アトピーは保湿(ワセリン)が命!ステロイドも上手に使って症状をコントロールしよう

アトピー性皮膚炎は、病院で言われた通りにしていても、なかなか治らない厄介な病気です。子どもの頃に発症した人の何割かは10歳くらいまでに良くなってしまうそうですが、良くならないまま大人になることもあれば、大人になってから発症する人もいます。ステロイドは良くない、といった間違った情報も流れる中、本当に必要な治療や気を付けたいポイントなどについてまとめてみました。

アトピーについて知っていますか?

あなたは「アトピー(性皮膚炎)」という病気を知っていますか?花粉症などと同じアレルギーが関係した皮膚の病気で、昔に比べて増えていると言われています。

主な症状は、かゆみを伴う湿疹です。赤くボロボロになった肌で痒そうにしている人、周りにいませんか?皮膚の症状だけではなく、眼の症状や感染症を合併することがあるそうです。

なかなか完治するのは難しいようですが、そんなアトピーについて原因や症状、診断基準、治療法、また日常的に気を付けたいことについてまとめてみました。

アトピーとは

アトピー性皮膚炎とは

アトピーというと比較的新しい病気のようなイメージを持っている人も多いかと思いますが、古代ローマの皇帝もアトピー性皮膚炎と思われるような症状があったという記録があるそうです。アトピーという概念自体は1923年に、CocaとCookeが最初に報告したそうです。

2016年の日本皮膚科学会ガイドラインによると、「アトピー性皮膚炎は増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されています。

すなわち、アレルギーになりやすい体質の人に、かゆみのある湿疹が良くなったり(寛解)悪くなったり(増悪)を繰り返す皮膚の病気がアトピー性皮膚炎と呼ばれるものです。一般的に6カ月以上(乳幼児では2カ月以上)続くと「慢性(まんせい)」と判断されます。

アトピー性皮膚炎の特徴は「かゆみ」と「湿疹」

かゆみのある湿疹が特徴で、最初は赤みがあって痒いだけだったのが、ひどくなってくると水疱などができ、ひっかくと液体が出てきます。乾燥するとささくれだって皮がむけ、症状が長引くと皮膚が硬くなって盛り上がることもあります。

また、この痒みを伴う湿疹は、年齢によってできやすい部位とそうでない部位があるのも、アトピー性皮膚炎の特徴です。

アトピー素因(アレルギー素因)とは

アトピー素因もしくはアレルギー素因とは、アレルギーを起こしやすい体質であることを意味します。皮膚科ガイドラインによると、アトピー素因は次のように定義されています。

1.家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患があること)
2.IgE抗体を産生しやすい素因

IgE抗体を産生しやすい、というのは、アトピー素因がある人は、卵などの食物や花粉、ハウスダストなどに対して特異的IgE抗体を作りやすく、それに対するアレルギー症状を起こしやすいということです。

アトピーの原因とアトピーを悪化させる要因

遺伝的要因

アトピー性皮膚炎の定義にもあるように、アトピーの人は家族もアトピーなどの症状を持っていることが多いことが知られており、何らかの遺伝的要因の関与があると考えられています。

皮膚のバリア機能異常

皮膚にはバリア機能があります。皮膚の一番外側にある「角質」がメインとなって外界からの刺激から守ってくれているのですが、アトピー性皮膚炎の人はこのバリア機能が基本、低下しています。その他、発汗や皮脂分泌といった皮膚の生理機能に異常があり、乾燥しやすいという特徴があります。また、血管反応の異常として白色皮膚描記症(はくしょくひふびょうきしょう)が知られています。

*白色皮膚描記症:アトピーで赤くなった皮膚をひっかくと、ひっかいた部分が白くなる(普通の肌に近い色になる)こと。

アレルギー炎症

アトピー性皮膚炎の人では、皮膚バリア機能の低下により、抗原(アレルゲン)が皮膚へ侵入しやすい状態になっています。免疫機能はアレルゲンを排除しようとしアレルギー反応を起こし、皮膚に炎症を起こしてしまいます。何がアレルゲンとなるかは人によって異なり、主に次のような環境要因が挙げられます。

