外傷が原因で引き起こされる疾患とは?診療の仕組みもご紹介します

外傷には、どのような種類があるのでしょうか。調べてみると様々な種類があり、また治療は複雑で初期治療が重要であるために、外傷センターという特別な診療施設も設置されて来ていることが分りました。この記事では、そんな外傷の種類や症状、近年の治療施設の特徴まで詳しく紹介させていただきます。

外傷とは

外傷とは、ケガのことと理解していましたが、医学的に見ると、様々な外傷の分類があるようです。それぞれの特徴について、この時期では、掘り下げてみたいと思います。

様々な分類もある!外傷の種類

外傷の種類について、見てみましょう。鋭的外傷、鈍的外傷、開放性損傷、非開放性損傷といった分類があると言います。

鋭的外傷と鈍的外傷

外傷(がいしょう)は鈍的(どんてき)外傷と鋭的(えいてき)外傷に大きく分類されると言い、鋭的外傷には穿通性外傷(せんつうせいしんぞうがいしょう)と非穿通性外傷があるとされています。刺創(しそう)とは包丁やナイフなど先の尖った刃物やアイスピック、釘(くぎ)、針、ガラス片などの刺入(しにゅう)により生じた創(きず)のことであると言われています。

凶器が刺入されたまま搬送された場合には、非穿通性損傷が明らかな場合を除いて、凶器を抜去(ばっきょ)してはならないと指摘されています。これは、凶器によりタンポナーデ(止血)されていた出血が抜去を契機に再出血する可能性があるためで、出血に対応できる体制のもとで手術室で直視下に抜去することが原則とされていると言われているようです。

刺創(しそう)では実質臓器損傷や腹部血管損傷による腹腔内(ふくくうない)や後腹膜腔(こうふくまくくう)への出血と、管腔臓器損傷(かんくうぞうきそんしょう)による汎発性腹膜炎(はんぱつせいふくまくえん)が主病態となると指摘されています。

開放性損傷と非開放性損傷

スポーツによるケガのみではなく、日常生活の中で最も多いケガは、体内の諸器官を保護している皮膚、皮下組織の損傷であるとされています。この表面が損壊(そんかい)したものを開放性損傷と言い、損壊のないものを非開放性損傷と言われています。

開放性損傷はその発生機転から、擦過傷(さっかしょう)、刺創(しぞう)、挫創(ざそう)、切創(せっそう)、割創(かっそう)、裂創(れっそう)などと色々な名前で呼ばれており、内部組織と交通を持つために感染に対する注意が必要であると指摘されています。

「現場での応急処置」
http://www.dodo2.net/orth/sprts/No38.htm

PTSDも?外傷が原因で引き起こす病

外傷によって、起こされる病気について、次に見て行きましょう。脳に関するもの、目や臓器に障害が及んだもの、外傷からショック状態に陥るもの、精神的なものまで様々です。

外傷性脳損傷

外傷性脳損傷(がいしょうせいのうそんしょう)とは、交通事故や転落などで頭に強い衝撃が加わると、脳が傷ついたり、出血したりした状態のことで、脳外傷、頭部外傷とも呼ばれるとされています。脳の損傷によって、脳の働きが障害され、脳卒中と同様に半身の麻痺(まひ)や感覚障害、失語症、半側空間無視などの症状が起こると言います。

そのほか、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などのいわゆる高次脳機能障害がよくみられるとされています。

頭部外傷には、(1)外傷性脳実質損傷(脳挫傷(外傷性脳内血腫)、びまん性軸索(じくさく)損傷)、(2)外傷性頭蓋内血腫(急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、慢性硬膜下血腫)、(3)頭蓋骨骨折(頭蓋骨陥没骨折、頭蓋底骨折)などに分類されているとも言われています。

頭部外傷後遺症

頭部外傷後遺症とは、損傷した脳細胞が再生しないために、損傷部位の脳細胞が行っていた機能が失われることによって起こる後遺症のことであると言います。局所の脳組織の挫滅(ざめつ:脳挫傷)では、受傷部位から後遺症の予測が可能であるとも言われます。

