尿素窒素が低いと体はどうなるの?3つの主な原因と尿崩症との関係
健康診断で血液検査を受けたとき、検査の一覧表に載っている「尿素窒素(BUN)」という値を見た事がありませんか?この尿素窒素という値の異常は、体のどんな状態を表しているサインなのでしょうか。尿素窒素という値が高くても、低すぎても問題になります。特に低い場合は、腎臓の状態を示していることから、妊娠に至るまでさまざまな場合に変化するといわれています。尿素窒素が低くて心配な人は、チェックしてみましょう。
尿素窒素が低いってどうゆうこと?
尿素窒素というのは、血液検査で調べられる値で、検査結果にはBUN(もしくはUN)と表記されることもあります。そもそも、尿素窒素というのは、タンパク質を体で分解したときに、最終産物として出てくるもので、腎臓から体外へと排出されていきます。
食事中のタンパク質や、身体の筋肉などからタンパク質が分解されると、アンモニアが発生します。アンモニアは毒性が非常に強いので、肝臓で無害な尿素に作り替えられて、腎臓から尿として排泄されていきます。
この、尿素を窒素の量として表したのが、尿素窒素です。腎臓からは、一日に約20~35gの尿素が排泄されていて、検査値としての目安は8~23mg/dlとなっています。この尿素窒素が高くても低くても問題となりますが、ここでは特に低い場合について注目して、解説をしていきたいと思います。
尿素窒素が低い3つの原因
尿素窒素が低い場合、考えられる原因は何でしょうか?ここでは、主な3つの原因を紹介します。
重度の肝障害がある
体内のたんぱく質の老廃物が尿素窒素となりますが、これは、肝臓でアンモニアと二酸化炭素をもとに作られ、尿として排出されていきます。肝臓に問題があると、肝臓が尿素窒素を作り出せないので、尿素窒素は低い値になります。
重度の肝障害がある場合、尿素窒素は低い値となります。例えば、肝硬変や劇症肝炎などにより、肝機能が低下している場合が挙げられます。
タンパク質の摂取量が少ない
たんぱく質の摂取不足も、尿素窒素の低下を招くといわれています。タンパク質は体の筋肉などを構成していますが、食事から摂取したタンパク質やアミノ酸をもとに作られています。
タンパク質を摂取すると、最終的に余分な老廃物として尿素窒素が発生するため、タンパク質不足だと尿素窒素が低下しやすくなります。基準値は8〜23前後(mg/dl)であり、タンパク摂取量からみると、BUNは15(mg/dl)以上が望ましい数値だといわれています。
しかし、女性の場合10(mg/dl)以下の数値を示す方が多くみうけられます。過度のダイエットなどで肉や魚、卵などのタンパク質を制限している人は要注意です。
尿素窒素は食事やむくみなどの影響を受けやすいので、クレアチニンや尿たんぱくなどの結果とあわせて、判断することが大切だといわれています。
妊娠していることが原因?
尿素窒素の異常が問題となるのは、ほとんどが増加する場合であり、8mg/dl以下に減少することは、稀なケースだといわれています。
しかし、妊娠では胎児が成長するために、タンパク質が普通よりも多く消費されるために、妊娠6ヶ月から9ヶ月にかけて、母親の尿素窒素は5mg/dl程度まで低下することがあるといわれてます。尿素窒素が低い事が問題というよりは、妊娠中におけるタンパク質の摂取が不足していることが問題と考えれます。
また、妊娠により血液の量が増えることも、BUN低下に関係しているともいわれています。妊娠中の妊婦健診にて、定期的に確認して、タンパク質の不足はないか、確認していくようにしましょう。
尿素窒素が低い時にみられる4つの症状
尿素窒素が低い時には、どんな症状が現れるのでしょうか。次に紹介する、4つの変化に注意してみましょう。
肝性脳症で毒素が回ってしまう
肝臓に問題があると、体の解毒作用が弱くなり、アンモニアなどの毒素が体に溜まりやすくなってしまいます。アンモニアは肝臓で代謝されて、尿素などに作り変えられて、腎臓から排泄されるのですが、肝臓に問題があると、尿素に変わらず体内での濃度が上がります。
すると、肝性脳症といって、肝臓で除去されるはずの毒物が血液中に溜まって脳に到達し、脳の機能が低下する状態となってしまうのだそうです。肝性脳症となると、錯乱、見当識障害、眠気が起こるとともに、性格、行動、気分の変化がみられることがあります。
症状を改善するには、原因となる物質(アルコール、薬物)を排除したり、タンパク質を控えた食事が有効だといわれています。
原因不明に体がだるいなら要注意
尿素窒素が低い時は、肝臓に何らかの障害が起きている可能性があり、肝機能が低下すると体がだるくなったり、疲労感が現れたりすることがあります。特に、激しい運動や仕事などしていないのに、体がだるく、風邪をひいたような症状があれば、注意が必要といわれています。
尿の色が濃くなることもある
健康な人のおしっこは、黄色~琥珀のような淡黄色で透明をしています。これは、ウロビリノーゲン、ウロビリンといった色素成分が含まれているためです。しかし、肝機能に異常がでると、このウロビリノーゲンなどが尿の中にたくさん排泄されるようになって、おしっこの色が濃くなる事があります。
また、逆に尿の色が薄くなる場合には、尿崩症などのおしっこが作られすぎる、腎臓の病気が疑われることもあります。尿素窒素以外の検査値を確認して、総合的に判断していくことが必要です。
腹痛や吐き気は肝臓のせい?