環境要因(ダニやハウスダスト、花粉、ペットの毛など)

乳児期以降のアトピー性皮膚炎がある人は、ダニやハウスダスト、花粉、ペットの毛といった環境アレルゲンによって症状が悪化することが知られています。

紫外線

皮膚のバリア機能が低下しているアトピー性皮膚炎の人は、紫外線の影響も普通の人より強く受けやすい傾向があります。紫外線には活性酸素を作る働きがあり、活性酸素が過酸化物質をつくります。それによって皮膚のバリアが破壊されて湿疹のできやすい状態になってしまうというわけです。さらに、紫外線の一部は皮膚の奥深くにまで届くため、悪化するのは一時的なものではなく、持続性があると考えられます。

ただし、紫外線を利用したアトピーの治療法もあります。PUVA療法やUVA療法などがあります。治療法の項で取り上げたいと思います。

汗には、皮膚の温度調整や感染防御、保湿といった役割があります。しかし、汗が原因でアトピーの症状が悪化することもままあります。ただし、汗をかくこと=発汗が症状を悪化させるわけではないそうです。むしろ、アトピー性皮膚炎では、発汗機能にも異常があり、汗をかく量がすくない傾向があるそうです。

また、かいた後の汗はかゆみを誘発することが多いため、汗をかいたら早めに洗い流すことが推奨されています。

過度のストレスや過労といった心理的要因

アトピー性皮膚炎はしばしばストレスをきっかけに悪化することが知られています。心理検査を行うと、アトピー性皮膚炎がある人は、ない人よりもストレス反応が増強しているという報告もあります。ストレスは免疫反応を悪化させることから、アトピー性皮膚炎でも同様のメカニズムで症状が悪化するのではないかと考えられているそうです。

化学物質

洗剤や化粧品といった化学物質もアトピーを悪化させる要因となります。化学物質そのものに対する接触性皮膚炎を起こしている場合もあれば、石鹸のすすぎ残しや使いすぎで刺激性皮膚炎を誘発することもあるそうです。

その他

小さな子供では食物アレルギーがあり、アトピー性皮膚炎を悪化させる原因になることがあります。アレルゲンとして多い食材は、牛乳・卵・小麦粉といった3大アレルゲンの他、大豆・そばなどが知られています。

また、皮膚の常在菌がアトピー性皮膚炎の症状を悪化させることが近年わかってきました。

アトピーの症状・重症度の目安

アトピーの主な症状

定義にもあるようにアトピーの症状は強い痒みを伴う皮疹です。ただ、皮疹といっても色々な状態があり、一般的に年齢によって変化していきます。

赤ちゃんの頃よりアトピー性皮膚炎になると、多くは生後半年までに顔や頭に症状がでます。紅斑(赤み)や漿液性丘疹(小水疱を伴うブツブツ)、びらん(皮がむけて真皮がみえている状態)といった症状が多く、じゅくじゅくした感じのことが多いそうです。頭にはかさぶたがつき、耳たぶの下に炎症が起きると耳切れが見られます。

1歳を過ぎてくると、皮膚全体が乾燥してざらざらした感じになることが多いそうです。また、足の関節部に痒みの強い赤みやブツブツがみられ、苔癬化(たいせんか)を伴うこともがあります。ひっかいたことによって、じゅくじゅくした肌になることもあります。

*苔癬化:皮膚が硬く厚くなり、皮溝や皮丘の形成が顕著になった状態
**苔癬:同じくらいの大きさの丘疹が多数集まっている状態が長く続き、ほかの皮疹に変化しないもの

そして10歳くらいまでにアトピーが良くならないと、成人型と呼ばれる症状になります。大人のアトピーで特徴的な症状は苔癬化です。また、上半身から頭部にかけて皮疹ができやすいという特徴があります。重症冷では、かゆみの強い紅斑、小丘疹、苔癬化病変がほぼ全身に認められます。