頭部CTで脳挫傷などの脳組織の損傷が認められる時や、脳の損傷による症状がある場合に、外傷性てんかんを起こす可能性が高いと考えられていて、外傷性てんかんの発生頻度は、入院を要した頭部外傷患者の5%以下、昏睡(こんすい)状態の重症頭部外傷では15~35%で、発症する場合は受傷後1年以内に発症するケースが約50%、2年以内が約80%程度と指摘されています。

外傷性白内障

バドミントンのシャトルや卓球の球など、ちょうど眼窩(がんか:目がある、頭蓋骨のくぼんだ部分)に入る大きさのものによる鈍的外傷によって、白内障を受傷する場合があり、外傷性白内障と呼ばれます。鈍的外傷や穿孔性外傷により白内障になりますが、自覚症状はすぐに現れないこともあると言われています。

水晶体(すいしょうたい)を支えている組織が損傷を受けて、水晶体脱臼(だっきゅう)を来している場合も多く、その場合は手術の難易度が高くなると指摘されています。視力の低下が主症状で、受傷後10年以上経過して、初めて視力の低下を自覚することもめずらしないと言われています。

治療法は、手術の選択となりますが、外傷の程度により手術方法は異なり、手術成績、難易度も異なると言われています。

外傷性気胸

空気が胸腔内にたまって、肺が虚脱(きょだつ:小さく収縮)した状態のことを気胸(ききょう)と呼び、通常、胸腔(きょうくう)内の圧は外気圧より低くなっていますが、外傷などで外から空気が流入すると、肺が縮んで呼吸できなくなるとされています。

胸腔内へ空気が流入する経路としては肺損傷、気管・気管支損傷、胸壁(きょうへき)損傷がありますが、外傷性気胸の多くは、肋骨(ろっこつ)の骨折端による肺損傷に伴って発生すると言われています。

気胸のうち、胸壁が損傷されて外界の空気が胸腔内に入ったものを開放性気胸と呼び、外界の空気が胸壁創(きょうへきそう)を通って自由に胸腔内へ出入りするため、損傷した側の肺は高度に虚脱し、強い呼吸障害を伴うと指摘されています。

腎外傷

腎臓(じんぞう)は、外部からの衝撃によって外傷を受けやすい臓器で、背骨(脊柱)や肋骨(ろっこつ)、広背筋(こうはいきん)などの筋肉に囲まれているので軽度の外傷が多いものの、重度の腎外傷を放置すると、腎不全や遅発性高血圧などの合併症を引き起こすことがあるとされています。

腎外傷の原因でもっとも多いのが、自動車での衝突、スポーツによる外傷、高所からの転落などの鈍い力よるもので、鈍い力による腎外傷は比較的軽度のものが多いようであるといいます。

頻度が少ないものでは、ナイフなどによる刺し傷や拳銃による銃創(じゅうそう)といった穿通(せんつう)損傷、腎臓結石の治療として行われる体外波結石破砕法(たいがいはけっせきはさいほう)や腎生検といった治療中の損傷も原因になることがあると指摘されています。

スポーク外傷

スポーク外傷とは、自転車の後ろに乗っていて,自転車後輪のスポークに足を巻き込まれて起こる外傷のことを言い、通常はアキレス腱部に発生すると言われます。この部位のキズはもともと治りにくいとされます。

それは、アキレス腱部を覆う皮膚の余裕がもともと少ない、デブリードマン(壊死(えし)した組織を除去すること)→再縫合を繰り返した治療に問題がある、傷が開いた後消毒したために難治化した、などの理由があると言います。


整形外科医以外にはあまり知られていませんが、結構治療に難渋することで有名なのが「スポーク外傷」、すなわち、自転車の後ろに乗っていて(乗せられていて)、自転車後輪のスポークに足を巻き込まれて起こる外傷であるとされています。通常はアキレス腱部に発生する。この部位のキズはもともと治りにくいのですが、その理由については既に書いたとおりであると言われています。

