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 オバマ米大統領は26日、キューバのフィデル・カストロ氏の死去を受けて声明で弔意を示し、「この非凡な人物が人々と世界に与えた巨大な影響は、歴史が記録し、判断するだろう」とした。オバマ氏はキューバとの関係改善に力を注いだが、次期大統領のトランプ氏は同日、声明でフィデル氏を批判。対キューバ政策の先行きは不透明だ。

 オバマ政権は昨年7月、キューバと54年ぶりの国交回復を実現。今年3月には現職米大統領として88年ぶりにキューバを訪問した。声明でも「60年近く両国は争いや深刻な政治的対立で刻まれた関係だった。我々は協働し、過去から未来に目を向けた」とした。

 一方で、オバマ氏は「キューバの人々は(フィデル氏に)変えられた個人の人生や家族、国家を思い出し、それぞれが非常に強い感情で満たされているだろう」とし、フィデル氏に賛否があることも示唆した。

 トランプ氏は、オバマ政権の対キューバ政策を疑問視している。

 オバマ大統領は、対キューバ禁輸措置の全面解除は共和党が多数の議会の反対で実現できないなか、大統領令で貿易や渡航、金融に関する規制を段階的に緩和し、両国の交流が飛躍的に増した。オバマ政権はキューバの人権状況には引き続き懸念を示しつつ、関係を築くことで内部からの変革を目指した。

 だが、トランプ氏はこの大統領令を「オバマによるカストロ政権への譲歩」と表現。「カストロ政権が要求を満たさなければ覆す」と、政治や信教の自由を確保するよう要求し、キューバとの再交渉も辞さない考えを示していた。トランプ氏は26日朝、「60年近く自国民に圧政をしいてきた残忍な独裁者が死去した」とし、「我々の政権はキューバ国民の繁栄と自由のためにできることを行う」とした。

 一方、フィデル氏は米大統領選の行く末を注視し、トランプ氏の信用性に疑問を呈していたとも伝えられている。(ワシントン=杉山正)