kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

【お知らせ】本ブログは、はてなブックマークの「ブ コメ一覧」とやらについては、こういう経緯で非表示にしています。(こういうエントリをアップしてあってもなお「ブ コメ非表示」についてうるさいので、ちょい目立つようにしておきますが、当方のことは「揉め事」に巻き込まないでください。また、言うまでもないことですが、当方がブ コメ一覧を非表示に設定することは、あなたの言論の自由をおかすものではありません。)

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2016年11月27日

「メインストリームになるくらいなら燃やしてしまえ!」とおぼっちゃまが親から受け継いだ財産を燃やした件。

親から受け継いだ「私有財産」を豪快に燃やしてわはは、ということをやった人がいるというニュース。その人の名はジョゼフ・コーレ。父親はマルコム・マクラーレン(2010年没)、母親はヴィヴィアン・ウエストウッド。父親は「セックス・ピストルズを世に出した商売人」。母親の作る衣類は「パンクの魂」がなんちゃらと言われているが、冷静に見れば、クソ高くて普通のバイトをしてる学生や労働者には手が出せない高級デザイナー・ブランドで、「パンクの魂」はX万円ですと値札をつけて陳列されたものを、はいそうですか、とありがたがって買える人は実は「パンク」でも何でもなく、店頭でためつすがめつして試着して、「また今度」と店員に微笑みかけて店を出て、そして自宅にあるシーツやカーテンでさっき試着したのと似たようなものを自分で作るような人が「パンク」だ……なんてことは、私が気がついたときにはもう言われてたんだが。私が気がついたときってのは、80年代だ。当時、消費税はなかったが、今のように1000円台で服が買えるような時代ではなく、どんなに安い量販店でもだいたい3900円、そういう価格でタータンチェックのヒザ上丈のギャザー・スカートやティアード・スカートを買って、場合によってはあれこれくっつけたり改造したりして……というのが、雑誌に載ってるコムデギャルソンやヴィヴィアン・ウエストウッドなどのブランドものを買うという選択肢のない一般人の定石だった。(もちろん、そんな人たちだけではなく、ハマトラ系、ワンレンボディコンの人もいたが……というかそちらのほうがずっと多数だったが。)そして80年代が90年代になって、バギーパンツにTシャツが「ファッショナブル」ということになって、いろいろと解放されたよね。Tシャツは「ピタT」が出てきたし、定番ものの幅が広がった。そして、グローバライゼーションの時代、「安価な労働力」「コスト削減」とビジネスライクに表現される環境が当たり前になり、そういう「消費財」はどんどん安くなった。80年代に私が3900円出したようなスカートは、今は1900円で買えるだろう。北欧の有名ブランドの大きなお皿など、以前は確か5000円台だったはずのものが、今はメイド・イン・タイランドで3000円弱だ。

英国人で48歳だったら、そういうのをど真ん中で経験しているはずなのだが(英国の場合は「日本の不況でジャパン・マネーが撤退」、「欧州統一市場」、「英国企業の生産拠点が中国や東南アジアに移り、英国内の産業は空洞化」というのもある)、ジョゼフ・コーレ氏の場合はどうなんだろうね。マルコム・マクラーレンのロンドン・パンクってのは、根はシチュアショニストだし、そういう点についてのメッセージが出るかな、と思っていたのだが……(苦笑)

私、「(苦笑)」ってめったに使わないんですよ。でも使わざるを得ない。そのくらい「苦笑」してる。「爆苦笑」とか「激苦笑」と書きたいくらい。

機関誌『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト』には冒頭部「『アンテルナシオナル・シチュアシオニスト』に発表されたすべてのテクストは、出典を明記しなくても、自由に転載、翻訳、翻案することができる」という表記があるが、これは旧来のブルジョワ的な私的所有を批判し、新しい価値を生み出そうと試みる、転用の思想を端的に表わしている。

シチュアシオニスト・インターナショナル/アンテルナシオナル・シチュアシオニスト | Artwords | Artscape


私的所有に対するアンチテーゼとしての財産の焼却というのなら、賛同する・しないは別として、まあそれなりの形式っすよね。でも今回のはそうじゃない。

コーレは、英国映画協会(BFI)や大英図書館、ロンドン博物館のようなメインストリームの団体が後援するロンドン・パンク40周年を祝うイヤー・イベント<Punk London>を不快に思い、その抗議のために自身のパンク・コレクションの数々を燃やすと今年3月に発表。

このイベント<Punk London>には、エリザベス女王が公式の祝福のコメントを出しており、コーレはこれを「今までに聞いたことがある中で最もおぞましいこと」と批判。……

今回の「Anarchy in the UK」のアセテート盤は、燃やされる前にチャリティのためにeBayに出品されており、入札は62,500ポンド(約880万円)に達していましたが、コーレが希望する100万ポンド(約1億4000万円)には到達しなかったため、今回焼却されています。

http://amass.jp/81378/


たかがレコード盤一枚に100万ポンドっていう設定が……。これは、イスイス団の要求する身代金のパロディですかね。パロディだとしても不快極まりない。(ただしパロディについて「不快だ」ということは感想でしかなく、「批判」にはならない。)

いや、パンクの象徴的なあれこれが、王室公認、政府公認みたいな扱いを受けて「ブリテンはグレートだ (Britain is Great)」というキャッチフレーズ(かつての「クール・ブリテン」に代わる2010年代の英国政府の売り込みのコピー)に巻き込まれて、"There's no future in England's dreaming" 的なものが展示され、ブランド価値を持ち、売られていくということに対する否定的な感情というのはわかりますよ。わかりますが、その感情の行き着く先が「eBayで100万ポンド出す人がいなかったから焼却」とか、ほんと、どんだけ怠惰なのかと。パンクの時代の言葉でいえば "Boring!"

