社会保障・雇用・労働
年金の世代間格差、そろそろ「本当の話」をしよう【現役世代必読】
民進党の改革法案反対は支離滅裂だ!

滑稽な「レッテル貼り」

11月25日午前の衆議院厚生労働委員会において、年金改革関連法案について筆者は参考人として意見陳述した。同法案は同日午後の同委員会で、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で可決された。

これを「強行採決」と報じるマスコミは困ったものだ。

また、反対する民進党議員らが委員長席に殺到し、彼らはカメラマン席に向かって「年金カット 反対!」などと書かれたボードを掲げていたが、まったく滑稽な光景である。

そもそも、「強行採決」とはマスコミ用語で、少数派が審議を希望しても多数派が審議が尽きたということで採決することをいう。なかなか英訳しにくい言葉であるが、それは欧米では議会の手続きに従っているかぎり、「強行」とはいわないからだ。つまり、議会手続きに瑕疵(かし)がなければ、議会政治の基本としての多数決による普通の採決であるのだ。

また、民進党などは「年金カット法案」というレッテルを貼るが、はたしてどうか。

法案の中身は、年金額改定ルールの見直し、短時間労働者への被用者保険の適用拡大の促進、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織の見直しなどである。

そこで、筆者が国会で行った意見陳述の骨子を紹介しよう。これはあくまで筆者のメモなので、実際に国会で話したことと異なる点もあるが、趣旨は変わっていない。

 

世代間格差是正の第一歩

【マクロスライド制】

「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案」については、賛成の立場で意見を述べる。

私はバランスシートアプローチを提唱し、それに基づく分析をしてきた。2004年改正で導入されたマクロ経済スライド制は、年金財政の安定性を高めるとともに、世代間格差の拡大を少しでも食い止めるための措置だ。

過去の改正は、世代別のバランスシートで見れば、世代間の格差を広げた可能性があるものがあるが、マクロスライドで、現在の高齢者の給付を削減し、将来の高齢者の年金を確保しようとした試みは、評価に値する。

【デフレ】

問題は、過去の政権でスライド制の実施を行わなかったことだ。そのため世代間格差が広がる一方だった。

遅きに失したとは言え、今回の法案は、わずかではあっても、こうした現状を改善し、現役世代の保険料負担が重くなり過ぎないようにし、将来世代の年金給付を増やそうとしている点で賛成だ。これは年金の持続可能性の観点からも望ましい。