軽度

主な症状は、痒みと乾燥したカサカサ肌です。腫れたり体液がでてじゅくじゅくしたりはしていない状態です。皮疹がある面積がどれくらいかは問いません。

中等度

強い炎症を伴う皮疹が、体表面積の10%未満に認められます。

*強い炎症を伴う皮疹というのは、紅斑や丘疹、びらん、潰瘍、苔癬化などを伴う病変のことです。

重症

強い炎症を伴う皮疹が、体表面積の10%以、30%未満に認められます。

最重症

強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%認められます。

アトピーの検査および評価方法

血液検査

アトピー性皮膚炎を診断する上で、次のような血液検査の値が参考にされるそうです。

・血清IgE値:アトピー性皮膚炎がある人の約80%で、血清IgE値が高値を示します。この値は、長期的なアトピーの状態を反映していると考えられています。
・好酸球数:白血球の1種である好酸球数が増加することがあります。特に短期的な症状の変化を反映すると言われています。
・血清LDH値:アトピー性皮膚炎がある人ではLDHの値も上昇することがあるそうです。
・血清TARC値:IgE値やLDH、好酸球数などに比べアトピーの病勢をより鋭敏に反映する指標と言われています。年齢により基準値が異なります。

VAS:Visual analogue scale(痒みの評価)

痒みの程度を評価する方法に「VAS」というものがあります。10㎝の線を引き、かゆみの程度を0~10に分けて評価します。左端の「痒みなし」を0、右端の「最もひどい痒み」を100として、左端からしるしをつけた部位までの距離(㎜)を痒みの尺度値とします。

SCORAD:Severity Scorting of Atopic Dermatitis(重症度の評価)

アトピー性皮膚炎の体全体の重症度を評価する方法で、世界的に使われているのが「SCORAD」という方法です。全身にどれくらい皮疹があるかや皮疹の強さ、皮膚炎による自覚症状の強さなどを点数化します。最高点数は103点になります。

主な合併症

皮膚の病気

接触性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とまぎらわしい皮膚の病気で接触性皮膚炎というものがあります。いわゆる「かぶれ」です。アトピー性皮膚炎に合併していることもあります。接触性皮膚炎はアトピー性皮膚炎とはアレルギーのタイプが異なり、好酸球やIgE抗体は関与しません。何が原因であるか特定して、その原因物質との接触を避けることが一番の治療になります。

結節性痒疹(けっせつせいようしん)

結節性痒疹とは、激しい痒みを伴う硬いブツブツで、1年以上治らず徐々に拡大して硬い塊になることがあります。虫刺されの後にできることもあれば、アトピー性皮膚炎などに合併することもあります。

感染症

アトピー性皮膚炎では、細菌や真菌(カビ)、ウイルス感染症を合併しやすいことが知られています。皮膚バリア機能異常や皮膚免疫活性の低下が原因で、感染症が起こりやすいと考えられています。しかも、重症化しやすいことが知られています。

細菌感染では、伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)いわゆる「とびひ」が問題となります。ウイルス感染では、カポジ水痘様発疹症や伝染性軟属腫(いわゆる水いぼ)などに注意が必要です。これらの合併症は、皮膚の症状だけでなく、発熱や全身倦怠感、臓器障害などを伴う場合があるそうです。

眼の病気

眼の病気を合併することもあります。特に、顔の発疹がひどくなるタイプで、適切な治療を行わずに重症化してしまうと眼の病気を合併しやすいそうです。

多いのは、アレルギー性結膜炎で頻度は46%という報告があります。気を付けなければならないのは、白内障と網膜剥離です。頻度はそれぞれ25%と15%という報告があります。どちらも視力に影響を与える疾患で、適切な治療が必要となります。

*白内障:眼の水晶体というレンズの役割をしている部分が白く濁ってくる病気
*網膜剥離:眼球の内側にある網膜というカメラのフィルムに当たる役割をしている膜がはがれて、視力が低下する病気。