腹痛や吐き気は必ずしも胃腸の病気だけではなく、肝臓、膵臓といったお腹の臓器が原因でも起こります。特に、尿素窒素が低い時に疑われる肝臓の病気においては、自覚症状として痛みを感じにくいこともありますが、腹痛や吐き気、だるさなどの症状が出てくることがあるといわれています。
肝臓の病気としては、肝硬変、肝がん、肝炎などがあり、さらに詳しい検査をして、判断してくことが必要となります。このような自覚症状があれば、早めに相談しましょう。
クレアチニンが低いとどうなるの?
尿素窒素は腎機能の指標にもなりますが、腎機能に問題がある場合には、クレアチニンという値も参考にして原因を突き止めていくことが必要です。ここでは、クレアチニンが低い場合に考えられる疾患を紹介します。
筋ジストロフィーで筋肉量が低下
クレアチニンは、筋肉中のクレアチンの終末代謝産物であり、腎糸球体で濾過されますが、筋肉量にも比例して低下が見られることあります。クレアチニンが低い場合に考えられる病気には、筋ジストロフィーがあります。筋ジストロフィーでは、筋肉量が低下することによって、クレアチニンが低下してしまいます。
多尿(尿崩症)で喉が乾く
腎臓の尿細管では、原尿から水分を再吸収して体内の水分調整を行っています。尿を濃縮するためのメカニズムとしてホルモンが働いて、尿の量や濃さを一定に保つことができるのです。しかし、この仕組みに異常があると、尿崩症といって、尿が大量につくられる症状が出ることがあります。
尿崩症になると尿素窒素も低下して、クレアチニンも低下するため、これらの数値をみて総合的に判断することになります。
尿崩症でみられる症状とは
尿崩症となると、どんな症状が出てくるのでしょうか?尿崩症の可能性を疑っている人は、ぜひ参考にして、病気の早期発見につなげてください。
トイレへ行く回数が増える
尿崩症になると、尿の量が非常に多くなり、1日の尿量が3000ml以上に増えた場合に疾患を疑います。尿の量が多くなるので、膀胱に溜められる量を超えてしまうので、頻繁にトイレに行くようになってしまいます。
喉が渇きやすい、冷たい水を飲む
尿崩症は、体内の水の保持機能が低下して多尿となり、口の渇きを感じやすなって、特に、冷たい水を好んで飲むことが多くなるといわれています。喉が渇いて水を飲んでしまうので、余計に多尿になるという悪循環にも陥りやすくなります。
尿崩症は、中枢性尿崩症と腎性尿崩症の2種類があり、特に冷たい水を好む場合は、中枢性尿崩症の可能性が高いといわれています。これらの症状がある場合には、内科や腎臓内科などに相談してみると良いでしょう。
尿素窒素が低いのを改善する3つの方法
尿素窒素は検査の指標であり、尿素窒素が低いこと自体が問題というわけではありません。しかし、低い場合には原因となる病気や、生活習慣が隠れている可能性があり、これらを改善していくことが大切になります。
タンパク質をバランス良く摂取する
特に腎臓に問題ない限りは、タンパク質を適正量しっかり摂ることで、尿素窒素の値は改善が期待できます。特に活発な運動をしていない人では、1日あたり体重1kgにつき0.8gの摂取が理想的です。たとえば、体重50kgならば40gは摂取するのが目安です。
タンパク質を摂ろうとすると、つい肉類が増えてしまいがちですが、同時に脂肪を過剰にとりすぎないように、魚類や植物性タンパク質である大豆製品などもとり入れて、バランスよくとるようにしましょう。
1日の総カロリーを補う
食事でとるエネルギーが不十分だと、体内に蓄えられていたタンパク質を消費して補おうとするので、尿素窒素が低くなりがちです。
1日の総カロリーは年齢や体重に応じて変わりますが、1日3回、食事をきちんと食べるようにして、1日1回は、油を使った料理を食べるようにしたり工夫することで、カロリーを補っていきましょう。
尿素窒素の上がりすぎには注意
尿素窒素を上げようとして、過剰にタンパク質を摂ったり、カロリーを摂りすぎてしまわないように気をつけましょう。尿素窒素に関しては、通常は低いことよりも高すぎる方が、問題になりやすいといわれています。尿素窒素は上げようと思って、過剰なタンパク質を摂ることはしないようにしてください。
尿素窒素は肝臓や腎臓の病気の指標!
尿素窒素が低すぎる場合には、肝臓に何らかの問題が起きていたり、妊娠が原因であったりと、明らかな原因がある場合や、タンパク質の摂取が不十分であるという、生活習慣の問題がある場合などさまざまです。
尿素窒素の値は、体の状態を知るための手がかりであり、低すぎたり高すぎる場合には、原因を突き止めて対処してきましょう。
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