膿瘍ってなに?症状は?どこにできるの?4つの種類や女性や子供が出来やすい5つの原因と対処法について解説します!
膿瘍ってご存知ですが?名前からすると膿がたまってどうにかなるのかな?くらいは想像できますが、実際のところはよく分かりませんよね。今回の記事では膿瘍とはなにか、その危険性とは?といった部分に切りこんでいきたいと思います。
様々な膿瘍の症状・原因
膿瘍とは単一の原因ではなく、多数の因子が影響する化膿巣のことです。細菌感染により惹き起こされるケースが多いですが、特殊な場合には無菌性のものもあります。
皮膚や皮下、筋肉に浸潤して拡大していき、もともと重度の炎症を起こしていた場所に血流阻害が起きた場合には壊死巣を形成します。症状としては膿が内側から圧迫することによる痛み、そして腫れや発熱、または全身に症状が現れることもあるようです。
膿瘍ってなに?
膿がたまった状態のこと
膿瘍とは、皮膚や皮下の組織の間隙(すきま)に膿汁(うみ)がたまることを言います。皮膚をはじめ、内臓や泌尿器、歯槽に現れることもあれば、女性の場合には卵巣に現れることもあります。
膿瘍は蜂巣炎(皮膚および皮下組織の急性細菌感染症)の領域や、細胞組織が傷ついて白血球が集まっているところから始まります。膿汁や、周囲の血流が阻害され、細胞が壊死することによって拡大します。
細菌感染症
特殊なケースでは無菌性の膿瘍もありますが、たいていの場合は細菌によって感染すること言われています。多数の微生物が膿瘍の原因となりますが、最も一般的なのは黄色ブドウ球菌によるものです。
感染ルートとしては、外傷部分から侵入してくるケースと、もともと感染していた部分から拡大するケース、リンパや血液の流れによって遠位部から運ばれてくるケースや、常在菌が他の部位に移動して起こるケースがあります。
主な膿瘍について
皮膚膿瘍
皮膚膿瘍とは、限られた場所に膿がたまって発症する膿瘍で、症状としては圧痛(押すと痛い)や自発痛(何もしていなくても痛い)、ズキズキとした腫れをともなうのが特徴です。
一般的には黄色ブドウ球菌やレンサ球菌によって起こることが多く、外傷後の患者や、細菌が過繁殖している患者、免疫機能や循環系に問題がある患者さんに出ることが多いといわれています。
皮膚膿瘍の大きさはさまざまで、1cmから3cmのことがおおいのですが、それ以上に大きくなることもあります。はじめのうちは固いのですが、膿がたまってくると皮膜はだんだん薄くなり、ズキズキとした腫れが出始めます。
小さな膿瘍は特に治療を行わなくても自然に消えたり、表皮が破れて膿が外に排出されたりします。痛みや腫れが強い場合には切開して膿を出します。通常は抗生物質の投与は不要であるといわれています。
肝膿瘍
肝膿瘍とは、何らかの原因で肝臓に膿がたまってしまう病気のことです。肝臓内に、肝臓に膿ができる原因になる細菌などが入ってきたことで起こる細菌性(化膿性)のものと、アメーバ性のものの2種類に分けることができるそうです。
細菌性の肝膿瘍が起こる原因としては、胆管炎が理由に挙げられます。総胆管結石や、脾胆道系の悪性腫瘍による胆管閉塞にともなって胆汁の鬱滞(とどこおること)が起こり、そこに腸内細菌が感染することで胆管炎が起こります。それが肝臓に至った時に膿瘍を形成することが多いようです。
また、ケースとしては少ないですが、虫垂炎、クローン病、憩室炎、潰瘍性大腸炎などの、腸で起こっている感染症が、門脈を経て肝臓までやってきて、肝膿瘍の原因になってしまうこともあるようです。
アメーバ性の肝膿瘍は、海外に渡航した人などに多く見られるのですが、赤痢アメーバに腸内感染することによって、肝臓にまで達して膿瘍を形成することがあります。
症状は全身の倦怠感や発熱、右側のお腹の上部が痛くなるなどが現れます。アメーバ性の肝膿瘍の場合には、下血をともなう下痢が出たりします。治療は抗生剤の投与と、膿瘍穿刺ドレナージを行うことによって、膿を体外へと誘導します。治療が遅れると敗血症や細菌性ショックなど、命に関わることがあるので、早期の治療が必要です。