精神面への悪影響

アトピー性皮膚炎という治りにくい、強い痒みを伴う皮膚症状があるために、心理的苦痛や社会的機能の障害が生じることによって精神面への影響が出ることがあります。

例えば、強いかゆみによる睡眠障害、顔などの症状がひどい場合にみられる対人関係の障害、抑うつ気分、不安、ひきこもり、学業や職業における業績の低下などがあるそうです。また、医療に対する不信感や症状のコントロールに対する無力感が強くなることもあるようです。

アトピーの治療

治療のポイントは「悪化させないこと」

アトピー性皮膚炎は良くなったり悪くなったりを繰り返すと定義されているように、完治を望むのは難しい疾患です。したがって治療のポイントは悪化させないように症状をコントロールすること、になります。

皮膚の返照が続くと、それに伴ってかゆみも続きます。かゆいと無意識のうちに引っかいてしまい、さらに炎症が悪化して、皮膚のバリア機能も低下するという悪循環に陥ります。そうならないために、できるだけ早く皮膚の炎症を抑えることが大切になります。そのために、以下のような薬が使われます。

外用薬(塗り薬)

ステロイド外用薬

ステロイド外用薬には免疫反応を抑える作用があり、炎症を抑える強さで5段階に分類されています。強い順にストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、ミディアム(マイルド)、ウィークです。皮膚炎の症状に応じて使い分けます。

・重症(腫れて赤みを帯びてもりあがり、カサカサやささくれなども一層ひどくなった状態)→ベリーストロングまたはストロング
・中等症(カサカサや赤み、皮膚のささくれなどがひどくなり、腫れた部分が硬くなった状態)→ストロングまたはミディアム
・軽症(カサカサして赤くなり、皮膚がささくれて、皮がむけたりする状態)→ミディアム以下
・軽微(カサカサと乾燥した状態)→ステロイドを含まない外用薬を使う

免疫抑制外用薬(プロトピック軟膏)

タクロリムスという免疫抑制剤を外用剤としたもので、商品名はプロトピック軟膏です。免疫反応を抑える働きがあります。ステロイド外用薬を長期間使い続けることによる副作用が心配な場合などに使われます。炎症を抑える強さは、ミディアム~ストロングクラスのステロイド外用薬と同じくらいと言われています。

<メリット>
・皮膚が薄く弱くなる「皮膚委縮」や血管が網の目状にみえるようになる「毛細血管拡張」の副作用がほとんどない
・顔や首など皮膚が薄い部位では吸収が良いため、副作用のリスクが免疫抑制剤の方がステロイド外用薬より適している

<デメリット>
・有効成分の粒がステロイドに比べ大きいため、手のひらやあしの裏など、皮膚が厚い部分では吸収されにくく、効果が出にくい
・強い炎症を抑えるには力不足なので、重症の人には適さない
・使い始めは、皮膚がヒリヒリすることがあり慣れが必要
・2歳未満と妊娠女性、使用禁止
・使用後に直射日光を浴びるのは避けた方が良い

保湿剤

皮膚のバリア機能が弱くなっているため、保湿剤でうるおいを保つことた大切です。水分や角質細胞間脂質であるセラミドを補うタイプや油分で皮膚をカバーして水分の蒸発を防ぐタイプなどがあります。

・角質層内の水分をひきつけて潤いを保つ→ヒアルロン酸製剤、水溶性コラーゲン製剤、ヘパリン類似物質製剤
・角質層内の水分をひきつけたり、角質層を柔らかくする→尿素製剤
・セラミドを補う→セラミド含有製剤
・油分が皮膚を覆って水分の蒸発を防ぐ→白色ワセリン

また、同じ薬でもクリームやローション、軟膏という形状の違いによって保湿効果や使用感が異なります。自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。

