結核の症状とは?赤ちゃんや子供も要注意!原因や治療法も紹介します

結核は、日本の明治期においては国民病と言われるほど患者数の多い病気で、当時は結核に感染してしまうとほとんど治療することが出来ず、若くして命を落とす人も少なくありませんでした。現在は抗生物質を用いた治療法の普及により死亡率は激減していますが、未だに毎年4万人ほどの患者が発生しており、決して過去の病気とは言えません。結核の症状や治療法などについての知識を身につけ、対策をとるようにしていきましょう。

結核について知っておきたい

結核は、大正時代から昭和時代前半までは日本における死因第1位の疾患でした。その後、患者数は減少傾向にありましたが、平成9年には38年ぶりに結核の新規患者数が前年を上回り、現在も患者数の兆しは見えていません。

また、現在においても年間4万人以上の患者が発生している、日本における最大の感染症であって、決して「過去の病気」ではないのです。

近年、結核の患者数が増えてきている理由の1つに、高齢者の結核患者の増加が挙げられます。さらに、集団感染や院内感染、多剤耐性結核菌の出現など様々な問題も出現してきたこともあり、厚生省では平成11年7月に「結核緊急事態宣言」を発表して注意喚起を促しています。

ここでは、結核の感染経路や発病の仕組み、症状や治療方法について出来る限り詳細にご紹介していきます。結核の正しい知識を身につけ、しっかりと対策をとるようにしていってくださいね。

結核について

結核とは

結核は、「結核菌」という細菌により発症する感染症です。結核菌が体の中に侵入し、体の中で増殖することで発症します。結核は感染症であるため、発症後病気が進行していくと他人にうつしてしまう可能性があります。

結核の種類

結核にはいくつか種類があり、日本における結核の約8割は肺結核とされています。結核菌が肺の内部で増殖し、結核特有の様々な症状が現れて始めます。症状が進行すると、肺が破壊されて呼吸機能が低下していきます。

結核が肺以外の臓器を冒し、様々な部分に影響を及ぼすことを肺外結核と言います。肺以外に起こる結核として、結核性骨髄炎、頸部リンパ節結核、肺門リンパ節結核、粟粒(ぞくりゅう)結核、結核性胸膜炎、腎結核、骨関節結核(脊椎カリエスなど)、皮膚結核など、様々な種類があります。

結核の感染経路

結核患者が咳をすると、空気中に結核菌が撒き散らされます(排菌)。その空中にふわふわと浮いている結核菌を他の人が吸い込むことにより、結核の感染は広がっていきます。これを空気感染または飛沫核感染と言います。また、結核は患者の手に触れる、同じ食器を使うなどといった行為から感染することはありません。

感染と発病の違い

結核菌を吸い込んでしまっても、必ずしも全ての人が感染するわけではありません。体の抵抗力によって結核菌が追い出されて、発病しないことも多いのです。また、菌がしぶとく体の中に残ったとしても、体に備わっている免疫機能が結核菌を取り囲むように「核」を形成してその中に結核菌を封じ込めます。

このように、菌が体内に潜伏していても、核の中に封じ込められたまま活動していない状態のことを「感染」と言います。「感染した」だけの状態であって、まだ「発病」していなければ、周囲の人に結核を感染させる心配はありません。

また、「発病」とは感染後、結核菌が活動を開始して菌が増殖し体の組織を冒していくことを言います。発病後、症状が進んで咳や痰により菌が空気中に吐き出され(排菌)ていくと周囲にも結核をうつすことになります。ただ、「発病」しても「排菌」していない場合は、周囲に感染を広げることはありません。

発病する人の割合

BCG接種を受けていれば、結核に感染した人が発病する割合は5〜10%と言われています。ただ、若年者の集団感染の報告事例の中には、BCG接種をしていても感染した人の10〜20%以上において発病が確認されたものもあります。

一般的に結核は感染してから2年以内に発病するケースが多く、発病者の60%が1年以内に発病するとされています。一方で、感染後数年から数十年後に発症したというケースも報告されています。

日本人の結核発病者数

厚生労働省により報告された、結核登録者情報調査(平成26年度)によると、年間の新登録結核患者数は2万人を下回り、罹患率の減少が見られたとしています。ただ、現在でも年間1万9千人以上の方が新たに結核に罹患しています。

