7月は子どもの「プール熱」に気をつけて。主な3つの症状と治し方
プール熱って聞いたことありますか?お子さんをお持ちのお母さんなら、「ああ、うちもやった」なんて方も多いと思いますが、まだ小さい赤ちゃんをお持ちの家庭では、これから罹患する可能性があります。どんな病気か知っておいて慌てないようにして下さいね。
プール熱とはどのようなものなの?
プール熱という言葉を聞いただけだと、どんな病気か想像がつきにくいですよね。知恵熱のような感じでプールに入ると熱が出るのでしょうか?それともプールのバイキンをもらうのでしょうか?
プール熱についての4つの基礎知識
プール熱は、プールに入る夏場の時期に流行しやすいことから、この名前が付いています。もちろん、プールで感染することもあれば、その他の原因で感染することもあります。それではプール熱について詳しく見ていきましょう。
プール熱とは
プール熱というのはもちろん俗称であって、医学的な正式名称は「咽頭結膜熱」といいます。保育園や幼稚園など、乳幼児が集団生活を行う場で、夏場にプールなどを介して流行することからプール熱と呼ばれている訳です。プールの塩素濃度管理が十分でない場合に起こることがあるそうです。
ただ、プールだけが原因ではなく、流行中にはプールに行かなくても感染することがあります。なぜかというと、感染経路がプールだけではなく、罹患者のくしゃみや咳から飛沫感染することや、罹患者の手指や、罹患者が触ったタオルなどから接触感染することがあるからです。
プール熱の原因となるのはアデノウィルスと言われていますが、このウィルスは細かく見ていくと50種類くらいの型に分けられるそうで、さまざまな疾患を引き起こす原因ウィルスとなっています。その中の3型・4型・7型などが、プール熱の原因となっているようです。
好発年齢
プール熱にかかりやすいのは、乳幼児から昇格性にかけての子供です。ただし、家庭内での二次感染などによって、大人がかかることもあります。
潜伏期間
潜伏期間は5日から6日と言われています。いつまでうつるかというと、プール熱の流行時期は通常、6月から10月頃までです。プールが始まる6頃から徐々に増加しはじめ、7月から8月頃にピークをを迎え、その後、10月頃まで流行が見られます。ただ、アデノウイルス自体は1年を通して活動しているので、夏以外にも流行することがあります。
学校保健法で指定伝染病になっているので、主症状が消失してから2日間は登校禁止となっています。2日を過ぎれば登校は可能ですが、症状がなくなってからも2~3週間は、感染力を持ったウイルスが便から排泄されます。保育園の場合は、園によってルールが設定されていたりするのでこの限りではありません。
はやり目との違いは?
プール熱と同じくアデノウィルスが原因で、プール熱の症状と同じように目が赤くなる病気に、「はやり目」があります。プール熱と同様これも俗称で、正式名称は「流行性角結膜炎」といって、アデノウィルスの8型・4型・19型などが原因となって発症すると言われています。
流行性角結膜炎はアデノウィルスに感染してから7日~14日で発病します。この病気は症状が非常に強く現れるのが特徴です。まぶたの裏側にブツブツが出来たり、充血が見られたり、まぶたが腫れる、涙がたくさんでる、また、起床時に目が開かないほど目やにがでるなどの症状があらわれます。
はじめの1週間は症状が非常に強いのですが、次の1週間で落ち着き、その後の1週間で治っていきます。そのため、完全に治癒するまでにはおよそ3週間ほどかかる計算になります。ただし、症状がひどい場合や、睡眠や休息が十分に取れていない場合などは、1ヶ月くらいかかってしまうこともあります。
流行性角結膜炎をはじめとするウィルス性の結膜炎の場合、アレルギー性の結膜炎や細菌性の結膜炎の場合とは違って、発病している間、またはいったん結膜炎の症状が軽減した後に、角膜(黒目の部分)が濁る、「角膜混濁」という後遺症が現れる場合があります。
角膜混濁が現れると、ものを見づらくなったり、光が反射して見えるなど、視力に影響を及ぼすことがあります。このような場合には、点眼薬を用いて濁りを取る治療を行いますが、状態によっては治るまでに1年以上かかることもありますので、治るまでしっかり治療をすることが肝心です。
プール熱の主な症状は、突然の高熱と喉の腫れ、結膜の炎症の3つなのですが、この3つの症状が同時に出現することは少ないために、はやり目とプール熱の判別には慎重な判断が要されることとなります。
プール熱の主な症状はどんなもの?