とはいっても、治療に難渋している原因は間違った治療をしているだけのことであり,医原性の難治化,という言い方ができると主張されていて、正しく治療すれば(「消毒しない、乾かさない」)、スポーク外傷と言えども、他の外傷同様、速目の治癒が得られると指摘されています。

外傷性ショック

外傷性ショックとは、外傷に起因して起こるショックの総称で、二次性ショックをさすことが多いとされています。出血性ショックのほかに、火傷や挫滅(ざめつ)組織より血中に放出される有害物質により、腎(じん)障害等を生じて陥るショック(挫滅症候群)などがあるとされています。

集団暴行などにより、全身に多数の皮下出血、挫裂創(ざれっそう)などが見られる場合、出血と挫滅症候群の両者がショックの原因となりうるが、このような場合、出血量はかなり多量にのぼると考えられるので、もっとも重要なファクターは出血であることが多いと言われています。

心的外傷後ストレス障害

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)は、強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、こころのダメージとなって、時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じるもので、震災などの自然災害、火事、事故、暴力や犯罪被害などが原因になると言われているようです。

突然、怖い体験を思い出す、不安や緊張が続く、めまいや頭痛がある、眠れないといった症状があらわれるとされています。一方で、生命の危機に直面するほどの体験をしていても、今悩まされている症状とその体験を結びつけることができないこともあるとされます。

原因がわからないまま、こころの不安定な症状が続くと、原因がわかっている時以上に本人も周りの人もつらいといいますが、過去の体験に関係していると気が付けば、回復への第一歩になるとも言われています。

進む外傷センターの設置!外傷診療の仕組み

外傷の診療については、海外では定着しているとされる外傷センターが、日本でも病院により設置されるところが多くなって来ているよです。

外傷死を防ぐガイドライン

一般社団法人日本外傷学会では、ガイドライン編集委員会を組織して、外傷診療のエビデンスの収集と救急診療の標準化を図っているとして、「外傷初期診療ガイドラインJATEC」を上梓(じょうし)し、これは現在では、救急医療現場における診療の羅針盤となるだけでなく、off-the-job trainingのテキストとしても使用されていると言います。

外傷センターで診療

外傷センターは、多発外傷、重症開放骨折から一般骨折まで対応する病院の施設で、365日24時間体制で対応することをうたう病院もあるようです。その例では、多発外傷および体幹外傷に関して外傷外科医を中心にチームが形成され治療に当たり、切断四肢、開放骨折、血管損傷、挫滅損傷などの重症四肢外傷は外傷整形外科医が初期から一貫して治療を遂行すると言います。

外傷の初期診療における迅速簡易超音波検査法のことをFASTといいますが、JATEC(外傷初期診療ガイドライン)ではとくに循環の異常を認める傷病者に対して、心嚢腔(しんのうくう)、腹腔(ふくくう)および胸腔(きょうくう)の液体貯留(出血)の有無の検索を目的としておこなうとされています。

心膜腔(しんまくくう)、モリソン窩(か)、右胸腔、脾(脾臓(ひぞう))周囲、左胸腔、ダグラス窩の順に液体貯留の有無を検索するとされ。循環の異常を認める傷病者に対しては必須の検査であるが、ショックに陥る可能性のある損傷を鑑別するためにもおこなわれるとされます。

FASTは迅速性に優れるが、皮下気腫がある場合、胸腔内液体貯留の判断が難しいことがあり、全ての例において胸部X線撮影の代替になるものではないが、最初に異常がみられなくても、時間をおいて反復して施行することが重要であるとも言われます。

外傷センターで外傷外科医が診断する

最後までお読みいただきありがとうございました。このように外傷は、最近では、外傷センターなどで外傷専門の外科医によって治療されることも多くなってきたとされていますので、スポーツあ交通事故などの重度の骨折や、難治性の傷などの治療に際して、今後ますます、地域に設置されることが望まれるとの指摘もあるようです。

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