これは欧米諸国と比較すると非常に高い割合で、日本の結核罹患率(人口10万人に対する新登録結核患者数)が15.4であるのに対し、米国では2.8、ドイツでは5.1、オーストラリアでは5.4との報告があります。

また、結核患者の高齢化が大きな問題となっています。新規登録結核患者の37.7%を80歳以上が占めており(罹患率:76.7)、これは70歳代と比較すると約2.7倍の数字です。

さらに日本国内における結核罹患率には地域差が大きく、首都圏、近畿地域、中京などの大都市において罹患率が高い傾向がみられます。各大都市の罹患率は大阪市が36.8とトップで、名古屋市23.2、京都市21.8、堺市21.5、神戸市21.5、東京都特別区21.2となっています。

結核を発症しやすい人

結核の感染経路は明らかになっているものの、何がきっかけとなって体内で結核菌が増殖を始めて発病するのかについては、まだはっきりとは分かっていません。ただ、免疫力が弱まると、免疫機能により押さえ込まれていた結核菌が活動を始めて発病しやすくなると言われています。

また、お年寄りや過労が溜まっている人、栄養不良、他の疾患による体力低下などが原因で抵抗力が落ちていると、結核の発症率が高まるとされていますので注意が必要です。

発病者が身近にいる場合の対処法

もし発病中または排菌中の方が周囲に感染させた可能性がある場合は、患者の住所を統括する保健所により、患者本人の病状確認・周囲の人の年齢・接触状況などを踏まえて、周囲の人を対象に検診が行われます。

ただ、結核菌の増殖には時間がかかりますから、周囲の方への検診が実施されるのは、感染源の方の結核の診断から1ヶ月から2ヶ月後になることも少なくありません。もし周囲の方への感染が見つかった場合には、発病を抑えるために抗結核菌薬を使用して発病予防が行われることもあります。

結核の発病のしくみ

感染時の状況

感染者のうち、肺結核を発症するのは10人に1人から2人程度の割合とされています。結核菌が肺に侵入すると、まず本人の持つ免疫と結核菌により戦いが起こります。この時、免疫により結核菌を封じ込めることが出来れば、結核に感染しても発症することはありません。

ただ、感染初期の免疫と結核菌の戦いで結核菌が免疫力を上回ったり、封じ込められていた結核菌が何らかの理由により活性化すると結核を発症してしまうことになります。

冬眠状態から発症する場合

体に侵入した結核菌が免疫により封じ込めることが出来ると、結核菌は冬眠状態に入ります。通常は、この状態のまま体内で10年、何十年という時を過ごすため、結核を発症することはありません。

ただ、何らかの理由により免疫力が低下してしまうと、結核菌が活性化した増殖を始め結核の発症に至ります。最初に感染した時から1年以上経過していることも少なくありませんし、中には感染から20年、30年後に発症することもあります。これは内因性結核と呼ばれ、感染した人の15%に見られるものです。

感染後すぐに発症する場合

結核菌感染初期に、免疫のでき方が悪かった場合は、結核菌がすぐに体内で増殖して発症に至ります。これは赤ちゃんや、もともと何らかの疾患を持っていて免疫機能が低下している方で見られる現象です。これを初感染結核といい、感染した人の15%に見られます。

肺結核の症状について

咳や痰が出る

結核菌に感染しても、発病しなければ症状は現れませんが、肺結核を発病すると咳や痰が出るなどの風邪によく似た症状が現れることになります。これは肺結核の初期に見られる症状で、これらの症状が2週間以上続き、良くなったり悪くなったりといった状態を繰り返します。

放置して症状が悪化すると、単に血液が混ざるようになり、息切れなどの症状が現れるようになり、最終的には喀血(血を吐く)や呼吸困難が起こり、死に至ることもあります。

微熱が続く

結核を発病すると、咳や痰に加えて微熱を生じます。これも風邪に良く似た症状であるため、結核の発見を遅らせる要因の1つになっています。もし微熱が2週間以上も続いている場合は、病院を受診して結核の検査を受けるようにしてください。

