分泌は増えません。これにより脳は混乱をしてしまうのです。脳の混乱は、視床下部にある自律神経の中枢にも影響を与え、自律神経失調症状を引き起こします。
またこの時期の女性は、子どもの独立や夫との関係性の変化など、家庭や社会環境の変化からストレスを感じやすい状態にあります。このような心理的ストレスが大脳皮質-大脳辺縁系に影響を与え、情緒不安定や憂うつなどの精神症状を引き起こすことも、更年期障害の症状を複雑にする要因になっているようです。
女性の更年期特有の症状
更年期障害の代表的な症状以外にも、女性の更年期特有の症状があります。
■閉経に伴う月経異常
閉経に向かうこの時期は、排卵のシステムにも乱れが生じて生理不順になったり経血の量にも変化が見られるようになります。そしてその変化には特徴的な流れがあります。
はじめは月経周期が24日前後と短くなり、続いて不正出血が多くなります。不正出血は月経と違いますが、その見分けがつかないと、ダラダラと月経が長引くような感じがすると思います。
そのうちに卵胞の発育に時間がかかるようになり、月経周期が長くなってきます。2,3ヶ月に1回や半年に1回などになることもあります。1年間まったく月経がなく、卵胞の発育が見られなくなると「閉経」ということになります。
■不正出血
月経異常で見られる不正出血は、卵胞の反応性が悪くなり途中で発育が停止してしまうために起こります。これを更年期出血と言います。また、更年期障害の治療のために、黄体ホルモン製剤を周期的に服用してる場合にも不正出血が起こることがあるようです。
このように閉経までの過程で起る不正出血ならば、それほど心配する必要はありませんが、子宮体がん、子宮頸がんなど女性特有の重篤な病気が隠れている可能性もあります。不正出血が起こったり、出血が止まらないような場合は「更年期だから」で済まさずに、婦人科を受診するようにしましょう。
20代でも要注意!若年性更年期障害とは
最近若い女性に増えてきているという「若年性更年期障害」。一般的な女性の更年期障害と何が違うのかを説明しましょう。
若年性更年期障害が発症する時期
卵巣の老化は30代半ばから始まると言われています。本格的な更年期を迎える前の30代後半から40代前半の「プレ更年期」の段階で月経不順などの症状が見られるのは、閉経の準備が始まっている可能性があります。
また、過度なダイエットやストレスにより生理が止まってしまう「無月経」を放置すると「早発閉経」に繋がる可能性もあります。このような人には更年期と同じような症状が見られ、早い人は20代後半で発症することもあるようです。
若年性更年期の原因
若年性更年期障害の原因は、ストレス、ムリなダイエット、偏った食事、不規則な生活などにより卵巣機能が低下し、ホルモンバランスが崩れることによって起ると考えられています。仕事のプレッシャーや結婚・出産といった生活の変化もストレスの要因になるため、20代、30代に増えているというのもうなずけますね。
更年期障害の症状は、心因性の「自律神経失調症」や「月経前症候群(PMS)」ともよく似ています。適切な治療を行うためには、医師の診断が必要です。
若年性更年期特有の症状
若年性更年期で見られる症状は、一般的な更年期障害の症状と共通です。ただし、気をつけなければいけない症状が2つあります。
■無月経
妊娠や授乳といった生理的な理由がないのに月経が止まってしまうことを「無月経」と言います。その要因は、ストレス、ムリなダイエット、激しいスポーツなどにあります。無月経の状態が長引くと妊娠がしにくくなることもあるので注意が必要です。
■早発閉経
日本人の平均閉経年齢は50.5歳で、45歳から56歳が正常範囲だと言われています。40歳未満で閉経してしまうことを「早発閉経」と言い、これは治療の対象とされています。
早発閉経は、妊娠・出産ができなくなるというだけではなく、骨粗しょう症や生活習慣病のリスクが高くなると言われています。無月経の状態が長引けば長引くほど早発閉経の可能性が高まります。3ヶ月以上月経がない場合は、早めに病院を受診するようにしましょう。
女性だけじゃない!男性の更年期障害
女性特有の症状と思われがちな更年期障害ですが、実は男性にも同じような身体変化が現れることがわかってきました。男性の更年期障害は、医学的にはLOH症候群(Late onset hypogonadism symdrome:加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれています。
男性更年期障害の原因