・軟膏→皮膚への刺激が少なく、皮膚を保護する力が強い。ただし、ベタつきやテカりが気になりやすい。
・クリーム→軟膏とローションの中間。軟膏よりはベタつかずテカらないので、顔など肌が見える部位にも使いやすい。皮膚への浸透性も良い。ただし、傷口に塗ると痛い。
・ローション→即効性があり広い範囲や髪の毛のある頭皮などにも塗りやすい。ただし、効果が長続きせず、軟膏やクリームに比べ刺激性が強い。
・ゲル→軟膏とクリームの特徴を持ち、皮膚への刺激が少ない。ただし、クリームに比べるとベタつきが気になる。

外用薬の塗り方のコツ

手をきれいに洗ってから、皮膚を刺激しないようにやさしく塗り広げます。広い範囲に塗る薬から先に塗ってあげます。保湿剤→ステロイド、もしくは保湿剤→プロトピックの順で塗ります。ステロイドやプロトピックだけでは保湿力が弱く乾燥を防げないので、保湿剤を併用して皮膚を保護するようにしましょう。

また、手のひらや足の裏など皮膚が厚い部位では、入浴直後の皮膚が柔らかくなっている時に塗ってあげると、薬の浸透が良くなり、効果的です。

内服薬(飲み薬)

抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬

かゆみ止めとして、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が処方されます。完全に痒みをなくすことは難しいようですが、軽くすることができると言われています。痒くてひっかき傷を作ると皮膚炎の症状が悪化するので、予防的な意味からも用いられます。また、これらの薬は、花粉症やじんましんなどにも使われています。

ステロイドの内服薬

塗り薬で症状が抑えらない場合、ステロイドの内服薬を短期間だけ使うことがあります。効果が高い分、様々な副作用があるため飲み方や量、期間を必ず守る必要があります。自己判断で飲み方を変えるのは、思わぬ副作用や症状の悪化を招くことがあり危険です。

免疫抑制剤の内服薬

医師の判断によっては免疫抑制剤を内服薬を処方されることもあります。強い炎症を伴う湿疹が広範囲に生じているような場合に適用となります。ただし、16歳以上で、最大3か月までなど細かな決まりがあります。副作用にも注意が必要です。

漢方薬

漢方薬では、「消風散」と「補中益気湯」の2つが有用であったという研究結果が出ているそうです。

消風散は、ステロイドなど外用薬による治療で皮疹が軽快しない例に効果があったそうです。補中益気湯は、「疲れやすい」「体がだるい」「根気が続かない」など気虚を有すると判断された例でステロイド外用薬を減量することができたそうです。

ただ、漢方薬は本来、東洋医学の考えに基づいて処方されるものであり、西洋医学のように症状に対して「この薬」と決められるものではないので、有用性についての評価が難しいそうです。

また、漢方薬でも重い副作用が出ることがあります。なんとなく、漢方薬には副作用がない、とか、副作用があったとしても大したことがないようなイメージがありますが、中には重篤な症状を引き起こすものもあるので注意が必要です。

その他

その他、紫外線療法やプロバイオティクスという療法があります。

紫外線療法に関しては、ベテラン医師が適応を十分に考慮した上で行えば、効果があると言えるそうです。今後の発展が期待される分野のようです。

プロバイオティクスは2001年より注目されるようになり、乳酸菌飲料でアトピー性皮膚炎の症状が軽くなったという報告もありました。しかし、現時点では明らかな予防や治癒効果は確認できていないようです。

ステロイドは安全か?

ステロイドは安全か?