歯肉膿瘍・歯槽膿瘍
歯肉膿瘍とは、歯肉炎や歯周炎、歯根膜炎などの感染症が原因で、歯肉下(歯茎と骨の間)に膿がたまる疾患です。歯の根元や歯茎と歯の間が細菌感染を起こすことによって起こります。
歯槽膿瘍は歯肉膿瘍よりも感染の範囲が広く、深くに膿がたまったもののことで、根尖膿瘍とも言います。細菌感染や虫歯の悪化によって、根尖に壊死を起こした組織や細菌がたまって膿瘍を形成するもので、歯周病や歯肉炎との関係はありません。
症状は多くの場合、膿による腫れのため強い痛みをともないます。感染した場所によってはあごや頬が腫れることもあります。治療は膿の排出が必要になるため、口腔外科手術などが行われます。抗生物質の投与も行われますが、何よりも歯髄と膿を乗り除くことが大事です。
脳膿瘍
脳膿瘍とは、脳の中に細菌感染を起こして膿がたまる病気のことを言います。中耳炎や扁桃腺炎、副鼻腔炎や虫歯、外傷など、体のどこかが細菌感染すると、血液の流れによって脳まで細菌が運ばれることが原因となって脳に膿がたまります。
様々な症状が出てしまうようですが、まずは頭痛や発熱、そして頭がボーっとする感じがしたり、嘔吐することもあるようです。さらには、膿がたまっている場所が脳なので、手足の運動障害や感覚麻痺、言語障害など神経のほうにも影響を起こしてしまうこともあるようです。
脳膿瘍の治療には、抗生物質を用いたり、頭蓋骨の内圧を下げる薬や副腎皮質ホルモンを用いた保存療法をはじめ、ドレナージ術や脳膿瘍摘出術といった手術が選択されることもあります。
脳膿瘍の手術においては、術中術後の頭蓋内感染や脳梗塞、手術による脳損傷や輸血による感染やショック、その他さまざまな疾患が手術をきっかけとして顕在化することがあり、最悪の場合には死亡したり、重い後遺症を残してしまう可能性もあります。
泌尿器にできる膿瘍について
腎膿瘍
腎膿瘍とは、血行性感染によって腎臓の皮質内に膿が出来てしまう病気のことです。症状は、高熱、腰痛、全身倦怠感などがあり、急性腎盂炎の症状と似ているようです。膿瘍が腎臓の組織のほとんどを覆ってしまうほどになり、腎臓を覆っている膜を破って周囲の組織にまで感染が拡大してしまうと、腎周囲潰瘍となるリスクがあります。
腎膿瘍の症状としては、高熱が出たり、悪寒で体が震えたり、わき腹や背中に痛みを感じたりします。また全身の倦怠感や体重の減少、排尿時の痛みや残尿感など、膀胱炎に似た症状が出ることもあります。一般的には症状は重く、救急車で運ばれるような事態になることが多いです。
腎膿瘍の原因は、腎臓以外の感染している場所からの血液による感染が多く、原因菌としては黄色ブドウ球菌が多いようです。一般的には二つある腎臓のどちらか一方に発症するのが通例です。
治療法としては抗生物質を用いるなどの保存的療法もありますが、外科的症状が出た場合には全身症状の悪化をもたらすこともあり、手術という選択肢が取られることになります。
腎膿瘍
尿膜管膿瘍
尿膜管膿瘍は胎生期の尿膜管が生後も閉鎖せずに残る尿膜管残遺症が原因で起こる膿瘍です。この尿膜管という管は、自然に閉鎖されていくはずですが、なぜか成人の約2%の人には残っているという報告もあるそうです。この尿膜管に膿がたまるのが尿膜管膿瘍です。
通常は無症状で経過することが多いのですが、時としておへそからの尿が漏れ出したり、腹痛やおへそ周囲の炎症を起こします。乳幼児だけでなく、思春期から成人にかけて症状が出ることもあります。2014年にはフィギュアスケートの羽生結弦選手が尿管膜残遺症で手術を受けたことで知られるようになりました。治療法は手術をして摘出するのが基本とされています。
女性がなりやすい膿瘍について
バルトリン腺膿瘍
バルトリン腺膿瘍とは、女性の外陰部にあるバルトリン腺が腫れて、えんどう豆くらいの大きさからゴルフボール代までの嚢胞が多くの場合、片側にだけ生じます。感染を起こすと膿瘍ができることもあります。膿瘍ができると強い痛みが生じ、時として発熱することもあります。現在のところ原因はよく分かっていません。