原因は、年齢とともに男性ホルモンであるテストステロンの分泌が減少することで起ります。テストステロンは、男性の生殖機能に深く関与する他、筋力や骨量の増強や維持、脳へ働きかけて「やる気」をアップさせるなど、非常に重要な役割を持つ男性ホルモンです。
男性の場合、女性の「閉経」のようにはっきりとしたホルモンバランスの変化はありませんが、20代後半から徐々に男性ホルモンが低下しはじめます。これに心的なストレスや環境の変化などの刺激が加わると、それがきっかけとなって男性更年期の発症に繋がってしまいます。
男性更年期障害を発症する年齢と発症しやすいタイプ
40代後半から50代にかけて発症することが多いようですが、テストステロンの減少は20代後半から始まっているため、30代後半から70代近くまでと、幅広い年代で起こり得る症状です。
テストステロンの値は個人差があり、同じ値でも症状が出る人、出ない人がいます。どのような人が発症しやすいかについては明らかになっていませんが、心的ストレスと関わりが深いことから神経質で真面目な人や責任感が強い人、几帳面な人、競争心が激しい人などが発症しやすいと言われいます。
男性の更年期障害特有の症状
男性の更年期でも発汗やほてり、めまいなどの身体症状、イライラや意欲の低下などの精神症状など、女性の更年期と共通する症状が見られますが、男性特有の症状としては下記の3つが挙げられます。
■神経質になる
男性の更年期は、女性に比べて身体症状よりも精神症状が強く出るのが特徴です。テストステロンにはネガティブな感情を抑える作用があるため、これが減少してしまうと些細なことが気になったり、不安が増大してしまうことがあります。以前より神経質になってイライラしたり怒りっぽくなる人が多いようです。
■性機能の低下
テストステロンは、ドーパミンの働きや陰茎の勃起に関わる一酸化窒素と深い関わりがあるため、このホルモンの減少は、性欲の減退、勃起不全(ED)に直結します。いわゆる「朝立ち」がなくなるのも1つの目安です。
■頻尿・残尿感
泌尿器系では、テストステロンの減少によって前立腺肥大症を起こしやすくなることがわかっているそうです。トイレが近い、残尿感がある、排尿に勢いがなくなるなど、排尿系の症状が見られるのも男性更年期障害の特徴です。
更年期障害の診断と治療法
更年期障害はきちんと病院の診断を受けて適切な治療を行えば、その症状をずっとラクにすることができるのです。特に30代、40代前半の若い時期にこれらの症状を感じている人は、本当の更年期に備えて今から準備しておく必要があります。
また、更年期障害とよく似た「その他の病気」の可能性もあります。市販薬だけに頼ったり、自己判断せずに専門医の診断を受けることが大切です。診断方法や治療について解説していきます!
更年期障害は何科を受診すればいい?
女性の場合は、婦人科を受診するのがおススメです。男性の場合は、基本的には泌尿器科ということになりますが、最近では男性に特化して診察を行う「メンズクリニック」も増えています。「普通の病院では相談しにくい」という人は、専門医のいるクリニックを探してみるとよいでしょう。
更年期障害の診断方法
更年期障害の診断は、血液ホルモン検査で行います。女性の場合はエストロゲン、男性の場合はテストステロンの値をもとに判断しますが、一度の血液検査ではこれらの値が正常値を示すこともあるため、その他関連するホルモンとして、黄体ホルモンやプロラクチンも測定する必要があります。
血中ホルモンの値には個人差があるため、問診票や各種チェックリストを使って更年期症状の指数を図り、客観的な判断を下すことになります。
更年期障害の治療法
更年期障害の治療は、主にホルモン補充療法や自律神経失調症状に対応した薬物療法が中心となります。心因性の症状が強い場合には、抗うつ剤などの向精神薬を投与したり、カウンセリングによって治療を行います。
女性の場合は、HRTと呼ばれるエストロゲンを補充する療法が取られることになります。通常、子宮を摘出している人の場合は、エストロゲン単体で用いられ、子宮が残っている人の場合には、子宮内膜がんを予防するために黄体ホルモン剤も併用されます。
精神症状の中にはエストロゲンの欠乏に由来するものもあるため、HRTだけで改善することも多いようです。HRTには、飲み薬と経皮剤(貼り薬、塗り薬)の2種類があります。
