【尿閉の原因・症状・治療法】前立腺肥大の人は要注意!硬膜外麻酔をした後にもなるの?
尿閉という言葉を聞いた事がありますか?尿閉とは尿意があるのに急に尿が出なくなり辛い苦痛を伴う症状です。尿閉になってしまう原因や症状、治療法などを紹介します。
尿閉の定義とは
尿閉とは尿意があるのに排尿できないこと
普通尿意を感じたら排尿しますが、なかなか排尿が難しく、排尿するまで時間がかかったり、お腹を押さないと排尿できない状態になり排尿困難になります。排尿困難の状態が続き悪化すると膀胱の中にたまった尿が排泄できなくなるようです。尿閉とはこの尿意を感じているのに排尿できない状態をいいます。
排尿困難と尿閉
よくある尿閉の原因
下路尿路の通過障害による前立腺肥大症によるもの
この原因の代表的なものは前立腺肥大症です。50歳位から前立腺の少しずつ肥大し、60歳前後でいろいろな症状が現れ始めます。
膀胱の神経障害による糖尿病や脊髄損傷によるもの
膀胱を中心としている末梢や、脊髄または神経系のどこかの原因で障害されて尿が出なくなります。糖尿病や脊髄損傷などがあげられます。糖尿病は知覚麻痺するのでなかなか気が付くのが遅くなってしまい膀胱容量が1000mlまで多くなってしまうこともあります。
薬剤を服用することによるもの
尿が出にくくなる薬には、膀胱利尿筋の収縮力を下げる薬や、膀胱の出口の圧力を高める薬などがあげられます。一番多いのは副交感神経を遮断してしまう効果が強い、胃腸薬と複合感染薬の中の抗ヒスタミン薬や解熱・鎮痛剤なども起こると言われています。
精神的なもの
手術の後などで、ベッドで寝たまま排尿することが難しくなったり、そのまま排尿してしまうと漏れてしまうんではと心配してしまうことが原因で尿が出なくなることがあります。
精神科の薬によるもの
精神科で処方される薬の副作用で尿閉が起こると言われています。アセチルコリンが抑えられることで引き起こされてしまい、排尿障害を引き起こすと言われています。
一般社団法人 日本精神科看護協会 向精神薬の薬理作用と副作用
抗コリン作用によるもの
その他の原因によるもの
前立腺肥大症などの患者は、寒い場所や飲酒、性交などで急に尿が出なくなることがあります。また手術後の膀胱鏡検査などをおこなった後は、痛みや緊張でお腹に圧力がかけられなくなり尿が出ないことがあります。
3)尿閉の随伴症状
尿閉の5つの症状
急に排尿できなくなってしまう急性尿閉
膀胱の中に尿がたまっているのに急に排尿できなくなってしまったことをさします。膀胱内の排尿筋は正常なのに膀胱の中の尿がたまってしまって、恥骨が痛くなり。強い不安感を感じ冷や汗を感じます。前立腺肥大症にかかっている方に多く、大量にお酒を飲んだ場合や、抗ヒスタミン薬など風邪のときに服用する総合感冒薬を服用したときにみられることがあるようです。
尿意を感じなくなってしまう慢性尿閉
少しずつ下部尿路が閉まっていき、それと同時に尿が増え膀胱の中は尿で一杯になっているのに、尿意を感じなくなってしまい、尿が少しずつ漏れてしまいます。放置すると腎不全になることもあります。排尿が困難になる薬を大量に服用することで残尿が増え慢性尿閉や腎不全になってしまうこともあるようです。患者本人は排尿できないことに気付かず、尿が漏れてしまうことのみを訴えることもあります。
1)急性尿閉 2)慢性尿閉
尿閉に伴う症状
・膀胱に500ml以上の尿がたまると尿意を訴え、お腹に膨満感を感じます。下腹部を手で押さえると痛みが強くなり、尿意があるのに尿が排出できない苦痛、不安、緊張により血圧が上昇してしまいます。また尿が膀胱内にたまってしまったことにより、腎盂腎炎を起こしているときは、発熱や腰痛を訴えたりすることもあります。
慢性不完全尿閉は膀胱内の圧力が尿道の圧力を超えてしまい、尿が漏れてしまいます。
尿意が強いのに排尿できない完全尿閉
尿意が強いのに排尿できず、強い膀胱の痛みが起こります。下腹部を押すと強い圧迫痛があり冷や汗や頻脈を起こすことがあります。
排尿はできるが膀胱に尿がたまってしまう不完全尿閉