症状がそれほど強くなければ温座浴を一日に3回から4回行うことで、自分で治療することが可能です。40歳以上の女性に嚢胞が見られた場合には手術を行い、ガンができていないかを確認する必要があります。
卵巣腫瘍
卵巣膿腫とは、卵巣内に液体や脂肪がたまってしまう疾患のことで、肥大するとこぶし大やそれ以上の大きさになることもあります。現在のところ原因についてはよく分かっていません。
初期の段階では自覚症状はほとんどありませんが、大きくなってくるとお腹を触った時に気がついたり、腹痛や腰痛、頻尿や便秘などが現れることがあります。茎捻転を起こした場合には激痛が出ます。治療に関しては、7cm以上の膿腫は茎捻転の恐れがあるので、手術で取り除くことが多いようです。
子供がなりやすい膿瘍について
膿瘍形成性虫垂炎
子供が急な腹痛を訴える時に、原因となるものの一つが急性虫垂炎ですが、膿瘍の形成は、それにともなって見られる所見の一つです。虫垂の中に膿瘍がある場合や、虫垂の直径が10mm以上になってしまっている場合、またはお腹の中に水が溜まってしまっている時などは、なるべく早めに手術をする必要があるようです。
咽後膿瘍
咽後膿瘍とは、のどの奥にあるリンパ節に膿がたまる疾患で、細菌感染が原因で発症します。のどの奥のリンパ節は小児期を過ぎると消えるため、子供に多く見られる疾患として知られています。
膿瘍は通常、扁桃腺炎やアデノイド、副鼻腔炎や中耳炎などの細菌感染が広がることがきっかけとなっていて、原因となる細菌は複数です。のどの奥を魚の骨で傷つけたりした場合に起こることもあります。
症状としては、ものを飲み込みにくい、または飲み込むときに痛みをともなう、発熱、首筋のリンパが腫れるなどかあります。膿瘍が大きくなってのどをふさぐと、呼吸がしづらくなり、異音をともなうこともあります。適切な治療を行うことでたいていの場合は軽快しますが、症状の程度によっては切開して膿を出す必要があります。抗生物質の投与が効果的です。
扁桃膿瘍
扁桃膿瘍とは扁桃周囲膿瘍ともいい、扁桃腺炎によって炎症を起こした場所に膿がたまることによって起こる疾患です。普通は扁桃膿瘍までに至るケースはそれほど多くはないようですが、膿が胸部に広がることによって死亡した例もあるそうなので注意が必要です。
症状としては、左右どちらかの首に激しい痛みがでて、発熱をともないます。腫れがひどくなると水やつばを飲み込むのも痛くてつらくなり、声がこもって発音が不明瞭になります。奥のほうが腫れてくると呼吸も困難になってきます。
治療はまずは抗生剤の投与を行いますが、膿がたまった場合には、患部に針を刺して膿を排出します。一度扁桃周囲に炎症を起こすと、膿瘍を再発しやすくなるので、症状がひどい場合には扁桃を手術で摘出することも考えられます。
膿瘍の治療法
ドレナージ
ドレナージとは、体内の余分な体液を抜き取る処置のことで、膿も体液に含まれます。超音波のガイド下に、膿瘍を皮膚穿刺して膿を排出する方法です。膿瘍の治療法として全国で一般的に行われており、保険も適用されます。歯科医に行って虫歯などの治療をしたことがある人なら、治療中によだれや血液を吸い取ってもらったことがありますよね。あれもドレナージの一つです。
切開
皮膚膿瘍など表皮や皮下の浅い部分にできた膿瘍に対しては、切開によって膿を排出する方法が取られます。小さな膿瘍の場合は治療をしなくても治ることもありますが、痛みや腫れが強い場合には切開を行います。
まとめ
膿瘍なんていうと随分いかめしい病気を想像してしまいがちですが、ニキビによって出たり、扁桃腺が腫れることで起こったりと、意外と身近な疾患です。ただ、怖いのは合併症なので、特に粘膜や内科系の膿瘍の疑いがある場合には、早めに医療機関で処置してもらってくださいね。
このまとめのキュレーター
カテゴリ一覧