胸が痛む

結核菌が肺の内部で増殖すると、結核特有の炎症が生じます。この状態が続くと、肺が破壊されて呼吸する力が低下していきます。肺結核の症状が進んで、胸が痛くなったり息切れが起こるのは、このように肺が破壊されてしまうことに原因があります。

胸の痛みや息切れが症状として現れる頃には、かなり結核が進行してしまっていることも少なくありませんから、注意が必要です。

その他の症状

肺結核を放置すると、次第に全身の倦怠感(だるさ)や食欲減退、体重減少といった症状も現れ始めます。肺結核は自分では気がつかないうちに周囲に感染を広めてしまうこともある疾患ですから、出来ればこれらの症状が現れる前にかかりつけ医を受診して、症状について相談するようにしてくださいね。

風邪の症状との違い

鼻水や発熱、咽頭痛などの風邪症状は治っているのに咳だけが続いたり、市販の風邪薬や咳止めを飲んでも咳だけが止まらない場合は、肺結核が疑われます。もしこのような咳が2週間以上続いている場合は、必ず医療機関を受診するようにしてください。

結核かどうかを判断する検査としては、喀痰塗抹検査(チール・ニールセン染色)が行なわれます。これは喀痰中の結核菌の有無を確認したり、排菌量を確認するための一般的な検査方法です。

赤ちゃんの結核の症状について

母親に活動性肺結核があった場合、膣静脈を介した経胎盤感染、結核菌に感染した用水の吸引や嚥下による感染が起こる可能性があります。また、生後周囲に感染者がいた場合、その患者との緊密な接触により空気感染を起こす可能性があるとされています。

症状としては、発熱、嗜眠、肝脾腫、呼吸緊迫、発育不全などがみられます。鼻水を生じるという話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは結核による体の抵抗力が弱まり、風邪をひいてしまったことから現れる症状と言われています。

赤ちゃんが結核に罹患すると、肺門や縦隔リンパ節が腫大して粟粒結核になりやすいとされています。また、粟粒結核になるとその半数で髄膜炎を合併し、神経麻痺や脳梗塞、水頭症などの重大な後遺症を残すリスクが非常に高まります。そのため、赤ちゃんの結核は重症化を防いで、後遺症を残さないようにすることがとても大切になります。

子供の結核の症状について

子供の結核は、そのほとんどが初感染の後ですぐに発症に至る「一次結核症」と呼ばれるものです。周囲にいる結核患者から排菌された結核菌を吸い込んで、肺に小さな結核の病巣ができると、通常は免疫機能により結核菌が封じ込められます。

ところが子供の結核に対する抵抗力が弱い場合(BCG接種を受けていないなど)、菌を封じ込めることが出来ず、菌がすぐに増殖を始めて病巣が大きくなり、肺の入り口のリンパ節が腫れ始めます。その後、リンパ節で増えた結核菌がリンパ液や血液に乗って全身にばらまかれ、粟粒結核や結核性髄膜炎に進展することも少なくありません。

一般的に子供の結核は、大人に比べると病状の進展が早いにも関わらず(通常、感染から2ヶ月〜3ヶ月で発病に至る)、症状が目立たないという特徴があります。感染後初期に一時的に発熱することはあるものの、その後はかなり症状が進行しない限り咳や痰などの呼吸器症状や、発熱や食欲低下といった全身症状が発現することはありません。

そのため、子供の周囲で感染の可能性が強く疑われる事態が生じた時には、早期の対応が何よりも大切になるとされています。

肺結核以外の結核とその症状

粟粒結核

結核菌が血管に侵入して血液に乗り、全身に結核菌が運ばれることで、少なくとも2つ以上の臓器に活動性の病巣が成立した状態のことを粟粒結核と言います。全身の臓器に結核菌がばらまかれるため、喀痰や尿、血液、髄液、骨髄穿刺液などからも結核菌が検出されます。

粟粒結核は数ある結核の中でも特に重篤な病態で、感染初期には数週間持続する発熱や体重減少、食欲不振、倦怠感といった全身症状が現れます。症状の進行に伴い病巣を生じた臓器によって特有の症状を示すことに加え、高熱や息切れ、呼吸困難、咳嗽といった症状も現れます。

