子どもは、年齢を経るにつれて少しずつ自立していきます。
特に、小学校中学年から高学年にかけての時期は「ギャングエイジ」と呼ばれ、子どもの自立が一気に進みます。
ギャングエイジは、子どもにとっては自立のための大切な時期ですが、パパママにとっては子どもの態度に驚き、対応に困りやすい「子育ての山場」の一つです。
この記事では、ギャングエイジの概要と特徴、パパママの対応方法について紹介します。
ギャングエイジとは
ギャングエイジとは、児童期中期~後期の発達段階にある子どもが、遊びを中心にして形成する仲間(ギャング)との関係を、パパママや先生よりも大切にするようになる時期のことです。
「ギャング」という言葉は、カラーギャングやストリートギャングなど悪い集団をを持っているため、ギャングエイジと聞くと「悪い子ども」をイメージする人が少なくありません。
しかし、発達心理学におけるギャングエイジは、子どもの児童期の発達段階にやってくる時期のことで、悪い意味はありません。
- ギャング(gang):仲間、チーム、ユニット
- エイジ(age):時期、年代、年齢
ギャングエイジの子どもは、継続的・持続的な友人関係を築くことができるようになり、仲間でパパママや先生から自立して独自に行動することが増えていきます。
4~8人程度の同年代・同性の友人同士で閉鎖性の高い集団を作り、集団の中で各自の役割分担や、集団内でのみ通じるルールや約束を取り決めて、仲間意識を高めていきます。
ギャングエイジに形成される仲間集団は、社会的な知識やスキルを身につける重要な場であり、その後の円滑で深みのある人間関係を築くための基礎になるものです。
ギャングエイジの年齢・時期
ギャングエイジとは、児童期中期~後期のことで、年齢にすると生後8歳頃から12歳頃までです。
学年で言うと、小学校3年生頃から6年生頃です。
ただし、個人差があるので、必ずしも8歳で始まり、12歳で終わるわけではありません。
エリクソンの社会心理的発達理論では、ギャングエイジは学童期に当たります。
つまり、子どもが、就学して膨大な知識やスキルを身につけていくとともに、ともだちとの集団生活に適応する時期です。
この時期をうまく過ごすことができれば、子どもは、社会や他人に関心を持って自発的に関わったり、与えられた課題をこなして周囲に認められたりする勤勉性を身につけることができます。
一方で、うまく過ごせないと、自信を無くし、社会や他人と関わる意欲を失って劣等感を募らせてしまいます。
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ギャングエイジの子どもの特徴
ギャングエイジの子どもの特徴は、次のとおりです。
- 大人がいなくても、子どもたちだけで判断して行動する
- 仲間だけに通じるルールや約束、秘密の場所などを共有して仲間意識を強める
- 仲間内で役割を分担する
- 仲間と一緒に、校則や親との約束を破る
- 仲間と一緒に、大人の言うことを無視したり、反抗したりする(一人の時は言うことを聞くことが多い)
- 子ども扱いされるのを嫌い、大人ぶった言動や、不良顕示的な言動をする
- 物事の限度を十分に理解しないまま、仲間内での悪乗りや悪ふざけで行動しがちである
ギャングエイジのポイントは、「仲間と一緒」ということです。
仲間と一緒に行動し、特別なルールや役割分担を作って守り、大人よりも仲間との関係性を重視するなど、「仲間」が他の何よりも優先されるのです。
そのため、どんな仲間に所属するかによって、子どもの行動は大きく変化します。
極端な例ですが、悪さばかりする仲間と集団を形成すると、「仲間がやっているから」という考えで、一人の時はしたことのない万引きを始めたり、いじめに加担したりすることがあります。
まだまだ物事の善悪や限度を十分に理解できていないため、互いに仲間の目を意識して影響しあい、その場の雰囲気に流されてしまいます。
ギャングエイジの子どもに対応する方法
子どもがギャングエイジに突入すると、パパママとしてはつい目の前の対応に追われて余裕をなくし、頭ごなしの叱責や、その場限りの注意指導に頼りがちになってしまいます。
しかし、ギャングエイジの子どもへの対応で一番大切なのは、「大人として余裕を持って子どもに接すること」です。
子どもの態度の急変に動揺しても、子どもの前では親として毅然とした態度を維持し、悪いことは悪いとしつけましょう。
子供は、「一本筋が通っている大人」の言うことは、表面上は反抗しても、内心は意外と聞き入れているものです。
また、ギャングエイジの子どもは、仲間と一緒だと何でもできると過信し、自立を強く求めて大人に反発する一方で、大人に対する甘えもまだまだ持っています。
子どもが甘えてきたら、「いつも反抗ばかりするくせに」と思わずに受容し、甘えを満たすことも大切です。
いじめや非行に及んでいる子どもの対応
いじめや非行は、子どもであっても決して許されるものではありません。
理由や経緯など子どもの言い分を十分に聞いた上で、被害者の気持ちや感情、被害の大きさについてしっかり考えさせましょう。
子ども自身が同じ目に遭ったらどう思うか、被害者の家族の立場に立ったらどうかなど、自分や被害者の家族の立場で考えさせると、指導効果が上がりやすい傾向があります。
子どもの言い分を聞かず頭ごなしに叱りつけたり、手を出したりするしつけは、恐怖や「言い分を聞いてもらえなかった。」という不満を子どもの頭に残すだけで行動改善には結びつきにくいので、避けてください。
消滅しつつあるギャングエイジ
ギャングエイジの概念は、ネットや携帯電話が登場するずっと以前に提唱されたもので、当然、オフラインの人間関係を前提としています。
しかし、現代の子どもは、小学生の頃からスマホを買い与えられ、LINEやTwitterといったSNSを使いこなして、オンラインの世界で大人以上に幅広い人間関係を築くようになっています。
オンラインの人間関係は、年齢も性別もバラバラ、下の名前しか知らなかったり、顔もろくに見たことがなかったりと極めて表面的な関係が多く、友情や絆、信頼関係は生まれにくいと言われています。
また、リアルの世界においても、習い事や塾が忙しくなり、学校以外で仲間と親しく遊ぶ時間や機会が減少していて、身近な友人との関係も希薄化しています。
さらに、ゲームやスマホの世界にのめりこんでリアルの世界と距離を置き、リアルな仲間集団を形成できない子どもも増えています。
こうしたことから、最近は、ギャングエイジがない子どもが増えてきたと言われています。
既に紹介したように、ギャングエイジに形成される仲間集団は、子どもが社会的な知識やスキルを身につける場所で、その後の人間関係や社会生活の基礎になるものです。
ギャングエイジがなく、ギャングエイジ特有の仲間集団を作ることができないまま成長した子どもは、身体の成長に心の成長が追い付かず、幼稚な考えや思い込みのままに非行やいじめ行為に至るリスクが高くなるという指摘があります。
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まとめ
パパママにとっては、ギャングエイジの子どもを育てるのはとても大変で、心身ともにすり減ることも少なくありません。
しかし、子どもにとっては、ギャングエイジでしか学べないことがたくさんあり、そこでの経験がその後の生活に大きな影響を及ぼします。
そのため、親の準備した枠内で子どもが生活するよう過保護・過干渉に育てたり、上から抑えつけるしつけに終始したりするのではなく、親として子どもの変化を温かく見守り、他人を傷つける行為に対しては毅然とした態度で対応する姿勢が大切です。