男性の場合は、テストステロンを補充することになりますが、この場合は、注射薬を用いることになります。ただし、テストステロンの補充は精子が減るという副作用があるため、子どもを望む男性には使われません。また、前立腺肥大や前立腺がんなどに悪影響があるため、事前にこれらの病気の有無を検査してから投薬を開始します。
ホルモン補充療法ができない場合や改善が見られない場合には、漢方薬が用いられることも多いようです。
更年期障害の症状を軽減して上手に乗り切るため必要なこと
更年期の症状は、その人の性格、周囲の環境、そのときの精神状態などが深く関与しています。生活習慣や食生活を改善するだけでも、症状に変化が見られるようになります。最後に更年期を上手に乗り切るためのポイントを紹介しましょう。
食生活の見直し
年齢を重ねると、食事の好みが固定化してしまうものです。「毎日同じものしか食べない」という人はいませんか?これでは栄養が偏ってしまい、更年期に必要な栄養素が不足してしまいます。更年期は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病が発症しやすい時期でもあります。この機会に食生活を見直してバランスのよい食事を心がけるようにしましょう。
女性に欠かせない食品と言えば、「イソフラボン」多く含まれる大豆製品です。イソフラボンは体内でエストロゲンと同じ働きをすることで知られています。コレステロールの上昇を抑えたり、骨量を増やす作用もあります。
男性にはテストステロンの生成を補助する「亜鉛」がおススメです。亜鉛は、牡蠣、魚介類、海藻、ナッツ類、レバーなどに多く含まれていますが、食品から摂取するのが難しい場合は、サプリメントなどを使うのも良いでしょう。
運動不足や不眠などの生活習慣を改善する
夜更かしの習慣や運動不足など、生活の乱れは更年期の症状を悪化させる原因の1つです。特に不眠は、倦怠感や気持ちの落ち込みにも深く関わるものですから、真っ先に改善したいものですよね。まずは早寝早起きから実践してみましょう。
ウォーキングなどの適度な運動は、心地よい疲労感で眠りを誘発する働きがあります。また、ジョギングや水泳などの有酸素運動は、呼吸を深くし血液の循環を促進する作用もあります。更年期障害の改善には週1,2回の定期的な運動習慣も必要です。
ストレスを解消しリラックスする
更年期世代に入ると、男女に関わらずこれまでとは違ったストレスを感じることが増えてくると思います。
・子育てが終わりパートナーと向き合う時間が増えた
・子どもの独立・結婚
・仕事上の重責や人間関係
・女性(男性)としての自信の喪失
・親の介護
など、数え上げればキリがありません。更年期に感じるストレスは、これからの人生について考えさせられるものばかりで、非常に深刻なものが多いために心や身体に与える影響がより強くでてしまうのかもしれません。
ストレス解消法には様々な方法がありますが、まずは気持ちをリラックスさせること。アロマやマッサージ、ツボ押しなどで身体のバランスを整えるのも良いでしょう。また、趣味に没頭する、スポーツを始める、せっかくの機会ですからパートナーと真摯に向き合ってみるというのもアリですよね。自分にあったストレス解消法を見つけてください。
信頼できる病院を見つけておく
更年期障害の症状は、いわゆる不定愁訴です。表面に表れる症状だけで受診科目を選んでも、「原因がわからない」「症状が改善しない」こともあります。そのため内科、整形外科、心療内科と様々な病院を渡り歩いたり、原因がわからないことで不安やイライラが増大するという悪循環に陥る人が少なくないようです。
婦人科は、出産や子宮などの生殖器に関わる病気の診療を行うだけではありません。女性の健康をトータルでサポートするための診療科です。更年期に突入する前に信頼できるかかりつけ医を見つけておくと、いざというときの安心感があります。
特に婦人科は医師との「相性」も重要ですよね。周囲の評判なども聞きながら、相談しやすい病院を探してみましょう。
更年期は人生の節目!
「更年期」と聞くと、それだけで不安になったり、「女性じゃなくなる!」と悲しくなってしまう人もいるようですが、更年期を迎えても「女性は女性」、「男性は男性」で変わることはありません。ただ、この辛い時期は人生の節目であり、それにどう向き合っていくか?どう乗り越えていくか?によって、その後の人生も大きく変わっていくものなのです。
「もしかして更年期?」と感じているのなら、目をそらさずに今の自分と向き合ってみましょう。「ずっと自分らしく生きる」ために大切な事柄です。
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