今から数十年前、「ステロイドは良くない」、「使わない方が良い」などという風潮がありました。それに伴い、多くの民間療法やアトピー商法と呼ばれるような怪しげな薬やサプリがたくさん売られていました。今でもステロイドに対して強い不安を抱いている人は多いようです。

このステロイドに対する不安の多くは、ステロイド外用薬の副作用とステロイド内服薬の副作用を混同していることによるものだそうです。ステロイドの内服薬は確かに多くの副作用があり、用法用量の調整が難しい薬でもあります。しかし、アトピー性皮膚炎の治療で使うのは、外用薬が中心となりますので、忌避するほどの副作用はないと考えても大丈夫なようです。

また、「ステロイドは良くない」という思いから処方されたステロイドを十分量使わずにいると、医師が期待した治療効果が得られずに、必要以上に強いステロイド外用薬が処方されることもあるようです。こうなると適切な治療を受けるのが難しくなってきてしまい、症状も良くならず余計にステロイドに対する不信感が強まることになるようです。

「ステロイドは良くない」と決めつけず、適切に使用すれば、アトピー性皮膚炎を治すための強い味方となってくれると思われます。

ステロイド外用薬の副作用について

ステロイド外用薬の副作用は内服薬と違って、塗った場所だけに限局します。適切に使用していれば、副作用がおこったとしても長くは続かないと考えられます。ただし、長期間使用していると皮膚が薄く弱くなる「皮膚萎縮」や血管が網の目状に見える「毛細血管拡張」などが現れる可能性があり、そのような場合にはかかりつけ医に相談するようにしましょう。

脱ステロイドの問題点

皮膚感染症の増加

脱ステロイドをすれば、それまでステロイドによって抑えられていたアトピーによる皮膚僧正は確実に悪化してしまいます。それを如何にして超えるかが脱ステロイドの第一関門でもありますが、この悪化した皮膚にはアトピーではない皮膚に比べ、100~1000倍異常の黄色ブドウ球菌が検出される、という報告があるそうです。

この菌は、皮膚常在菌(皮膚の表面に常にいる菌)ですが、増殖すると「とびひ(伝染性膿痂疹)」を起こすことでも知られています。アトピー性皮膚炎の人は、伝染性膿痂疹を合併しやすいので知っている人も多いのではないでしょうか。脱ステロイドはこのような皮膚の細菌感染を起こしやすくする、というリスクがあるので注意が必要です。

漢方薬や民間療法の治療による死亡例も

アトピーに「ステロイドは良くない」、などと言われていた頃、アトピー性皮膚炎の人が民間療法を受けた後に死亡した事例が報告され、全国ニュースでも報じられました。

このケースは41歳の女性で、36歳からアトピーが重症化し、漢方薬や民間療法で主に治療していたとのことです。全身に湿疹が広がっている紅皮症化した状態にも関わらず、2日間温泉療法を受けたそうです。温めれば最近は増殖します。湿疹を起こした状態では皮膚のバリア機能は低下して、細菌感染を起こしやすいのは先に述べた通りですが、この症例ではA群溶連菌感染症をおこし、菌が血液内に入り込み、急激な敗血症を起こし、多臓器不全で死に至ったそうです。

アトピー施術で死亡

アトピー性皮膚炎が悪化して37歳の女性が死亡した事例。こちらは2010年のニュースです。必ず良くなる、などと言われ、美容サロンに通院し、健康食品を購入していたそうです。また、魂の病気と言われ「除霊」も行われていたようです。なぜ死に至ったか詳しい内容はニュースに出ていないのでわかりませんが、ステロイドを忌避する心につけこみ、除霊などと称してアトピーを悪化させ死に至らしめたサロンの経営者たちは酷い、としか言えません。

日常生活で気を付けたいこと

アレルゲンの少ない環境作り

アトピー性皮膚炎はアレルゲンに暴露されると悪化します。したがって、いかにアレルゲンを回避するかが大切になります。そのためには次のようなことがお勧めです。

・絨毯や畳はダニの棲みやすい環境なので、床はフローリングがベスト
・布団はこまめに干し、できれば掃除機をかける
・ぬいぐるみなどはなるべく触らない、置かない
・こまめに掃除をしてハウスダストやダニを除去する
・花粉などを家に入れないように、上着をたたいてから家に入るようにする