排尿が難しくなり、膀胱の中にたまっている尿が増えると腎機能の障害を起こすことがあり尿毒症になることもあります。少しずつ尿がもれてしまう溢流性尿失禁や両側水腎症を起こすことが多くなるようです。
硬膜外麻酔をして尿閉になってしまうことがある
手術を行う際に硬膜外麻酔を行うことがあり、副作用で尿閉がおこることがあるようです。一時的に尿が出にくくなることがあるようですが、自然に回復すると言われています。
尿閉の症状、無尿と乏尿を理解しよう
尿閉の症状の中に無尿と乏尿というものがあります。
無尿とは
腎機能が急に下がり、急性腎不全の症状を起こし、尿量がとても少なくなり1日尿量が100ml以下になってしまうことを言います。
乏尿
腎臓での尿の生成が少量になり。1日の尿量が400ml以下になってしまうことを言います。
無尿と乏尿の違いとは
無尿・乏尿と尿閉の区別をはっきりしておくことが必要で、尿閉の場合は膀胱に尿がたまっているので激しい尿意を感じますが、無尿の場合は尿意などを感じることがないようです。無尿の場合は腎機能が低下し尿を作りだすことが少なくなるので膀胱の中にも尿がないのでカテーテルを挿入しても排出できないようです。
乏尿と無尿
病気のせいで尿閉してしまうこともある
他の病気が原因になる神経因性膀胱
腎臓から出る尿を溜めたり排尿したりする機能が上手く行われない状態をいいます。放っておくと膀胱炎などの尿路感染症や腎臓の障害を引き起こしてしまうようです。障害が起こってしまった場所によっては尿意がなくなってしまい尿がでなくなってしまう尿閉や、膀胱の中の尿がいっぱいになってしまって漏れてしまう尿失禁などがあります。
・トイレが近くなる
・トイレに行っても残尿感がある
・尿が漏れてしまう
・思い通りに排尿できない
などの症状があらわれることがあります。
原因は脳梗塞や脳出血等の脳の病気、パーキンソン病、多発性硬化症などの神経の病気、脊髄損傷、子宮や直腸などの骨盤内手術の後、糖尿病などがあげられます。
神経因性膀胱 どのような疾患か
前立腺が大きくなってしまう前立腺肥大症
前立腺肥大がおきていても治療が必要ではない場合もあり、治療を行う基準は前立腺肥大による症状がどれくらい起こっているかということが重要になります。年齢を重ねるとともに前立腺肥大は新興していきますが、前立腺のサイズや症状がまったく変わらないということもあるようです。
前立腺肥大になるといろいろな合併症を起こすことがあります。
・血尿が出やすくなる
・膀胱に尿がたまるので細菌に感染しやすくなる
・尿がでなくなってしまう
・膀胱内に結石ができやすくなる
・膀胱壁が厚くなり腎臓が腫れる水腎症になりやすくなる
・尿失禁を起こしやすくなる
前立腺が大きくなるほど尿閉が起こりやすく、飲酒、感冒薬などの服用が原因になることもあります。
健康診断などで胃の内視鏡検査を行うことがありますが、胃の動きを止める注射が前立腺肥大症の場合尿閉になってしまう原因になる事があるようです。
前立腺肥大症と薬物治療:前立腺肥大症の進行と合併症|患者・ご家族のみなさま向け|旭化成ファーマ
前立腺肥大症の進行と合併症
尿閉の治療や治療薬とは
前立腺肥大症の場合
バルーンカテーテルの留置とα1遮断薬を飲みます。飲み始めてから3~8日後にバルーンカテーテルをはずし、自分で排尿できるか確認します。排尿できない場合や、一度排尿できてもまた尿閉してしまった場合外科治療を行うようです。
内服する薬はハルナールD錠、フリパスOD錠、ユリーフ錠などです。
薬剤性が原因で尿閉する場合
排尿筋の収縮を抑えたり、尿道平滑筋の収縮をする薬や、排尿反射を中枢性に抑える薬を内服していて尿閉になった場合は、薬を減らすか中止することがあるようです。
神経因性膀胱の場合
神経因性膀胱は2つに分けられ、膀胱壁が厚くなり容量が増えてしまう弛緩型と膀胱に少しでも尿がたまると排尿してしまう痙直性型によって治療が変わっていくようです。
・弛緩型の場合
排尿を促すためにベサコリンいわれる膀胱筋の動きを促す薬を投与するようです。他には同じようにアセチルコリンを分解するのを抑えるためにウブレチドなどコリンエステラーゼ祖害悪を使うこともあるようです。
・痙直性型の場合