先程も少し触れましたが、プール熱の主な症状は発熱、のどの腫れ、結膜炎の3つです。プール熱におけるこれらの症状にはどのような特徴があるのか見ていきましょう。
発熱
プール熱の症状としては発熱が挙げられますが、それも高熱が出るのが特徴です。40度近い高熱が4日から1週間ほども続きます。また、それにともなって頭痛や吐き気、腹痛や下痢を訴えるようなケースもあります。
咽頭痛
プール熱の代表的な症状の一つとして、のどの痛みも挙げられます。この後でご紹介する結膜炎と発熱と合わせて3つの症状が特徴なのですが、必ずしもその3つが同時に現れる訳ではないので、校医ではない開業医のお医者さんにとっては、風邪との判別が困難なところでもあります。
結膜炎
プール熱の症状としては結膜炎も見られます。筆者は身をもって体験したことがあるのですが、子供がプール熱にかかった際に、一緒にお風呂に入っていて、水鉄砲でしたたかに顔にお湯をかけられたことがあります。その翌日、目を覚ましたのですが「目が開かない」のです。
「なんだこれは?」と思ったら、目やにが固まってまぶたに貼りついており、やっとこさ開けてみたら目が真っ赤、ということがありました。このように、大人も感染することがあるので注意が必要ですよ、という訳です。
プール熱の治療法について教えて!
40度近い高熱が出たり、目が真っ赤に腫れたり、のどが痛くなったりするプール熱。お子さんがこんな病気になってしまうと心配なことと思います。そのような場合、なにか有効な治療法はあるのでしょうか?
対処療法について
結論から言うと、プール熱そのものに対する治療法はありません。基本的にウィルスに対する治療薬というのは、インフルエンザの抗インフルエンザ薬くらいしか存在しません。抗インフル薬ですら、ウィルスを死滅させることは出来ず、ただ、現状よりもウィルスが繁殖しないようにするのみです。タミフルの効果にすら懐疑的な医師もいます。
なので、基本的に治療法は対処療法ということになります。だからこそ、普段の日常から、規則正しい生活を行ったり、バランスの良い食事を取ったり、適度に体を動かすなどして、免疫機能を向上させておくことが大事となるのです。
治療薬について
先程の述べたように、プール熱に対する有効な治療薬はありません。なので、痛みに対しては消炎鎮痛剤、熱に対しては解熱剤を投与することが一般的です。しかし、「小児に対する安全性の確実なエビデンス(根拠)が存在する痛み止めや熱冷ましの薬はほとんどない」と主張している医師もいます。
水分補給
プール熱に罹った場合、発熱している期間が長いため、脱水症状にならないよう、こまめに水分補給を行うことが大事です。水や麦茶などを飲ませるのはもちろんのこと、牛乳や味噌汁、スープなどを食事の時に与えたり、経口補水液を飲ませるのもいいでしょう。
栄養補給
プール熱になると、のどに痛みがあったり高熱のために食欲が減退しがちです。なので、のど越しが良くて消化に良いものを与えるとよいでしょう。筆者は子供がプール熱になった時に、茶碗蒸しを作って冷やしてあげました。玉子は完全栄養食品ですから、栄養補給にももってこいですよ。
プール熱の予防法はあるの?
プール熱は飛沫感染と接触感染によって罹患しますので、予防法はおのずから決まってきますよね。具体的には以下のような方法が考えられます。
手洗い
風邪予防の基本ですね。プール熱に対しても当然、同じことが言えます。なぜか?風邪というのは医学的には「かぜ症候群」といって、そのほとんどがウィルス感染によるものだからです。
うがい
手洗いと並んで、二大風邪予防法です。最近、京都大学のグループよって、うがいの風邪予防に対する有効性が科学的に実証されたそうですよ。
タオルの共用は避ける
プール熱は接触感染によっても起こるので、ちょっと神経質なようですが、罹患者と同じタオルを使わないようにするなど気をつけましょう。特にトイレのタオルは要注意です。
子供は病気をして強くなるものです!
風邪をひいたらすぐ薬、という考え方でいると、長い目で見た場合、子供の健全な成長を阻害してしまいます。プール熱はそのような考え方を改めるいい機会になると思います。もちろん、お子さんが苦しんでいるのはとても可哀そうですよね。だからこそ、普段から免疫機能を向上させるような食事や生活習慣を心がけることが大事な訳です。
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