王室が勝手にお墨付きを与えることが不快なら、逆に王室に100万ポンドで売りこめばいいじゃんね。それをドキュメンタリーにすれば「メインストリームに支配された状況のすべてが、ポイズン」とかいう薄っぺらい主張であっても、みんな見たがるよ。"Anarchy in the UK" のアセテート盤を持って真顔で立ってる女王夫妻とか、想像するだけで最高におもしろいじゃないですか。女王夫妻が無理なら、貼りついたようなアイドル・スマイルのケンブリッジ公夫妻で(ハリー王子だとなぜかパンクのレコードは当たり前すぎておもしろくない。チャールズ皇太子夫妻だとビジネスライクすぎておもしろくない。芸能人が広告塔になってる健康食品的というか)。最後はこのために再集結したワン・ダイレクションによるカバーで〆。うわー、私の適当な思いつきだけど、これ最高すぎない?

そのくらいのことはやってくれるのではないかとほんのちょっぴり期待してたんですが……(苦笑)










というわけで、本人は「おぼっちゃま」であることを認めていないのかもしれないけれど、結局は、おぼっちゃまが自分が親から相続した私有財産を燃やした、というだけの話。そしてそれは、バブル期に叩かれた「私が死んだら(購入したゴッホとルノワールの)2枚の絵とともに焼いて欲しい」と述べた日本人実業家の件(本人の意図としては「そのくらい大好きだ」という冗談めかした意思表示だったというが)と、本質の部分では同じ。「所有主が誰であろうと、広く社会にとって意味・価値のあるもの」が、「誰かの私有財産」として勝手に焼却されてよいのかどうか、という話。「焼却」計画が公表されたとき、そういうのを問いかけるものとなる可能性もないわけではないから……くらいに見てたんだけど、結局何もなかったらしい。

それから、自分では何もせずに単に相続したものについて、それに価値を認める外部の人々のことを「ノスタルジアに駆られているだけ」と断罪しているということの皮肉。何という閉鎖性。大英博物館がものを溜め込んで分類して展示しているのは「ノスタルジア」のためではない。古いものは誰かにとって常に新しく、常に誰かにインスピレーションを与えるものであり続ける。博物館・美術館は基本、入場無料という信じられないほど恵まれた環境の中で生まれ育ち、文物の持つそういう「価値」について考える機会もなく48歳のビジネスマンになってしまった彼を、私は哀れに思うべきだろうか。

そして、何より、がっくりきたのは、その焼却の儀式にヴィヴィアン・ウエストウッドがいて、何かスピーチしてたという点。もうどうでもよすぎてスピーチの内容も知ろうと思わない。「王室に中指立ててやる」とかいうことなら、あんたの「デイム」の称号を何とかしてからどうぞ。

ほんと、茶番劇にもならない。

で、オチは……セックス・ピストルズのアイコニックなグラフィック・デザインをやったアーティストのジェイミー・リードは、現在自サイトでアーカイヴを構築中だそうだ。



(大爆笑)

※ジェイミー・リードは、ここらへんのデザインをやったアーティストです。その多くが今は「みやげ物」の域で店頭に並んでる。
SEX PISTOLS - Anarchy In The UK Anarchy In The UK/ ポスター/ 【公式 / オフィシャル】

Sex Pistols God Save The Queen 新しい 公式 トートバッグ
※これ、ユニオンフラッグがなんか微妙なように見えるんですが、トリミングのせいですかね。

SEX PISTOLS Tour Poster, Officially Licensed Artwork, Premium Quality, 5

Pretty Vacant [7 inch Analog]

Never Mind the Bollocks [12 inch Analog]

1997年のMTVのインタビューで、リードは「ピストルズで私の作品を代表させないでほしい」ということを言っている。このインタビューがすごいおもしろい。
http://www.mtv.com/news/1366/dont-talk-to-artist-jamie-reid-about-the-sex-pistols/

Themes of anarchy, anti-corporation and anti-establishment have always pervaded Reid's artwork in some form. That his talents would be reduced to a few flashes of highly commercialized creativity is unthinkable to him. That matter so disturbs him, that he considers those who know him as the artist for the Sex Pistols, or simply under the label of a Situationist, not among his true fans. "I mean, really, who are the Situationists?" asked Reid, obviously amused by the term. "It is more of a myth than a reality. Most of the work I was doing that got labeled Situationist was, in fact, taking the piss out of Situationism, because it got so highbrow!"


"It was the attitude that was far more important. And that attitude is far more interesting to me; the influence it's had outside [of] pop and fashion."

What of the Brit-pop explosion?

"Well, everything is about nostalgia now," said Reid, sounding a bit annoyed. "The whole British indie thing is pure nostalgia... Cover versions of those middle of the road '60s and '70s groups."

With the term "nostalgia" Reid appears to have nailed it. Across the street, his mammoth silk-screened Sex Pistols artwork is about to be put up on walls for curious New Yorkers to reflect upon, remembering and perhaps considering what it meant at the time, and perhaps, what it means again today.

Nostalgia, as every artist knows, is always revered.


1997年のこのインタビュー自体に、ものすごいノスタルジアを感じますが(爆笑)。

※この記事は

2016年11月27日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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