■京都の会社の代表電話に連絡をするところからやってみた
黒川:ご自身で行かれたのですか?
仁井谷:そうです。
黒川:反応はどうだったのでしょうか?
仁井谷:どこから話せばいいのか、わからないけれど。当時の部署とか全然記憶に残っていなかったから、お付き合いしていた方々もいらっしゃるとは思っていなかったので。
黒川:つまり昔の部署ということですね。
仁井谷:業務部という言葉を忘れていたので、よく分からないから、代表電話に連絡して、「ゲーム作ったので見て欲しいのですが」って言ったら。「何のこと?」みたいな話から始まって、最初は他の部署に電話が行って、「それは業務部に聞いた方が良い」って言われたので、もう一度受付へ電話して、業務部へ電話したという。
黒川:そこからやったんですか?
仁井谷:そうそう。みんなびっくりしてた。
黒川:仁井谷さんであれば、昔のおつきあいがあったかたとを辿るとか……。
仁井谷:全員辞めているから。
黒川:もう辞めちゃってますかね?
仁井谷:私の担当は、当時業務部の最高トップ責任者である方なので、多分もう隠居されてると思います。
黒川:ゼロベースからやってるわけですね。
仁井谷:そうそう。
黒川:凄い情熱ですね。
■「ぷよぷよを作った仁井谷ですが・・・」
仁井谷:それで電話したら、担当の人も「あなたは誰?」みたいな。「『ぷよぷよ』を作った仁井谷ですが…」それもキョトンとされて「あなたは誰?」みたいな。
黒川:やっぱり時代が変わったんですかね。
仁井谷:『ぷよぷよ』作ったとか、仁井谷も記憶にない。「じゃあ、せっかく仰るなら、京都に来られた時に、プレゼンしてください」と言われて。「いずれ1~2か月で京都へ行こうかな」と思ってたら、それから1時間後に電話があったんです。「我々が東京へ行くついでがあるから、その時見ます」みたいに言われたんですね。
黒川:そうなんですか。
仁井谷:その当日になりましてね。業務の窓口の人と技術の人も連れて来てるって事は、もうやる前提ですよね。いきなり「じゃあ、開発マシンなんとかするから、じゃあ、作ろう」みたいな話になりました。だから、最初よくわからなかった。それで、そのうち「インディーズで、7月4日にビットサミットがあるので、そちらに展示しましょう」みたいな話で、「え~?」とかよく分からなくて、「じゃあ、そうします?」みたいな話なんです。
黒川:私もビットサミットでトーク・セッションさせていただいたので、仁井谷さんが出展されていたことを覚えています。
■俺、お金持ってないのに、どうやって作るんや!?
仁井谷:私としては、当時アルバイトしてて、お金持ってませんから。チラッと思ってたのは、京都の会社さんと付き合うのに、会社作らなきゃいけないとか。今度は開発しなきゃいけないじゃないですか。そしたら、お金がいるでしょ?いろんな形で、お金を何とか集めて。クラウドファンティングとかひっくるめて、6月くらいに集めて、7月くらいから作って、年末間に合うか?
「俺、お金持ってないのに、どうやって作るんや!?」って、わけわからない。
黒川:それでお金どうしたのですか?