結核性髄膜炎

結核性髄膜炎は、結核菌の感染により生じる髄膜炎で、死亡率も高い難治性疾患です。俗流血管に続いて発症することが多く、粟粒結核がある患者の約8割で発症すると言われています。

発症後約2週間ほどで、強い頭痛や発熱、嘔吐などの症状が現れます。その後、症状が進行すると失明な難聴、水頭症といった重篤な後遺症を残すことが多いため、早期に適切な治療を受けることが大切です。

結核性髄膜炎による頭痛は非常に強いもので、これまでに経験したことのないような、頭全体がガンガンする激しい頭痛を生じます。また、首が硬くなるため下を向きにくくなり、症状が進行すると意識障害や髄膜脳炎(視力障害、痙攣症状、動眼神経障害、外転神経障害などの脳神経障害)を併発します。

2歳から4歳頃の小児に発症した場合、体重減少の鈍化、無気力、微熱などの症状が起こることが多く、また乳幼児の場合は肺結核小児由来する呼吸器感染症が主な症状となることが多いとされています。

結核性腹膜炎

結核性腹膜炎は、結核菌が腹膜に感染することで発病します。腹膜が最初の発症部位になることはほとんどなく、その多くは肺結核や結核性胸膜炎などから血液やリンパ液を介して感染することが多いとされています。

結核性腹膜炎では、微熱や食欲不振、全身の倦怠感といった全身症状が現れます。また、腹部症状として、腹痛、腹部膨満感、腹水が生じます。発症初期から軽度の長期間に渡る腹痛や腹水、腹部全体の圧痛を生じることが多いようです。

結核性腹膜炎は、近年の化学療法の進歩により発症数は激減していますが、最近再び患者数増加の兆しが見えているため注意が必要とされています。肺結核や結核性胸膜炎の既往歴があって、発熱や食欲不振、全身の倦怠感が長期間続いている場合は、病院を受診して相談するようにしてください。

腸結核

結核菌が腸に侵入して炎症を起こし、潰瘍を形成する疾患です。腹痛や下痢、発熱、体重減少などが主な症状になりますが、あまりはっきりと症状が現れないこともあります。抵抗力が低下している高齢者、腎不全や糖尿病などの既往歴がある人で発症しやすいとされています。また、肺結核とは異なり他人に感染することはありません。

治療は化学療法により結核菌を死滅させます。ただ、狭窄や腸閉塞、大出血、穿孔、瘻孔形成などの合併症がある場合には手術が必要となることもあります。腸結核の治療は抗結核薬により結核菌を死滅させますが、通常この治療には半年以上かかります。もし自己判断で薬を中止し、治療が中途半端になると結核菌に耐性が生じて非常に危険な状態になります。

腸結核の治療は適切な治療を行えば必ず完治しますから、症状がなくなったからといって治療を勝手に中止せず、必ず医師の判断に従って治療を継続するようにしてくださいね。

結核の予防方法

予防接種

BCG接種とは、結核に対する免疫をつけるためのワクチンです。日本では通常生後1歳になる前(一般的には生後5ヶ月から7ヶ月頃)に、毒性の非常に弱い結核菌の仲間をスタンプ方式の注射により接種します。

BCG接種を受けておくことで、たとえ結核に感染しても発病のリスクは接種なしの状態に比べて約1/5程度になるとされています。赤ちゃんが結核に感染すると、かなりの高確率で髄膜炎などの重傷な病気を引き起こしますので、その予防のためにも非常に有効な手段とされています。

ただ、BCGによる結核予防効果は、通常10年から10数年ほどとされています。そのため、小児の結核予防には非常に効果的ではありますが、成人の結核に対する予防効果はそこまで高くないと言われています。

免疫力を高める

結核は免疫力が低下してしまうと、自身の免疫により封じ込められた結核菌が活性化して発症に繋がることがあります。そのため、免疫力が低下しないように規則正しい生活習慣や、バランスの良い食生活、十分な睡眠、適度な運動を心がけることが非常に大切です。

また、結核菌は紫外線に弱いため、体外に排出された結核菌は日光に当たると数時間で死滅することが分かっています。あまり屋内に引きこもらず、定期的に外に出てウォーキングなどの軽い運動を行うようにするのも良い方法かもしれませんね。

健康診断を受ける

現在、日本において結核に感染するリスクは0ではありません。家庭や学校、会社などその規模に関わらず感染するリスクは存在しています。そのため、自治体や学校、会社などで行われる健康診断はきちんと受けて、結核の早期発見に努めることが、感染を拡大させる予防となることは言うまでもありません。

また、もし結核の兆候(2週間以上咳などの症状が続いているなど)が見えているようであれば、すぐに病院を受診するなど、個人個人が徹底して結核のリスク管理に努めることも結核を予防するためには有効な手段となります。

感染後の発症を防ぐためには?