やさしく洗って皮膚を清潔に保つ

アトピー性皮膚炎の炎症部位からは黄色ブドウ球菌という細菌がよく検出されるそうです。この菌がひっかいてできた傷やバリア機能が低下した皮膚から侵入しないようにするために、入浴やシャワーなどで洗い流す必要があります。

また、炎症を悪化させるような刺激物質を洗い流すという意味でも皮膚を清潔い保つことは重要です。ただし、洗いすぎで悪化させないために、次のような点を守るのがポイントです。

・皮膚の汚れは早めに落とす
・石鹸をよく泡立てて、こすらずに柔らかいタオルや手のひらでやさしく洗う
・症状がひどい時は石鹸を使わずにお湯で流すだけにする
・ぬるま湯が望ましく、熱いお湯は痒みを悪化させるので避けた方が良い
・刺激を感じる入浴剤や石鹸、シャンプーなどは使わないようにする
・入浴後は10分以内に保湿する

正しい保湿

治療の項でも書きましたが、アトピー性皮膚炎の人は低下している皮膚バリア機能を補うためにも「正しい保湿」がとても大切になります。じゅくじゅくした皮疹が治って目立つ症状が治った後も保湿を続けることで、皮膚炎の再燃を予防することができます。また、厄介な痒みもほとんどない状態を保つことができます。

ただ、合わない保湿剤を使用すると接触皮膚炎などが起こることもあるため、なるべく余分なものが入っていない保湿剤を使用することがお勧めです。

入浴後や朝などに全身に保湿剤を塗るのがお勧めです。特に入浴後は保湿剤の吸収が良くなっていますので、入浴後すぐに塗るのが良いとされています。また、薄くつけても効果があまり期待できないので、たっぷり塗りましょう。特に、首や肘・膝の内側など皮膚が薄い部位や背中や脇など皮膚がこすれやすい部位は十分に保湿してあげましょう。

紫外線対策

女性なら紫外線対策は当たり前、という人も多いかと思います。日差しの強い日には日焼け止めを塗り、長袖や帽子でなるべく肌に直接紫外線が当たらないようにしましょう。

バランスの良い食事

やっぱり「バランスの良い食事をする」ということはアトピー治療においても大切なようです。肉より魚が良く、砂糖は少なめ、根菜類や海藻の多い食事が良いそうです。食の欧米化がアレルギー疾患増加の一因だ、という説もあり、そうなると昔ながらの日本食がベターなんでしょうね。

また、食物アレルギーがわかっている場合は、その食べ物を除去すると一定の治療効果が認められたという報告がありますた。ただし、妊娠中の女性がアレルゲン除去食を食べてもアトピー性皮膚炎の発症予防には効果がないという研究結果が出ているそうです。むしろ食事制限による栄養不足などが未熟児の発症リスクを増加させるという可能性が指摘されています。

その他、日常生活で気を付けたいこと

・ちくちく、ゴワゴワして肌に刺激のある服を着ないようにする
・洗濯用洗剤は界面活性剤の含有量が少なく、経口剤を含まないものを使うようにする
・洗濯はすすぎを十分に行うようにする
・室内を清潔にし、適度な温度と湿度を保つようにする
・爪を短く切って、ひっかき傷ができにくいようにする

まとめ

アトピー性皮膚炎についてまとめてみましたが、いかがでしたか?

とにもかくにも「保湿」が大切である、ということは伝わったでしょうか?なかなか治らないからとステロイドなど薬や治療法に不信感を持つのではなく、アトピーとは治りにくい病気なんだと思って、根気よく治療を続けていくのが大切なんだと思われます。

そして、負担にならない程度に「日常生活で気を付けたいこと」を意識していけると良いのではないでしょうか?たっぷりの保湿に適切なステロイドやプロトピックの使用、ストレスフリーな生活にアレルゲンを極力排除した生活。ぜ~んぶを完璧にしようとすると、逆にストレスになってしまいそうですから、できることから少しずつやっていくことをお勧めします。

決して、アトピー商法なんかに騙されちゃダメですよ~。昔、散々ひっかかった者の心からの願いです。

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