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岐阜経営改善へのレール見えず 養老鉄道、新業務形態で来年再出発
赤字経営が続く中で存続が決まり、来年中には新しい事業形態で再出発する養老鉄道。ようやく沿線自治体の足並みがそろって新体制の形は見えてきたが、経営の改善という根本的な課題は残されたまま。活性化に向けて、行政や鉄道会社だけでなく、地域住民の参加を求める声も上がっている。 ■増える沿線負担「年々、車を運転できない世代が増えてきます。鉄道がないことは大きな損失です」「高校の登下校でも必要不可欠な路線です」 養老鉄道の存続のために寄付金を募るインターネットのサイトには、全国から寄せられた応援メッセージが並ぶ。サイトは沿線にある池田町が五月に立ち上げ、これまでに集まった寄付は四百人余りから約七百万円。目標金額(二千四百万円)の三割に満たないが、町の担当者は「町の税金だけでは厳しい中、全国からの支援で少しでも町民負担を軽くしたい」と話す。 存続の方向性が議論されていた養老鉄道は今春、親会社の近鉄が保有する駅舎や車両などを、沿線の七市町が出資する一般社団法人「養老線管理機構」が引き継いで維持管理し、運行を担う養老鉄道に無償で貸し出すという形で存続が決まった。これにより、沿線市町の負担額は増える見通しだ。 ■減る利用客養老鉄道は近鉄の子会社として二〇〇七年に発足以来、年間で約九億〜十億円の赤字が続く。これまで沿線市町は毎年約三億円を負担してきたが、新法人への移行で負担額は年間六億七千八百万円に膨らむとする試算がある。これに近い額を、財政力が異なる七市町で均等負担することになる。 〇〇年度に年間八百万人を超えていた養老鉄道の利用客は、〇五年度に約七百万人、近年は六百万人前後と徐々に減少。沿線市町や近鉄、有識者らでつくる再生協議会は来年夏までに、新体制による実施計画をまとめて国に提出する予定だが、経営改善に向けた具体策の議論はこれからだ。 ■沿線住民が提言近鉄と市町の間で進められる計画に対し、情報公開と住民参加を求める声も上がっている。県内にある沿線二市四町の二百五十人、五十団体でつくる「養老鉄道の未来をつくるネットワーク西濃」はこのほど、養老鉄道に関する政策提言をまとめ、大垣市や海津市に提出した。 提言では、これまでの新体制への移行を巡る過程が「市民や議会の議論がないまま決定された」と指摘。同ネットワーク顧問を務める元国土交通省企画調整官の可児紀夫さん(65)=可児市=は「安定的な経営方針や交通政策の理念がはっきりと示されていない」と、現状に疑問を投げかける。 同ネットワークは、住民が経営に参加できるサポーター制度の導入や、住民参加の会議の設置なども提言。筆頭共同代表の木村一夫さん(86)=大垣市=は「鉄道を残していくのに市民の参加は不可欠。もっと沿線の利用者の意見を広く集め、進言していきたい」と話している。 (滝田健司) <養老鉄道> 揖斐川町、池田町、神戸町、大垣市、養老町、海津市、三重県桑名市の57・5キロ、27駅の区間を走る養老線を運行する。近鉄(大阪市)が養老線の採算悪化のため2007年に完全子会社として設立し、同線の運行を引き継がせた。近鉄の求めにより、17年からの新しい業務形態への移行を議論してきた。 PR情報
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