結核に感染すると、その後1年から2年の間は結核を発病するリスクがかなり中待っている状態になります。それ以前の感染であっても、様々な要因により結核発病のリスクが高まることがあります。

このような状態は潜在性結核感染症と呼ばれており、体内にある結核菌が発病準備状態にあることを指します。そのため、結核の発病リスクを下げるために、結核発病前に結核の治療薬を服用して、体内の結核菌をなくす「潜在性結核感染治療(化学予防)」が行われることがあります。

潜在性結核感染治療を受けることで、発病のリスクは半分から1/5程度まで下げることが出来るとされています。また、潜在性結核感染症の診断は、赤ちゃんの場合はツベルクリン反応検査、それ以上の年齢になると血液検査(クォンティフェロンまたはTスポット)により行なわれます。治療のためには通常、イソニアジドを半年から9ヶ月間程度服用します。

感染の拡大を防ぐ接触者検診

接触者検診とは、結核患者が発生した際に、感染者や感染源となった人を見つけるために行われる調査や検査のことを言います。結核を発病し排菌状態にある人がいると、その周囲の人にも結核がどんどん広がってしまうリスクがあるため、保健所によりこの接触者検診が行われます。

接触者検診では、まず結核に対して接触した場がどこにあるのかという「調査」が行われます。次に、感染の疑いがある方たちを対象に血液検査やツベルクリン反応検査を行い、結核感染の有無が確認されます。感染者がいた場合は、胸部X線検査を行い、結核がすでに発病しているかどうかを確認します。

初期の結核は症状がないことも多いため、胸部X線検査は感染者との接触があってから2年ほどは繰り返し行う必要があるとされています。

結核の治療について

どこで診てもらえるの?

もし2週間以上にわたって咳や痰、発熱などの症状が続いているようであれば、出来るだけ早期に病院を受診することがとても大切です。結核が疑われる場合は、最寄りの結核予防会の病院などを受診するようにしてください。

最寄りの結核予防会の病院が分からない場合や、自宅の近くに病院がない場合は、自宅の地域を管轄している保健所に問い合わせることで、その地域における結核診療が可能な病院を教えてもらうことが出来ます。また、下記に結核診療が可能な結核予防会施設一覧と、最寄りの保健所を調べることが出来る全国保健所長会のHPへのURLを掲載しています。必要な場合は、こちらから参照してみてくださいね。

結核の検査と診断について

(1)感染の有無を調べる

結核が疑われる場合、まず感染の有無を確認するためにツベルクリン反応検査やインターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)などの検査が行われます。

ツベルクリン反応検査では、ツベルクリン液を皮内注射して、48時間後に反応を調べます。結核菌に感染している、またはBCG接種を受けている人では皮膚が赤くなります。反応が結核感染によるものかBCG接種によるものか判断しにくい場合があるものの、痰の採取が難しい方や胸部X線撮影が出来ない方には有効な検査方法です。

インターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)は、血液を採取して結核菌感染の有無を調べる方法です。ツベルクリン反応検査は反応が48時間後に現れるため、再度医療機関を訪れなければなりませんが、IGRAでは血液採取後すぐに検査が出来るため、再来する必要がありません。また、BCG接種の影響も受けないため、最近はツベルクリン反応検査よりも行われる機会が増えてきています。

(2)発病の有無を調べる

結核菌に感染していることが確認できたら、X線撮影検査による画像診断や喀痰検査により発病や排菌の有無を調べます。X線撮影検査は発病の有無を調べる検査方法で、肺などに結核が疑われる影などが確認された場合にはCTスキャンなどを行って、さらに精密な検査が行われることになります。

