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【社会】

やまゆり園殺傷検証委報告 施設と県、連携不十分

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 今年七月、神奈川県立の知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)で入所者ら四十六人が死傷した事件を検証していた県の第三者委員会は二十五日、検証結果報告書を黒岩祐治知事に提出した。報告書は、施設側が警察から、元園職員植松聖(さとし)容疑者(26)の犯行を予告する手紙の情報を受けながら、県には伝わらなかったことを「情報の共有不足があった」と問題視。再発防止策として、関係機関が情報を共有し、連携を図るよう提言した。

 報告書によると、植松容疑者が二月に襲撃予告の手紙を衆院議長公邸に持参したことについて、県警津久井署は、施設を運営する「かながわ共同会」(神奈川県厚木市)に口頭で説明。施設側は三月に全職員に不審者への注意喚起。署の助言で防犯カメラも設置した。署も巡回を強化した。

 だが施設側は、施設設置者の県に対し、植松容疑者の手紙についての情報が県警からもたらされた経緯などを一切報告しておらず、報告書は「非常に不適切」と批判した。

 一方、署の対応について「必要な情報提供」をしており、問題ないと判断。植松容疑者の手紙そのものを施設側に開示しなかった点を「手紙を見せた方が危機意識はより高まったと推察できる」と指摘した。

 報告書は、七月二十六日未明、植松容疑者が一階の窓ガラスを割って侵入し、職員から鍵を奪った経緯などに言及。職員は「利用者が出てきたと思い、警戒しなかった」という。

 当時、園内には夜勤の職員八人と警備員一人がいた。植松容疑者が鍵を使って移動した別のエリアの職員らも「夜間に外部から侵入するとは予想せず、鍵を開けて入ってきたことから職員と思った」と話していることを明らかにした。報告書はこうした状況を踏まえ、施設側の危機意識が薄く、「対策が不十分だった」と指摘した。

 報告書は再発防止に向け、福祉施設は警察から犯罪の情報提供があった場合に、「最悪の事態も含めて想定し、対応を検討する必要がある」と指摘。県に対しては、各施設での防犯体制を強化するため、具体的な指針の策定を検討するよう求めた。

 検証委は石渡和実・東洋英和女学院大教授を委員長に、障害者団体代表や弁護士ら計五人で構成。県として再発防止策を探るため、九月から関係者に聞き取りをするなどして審議してきた。

 

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