弛緩型とは逆で副交感神経の刺激が原因で膀胱筋の動きが起こっているので、バップフォーやフラボキサートといわれる副交感神経遮断薬を使うようです。
その他にも抗不安剤や睡眠薬などその症状に合わせた対処療法もおこなわれるようです。膀胱に尿が長い間たまっていると感染を起こしたり腎臓の機能が低下するので、自己導入をすることもあります。
尿路感染症の場合
尿閉と尿路感染症を併発している場合は、尿の培養をし検査結果に適した抗菌薬を内服します。バルーンカテーテルか間欠導尿で尿の排出を行います。セファメジンα注射用、パンスポリン静注用、スルペラゾン静注用、ゾシン静注用などを使われるようです。
尿閉 | 今日の臨床サポート - 診断・処方・エビデンス -
評価・治療の進め方
脳梗塞の場合
脳梗塞が起こると手足の片側に麻痺などの症状がありますが、他にも神経因性膀胱と排尿障害になりやすくなります。脳梗塞になって体が不自由になることによって排尿を強く感じてもすぐにトイレにたどりつくことが難しくうまく排尿できなくなるようです。ひどくなると慢性尿閉になってしまい排尿を促すお薬を服用しますがあまり効果がないこともあるようです。
宮の沢腎泌尿器科クリニック 札幌市西区宮の沢 | 腎 泌尿器科 人工透析 夜間透析 神経因性膀胱 各論
Q.どんな病気のときに神経因性膀胱になるのですか?
女性が排尿障害や尿閉してしまう場合
女性が尿閉する場合、腹圧性尿失禁の手術や、骨盤臓器脱による尿道の屈曲や垂れ下がった子宮や直腸が原因で膀胱頸部を圧迫したり、子宮や卵巣にできた腫瘍による膀胱への圧迫・浸潤などが原因で起こることがあります。
女性の場合膀胱炎になりやすく、症状が重い場合尿意を強く感じ尿失禁が起こることがあります。抗コリン剤などの抗生剤の服用で感染が治れば尿失禁も治ります。
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診断へのアプローチ
産後に尿閉してしまう場合
産後に尿閉を起こしてしまう場合がありますが、これは硬膜外無痛分娩による副作用で起こるもので、妊娠そのものに加え、麻酔の影響で強い尿意を感じることがあるようです。
尿閉の検査とは
尿閉か無尿かを判断する
まず腹部を診察し、膀胱の膨満感などを疑う場合、エコー検査を行います。その後膀胱にカテーテルを入れて導尿を行い、出てきた尿の量を測ります。
ここで大切なのは尿閉と無尿のどちらかを区別します。
・尿沈渣(尿の検査)
・腹部エコー検査(腎臓・膀胱・前立腺など)
・残尿検査
この3つの検査で判断します。
上部尿路・腎臓の合併症を疑う場合
問診で腎盂自然などの尿路感染症を何度も繰り返していた場合や、腹部エコーで上部尿路が大きくなっていたり、腎実質が薄くなっていたりなどがエコー検査で確認できた場合、血液検査で腎機能を調べます。発熱や尿沈渣で膿尿や細菌などが確認された場合、血液検査を行います。
・尿を培養する
・血液検査でCBC,CRP,・BUN,CR,N、K,Cl,Ca,P,TPを調べます
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評価・治療の進め方
尿閉は何科を受診すればいいの?
尿閉は泌尿器科を受診してください。症状によっては急いで受診する必要があります。
まとめ
尿閉について原因・症状・治療法について紹介しました。あまり聞きなれない症状ですが、尿が出なくなってしまう病気というのはとても苦痛を伴う症状です。正常だと尿意があってトイレに行って排尿するのが当たり前だと思っていても、突然尿が出なくなってしまうととてもびっくりするでしょう。
少しずつ尿が出にくくなる症状が続くことがあるようなので、少しおかしいなぁと感じたときはできるだけ病院に行きましょう。女性はなかなか恥ずかしくて病院に行きにくいかもしれませんが、放置しておくと取り返しのつかないことになるかもしれません。
軽いうちに治しておくと手術をしなくても治る症状もあります。勇気を出して病院に行ってみましょう。
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