仁井谷:無いんですけど。今、『にょきにょき』を開発してもらっている会社に、お金がない段階で、「ねえ作って」お願いしたんです。その会社とは縁があって、昔コンパイルのキックオフにもお付き合いしたんですね。今回のキックオフも、ほとんどゲーム見てもらって「じゃあ、なんかやろうね」みたいな。お互いに、お金の話は二の次、三の次。旧友みたいな所あるから、「じゃあやろうね」
ゲーム見てもらったら、最初は全然反応悪かったんだけど。対戦プレイしたら、一瞬にして「やろうね」って話になっちゃって。そこは昔、付き合った人だから、このゲームの良さは、多分分かって貰えたんだろうし。「やろうね」という気構えで、コトが進んでて、「じゃあ、お金どうしようかな?」と思って、ずっと悩んでて、よく分からないから、テストプレイしたのと、してもらったのと、もう一つはコンパイル〇を作って、チラッと考えたのは、「じゃあ、株の公募しようかな」みたいな。普通は新しくできた会社、公募しても資金は集まらないんで、今回やらしてもらって、いくらか集まって、その資金と、もう一つは政府系ですよね。政府系の政策金融公庫にお願いしたら、それも話が上手く行って、それが一つありますかね。
もう一つは、テレビからオファーが来るとか、あるいは株の公開だったら、財務省のOKがいるじゃないですか。その方とか、今回の政策金融公庫の方々が、みんな今ジャッジ出来る方、仕事されてる方がみんな、30代、40代で『ぷよぷよ』世代なんですよ。そうすると、私の話が伝わりやすいわけですよ。あるいは、当時の『ぷよぷよ』のファンだったりするんですよ。財務省の担当の方が、実は最初受付は若い人で、ちょっと反応悪かったんですね。そしたら上司の方が、「担当は私がやるよ」って言いだして。
■当時の『ぷよぷよ』ファンがみんな偉くなっていた
黒川:良かったですね。
仁井谷:で、お会いすると、ちょっと顔を赤らめながら、「私は(『ぷよぷよ』の)挟み込み出来るんです」って仰るんで、「ああ、この人間違いなく『ぷよぷよ』のファンだな」と。顔が赤らんで、紅潮してるよって…「これは良いな」みたいな。
そこは会社を興すにつれ、世間の理解がちょうど知ってもらいやすい。色んな方々が、『ぷよぷよ』知っていらっしゃるし、コンパイル知っていらっしゃるので。そこは「仕事しやすいな」と思いますね。
黒川:そのあたりからゲーム開発が活気付くわけですね。
仁井谷:まずはユーザーの方々に、Twitterを通して「テストプレイしませんか?」と言ったら、参加してもらって、毎週土曜日に新松戸に来てもらって、多い時には7~8人、少なくとも2~3人、10月の初めくらいまで、来ていただいてやってたので。それがきっかけですね。
■ゲームが売れるロジックって言うのが、基本的にあるわけですよ
黒川:「流れるまま」と言うけれども、普通に行ったら、結構心折れる人もいっぱい居ますけど。
仁井谷:そこはね。ゲームが売れるロジックって言うのが、基本的にあるわけですよ。一番大事なのは、世間で言われるでしょ。一言でいうと、「継続は力」しかないんですよ。たぶん、いろんな発明で成功した人みんな同じ事言ってると思うんですけど。実現するまで、失敗と思っちゃいけないんですよ。だから、挫折とか無い。ただ単に、「私はこうしたい」と思ってるだけであって。だから、確かにコンパイルと言う会社は無くなったけれど、それは自分が「失敗した」と思ってない。またチャンスがあれば「やろう」と思ってるだけで、今回チャンスが巡って来たから、それはそれで「やろうかな」と思ってるんですね。そこは「不屈」とかじゃなくて、「継続は力」と思ってるかどうかですよね。
ゲームが売れる、いろんな黄金法則があるんだけども。一番大事なのは、同じジャンルで、同じチームで、4作作る環境を与えて、4つ目まで作ったら、絶対売れるという自信はあるんです。
黒川:それは何故ですか?
仁井谷:それは1作目、2作目、みんなが「ちょっとずつ良くしよう」と言う心があるだけで、マーケットへ出すわけだから、マーケットの反応を見て、また3作目を作って、マーケットの反応を見て4作目を作る。それは間違いなく、売れ線になりますよ。シューティングゲームなら、シューティングゲームを4つ。絶対連続して開発する。RPGなら、RPGで必ず、ずーっと作らなきゃいけない。ジャンル変わったら、もうダメですよ。ジャンルは全く同じで、4作目ってそういう事なの。しかも、同じチームですよ。ディレクター、メインプログラム、デザイナー、全部同じスタッフで続けなきゃいけない。これは、普通出来ないから、プロの会社では。
黒川:そうですね。最近そういうチーム無いですよね。必ず入れ替わったりしますよね。
仁井谷:それは、だから売れないという事ですよね。だから、この環境を整えれば、絶対売れるという。