一方、喀痰検査とは、結核菌排菌の有無を調べるための検査方法です。塗抹検査、培養検査、遺伝子検査などの種類がありますが、結核菌は増殖スピードが緩やかなため、培養検査の場合は結果が出るまでに何週間かかかる場合が多いとされています。

結核の治療方法

結核の治療は、基本的には薬物治療により行われます。現在結核の治療に用いられる薬剤は、抗結核薬と呼ばれるものです。結核の治療に使われる代表的な薬剤としては、リファンピジン、イソニアジド(ヒドラジド)、ストレプトマイシン、エタンブトール、ピラジナミドがあります。

服用方法は、数種類の薬剤を組み合わせて使用します。一般的には、治療開始後2ヶ月間はリファンピジン・イソニアジド・エタンブトール(またはストレプトマイシン)・ピラジナミドを服用し、その後リファンピジンとイソニアジドを4ヶ月間服用します。

以前、結核の治療には2年から3年以上かかっていましたが、現在は薬による化学療法の進歩により6ヶ月間の服用期間で治療を完了することが出来るようになっています。ただ、個人の病状や経過により長くなることもあります。その場合は、医師の指示に従うようにしてください。

入院について

結核の治療は基本的に通院による薬物治療により行われますが、全身症状が悪い場合や結核の症状が強い場合、周囲に感染を拡大させる恐れがある場合は入院治療が必要となることがあります。

入院期間は、排菌が止まり周囲の人に感染させるリスクがなくなるまでです。結核による平均的な入院期間は、薬物治療をきちんと行った場合で約65日程度とされています。排菌が停止したことが確認できれば、その後は外来通院をしながら薬物治療を継続することになります。

ただ、この入院期間はあくまでも統計上の平均を取ったものですから、病状や経過により入院期間が長引いてしまうこともあります。

治療費について

結核の治療費用は、感染症法による公費負担制度を利用することが出来ます。公費負担制度とは、国や自治体による治療費補助制度のことです。ただ、この公費負担額は、世帯の所得税額、入院や外来などの治療法の違いなどにより異なります。詳しくは、自宅を管轄している保健所や自治体、または受診する医療機関などで確認するようにしてください。

治療中に気をつけるべきこと

結核は、基本的には医師の指示通りに処方された薬剤(抗結核薬など)を服用していれば、きちんと治すことが出来ます。ですが、咳や痰などの症状が治まったからと自己判断で薬の量を減らしたり止めてしまったりすると、結核菌が薬に対して「耐性」を獲得し、薬の効かない菌(耐性結核菌)となってしまいます。

結核菌が耐性結核菌になってしまうと、通常結核治療に用いられるよりも多くの種類の薬をさらに長期間にわたって服用しなければならなくなってしまいます。状態が悪いと、外科手術による病巣を切除する必要も出てきてしまい、入院期間も長引きます。

1人1人が気をつけて結核の感染拡大を予防しよう

「結核」と聞くと、昔の日本で流行していた病気というイメージを持ってしまいがちですよね。ですが、現在でももちろん結核は存在していますし、毎年多くの方が結核菌に感染しています。結核は決して過去の病気になったわけではなく、現在でも治療が必要な病気の1つです。

また最近では、薬の効かない耐性結核菌の存在も確認されています。結核にならないよう予防に努めることが大切ですが、もし結核に感染してしまった場合は周囲に結核を拡げないよう早めに病院を受診し適切な治療を受けることが何よりも大切になります。

もし結核と診断され治療が必要になったら、自己判断で薬の服用を中止することは絶対に避けるようにしてください。結核菌は比較的しぶとい菌で、症状が治まっても結核菌は生き残っている可能性が非常に高いです。

自己判断による薬の中止で耐性結核菌が生まれてしまうと、さらにたくさんの薬を飲まなければならなくなりますし、治療期間も長引いてしまいます。場合によっては手術が必要になることもありますから、必ず医師の指示に従って治療を進めるようにしてください。

結核は普段の生活習慣に気をつけていれば予防することが出来ますし、適切な治療を受ければ必ず治ります。長引く風邪の症状があったら決して放置せず早めに対策をして、結核の感染拡大を防ぐようにしていきましょう。

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