スポンサーリンク

2016年11月26日

【オススメ】『プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中―「決まる!」7つの交渉術』藤井一郎


プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中―「決まる!」7つの交渉術
プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中―「決まる!」7つの交渉術


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、本日までの開催となる「東洋経済新報社 Kindleセール」からの1冊。

告知記事でも触れたように、昨年購入し、その内容の濃さに驚いていた作品です。

アマゾンの内容紹介から。
日本トップクラスの成約数を誇る敏腕M&Aアドバイザーが初公開!行動経済学を駆使した最新の交渉術とは?価格交渉で絶対優位に立つには?自分の感情をどうコントロールするか?今日から使える「ビジネス交渉」の極意と技法。

もちろん単行本でも読めますが、本日までなら「50%ポイント還元」となる、上記Kindle版がオススメです!





Negotiations / michaelstyne


【ポイント】

■1.交渉力の7つの源泉
交渉力とは、わかりやすくいうと、強気で交渉できること、つまり、譲歩する必要がない状態(少なくとも、そのように交渉相手に思わせる)のことです。
 では、その交渉力を決める要素は何でしょうか? 私は以下の7要素が交渉力を決めると考えています。括弧内は恋愛中の男女になぞらえたレトリックです。
(1)合意をしたいと思う温度差(惚れたほうが弱い)
(2)他の選択肢(結婚前はひとりに絞るな)
(3)時間(結婚を焦ってはダメ)
(4)情報(本当に彼女(彼氏)のことを理解している?)
(5)演技力(ウソはダメだが、思わせぶりはOK)
(6)客観的状況(親や友達は何て言っている?)
(7)人間力(最後は男(女)の魅力
(詳細は本書を)


■2.間違った相手と交渉しない
 たとえば、ある商品の売り手としては、その商品の価値を評価しない買い手や、そもそも十分な予算を持っていない買い手と時間をかけてよい条件を引き出そうと交渉するよりも、商品を高く評価してくれて、十分な資金を持っている買い手を探すほうがよほど重要になります。
 石油のようなコモディティーで、相場価格がある商品であれば、ある一定量の石油を誰が誰から買おうが、価格が何倍も変わるということはありませんが、買い手によって商品(M&Aの場合は会社)の価値が天と地ほどの差が出てくるものもあります。  A社にとっては一銭の価値もない商品(会社)が、B社にとっては1億円、C社にとっては10億円の価値があるということが往々にして起こります。その場合、A社やB社といくら交渉してもダメで、早くC社のような会社を見つけて交渉する必要があります。


■3.損失回避の概念を理解して交渉する
 損失による不満の大きさは、それと同じ額の利得の喜びの大きさよりずっと大きく、ある額の損失はその約2倍の利得と釣り合うといわれています。わかりやすくいうと、100万円儲かる満足よりも、100万円損する不満足のほうがよほど大きく、そして、100万円の損失と200万円の利得がだいたい同じ大きさに感じられるということです。
 これは価格交渉がいかに難しいかを示しています。
 なぜなら、買い手による100万円の値下げ要求は、売り手にとっては200万円の損失に等しくなります。逆の場合も同様で、売り手による100万円の値上げは、買い手にとっては200万円相当の損失に感じられます。つまり、売り手と買い手がそれぞれカウンターオファーを何度もするような価格交渉の応酬が行われると、ますます合意が難しくなるということです。


■4.個人の能力はアピールしない
 売り手が買い手に対して行うプレゼンにおいて犯しがちなミスは、個人の属人的な能力をアピールしてしまうことです。
 たとえば、ソフトウェア製品が自社の天才エンジニアによって開発されたことを強調してしまうことです。買う側とすれば、購入したあともサポートなどの支援を受けなければならないので、その天才エンジニアが辞めた場合のリスクを考えてしまい、購入に二の足を踏んでしまいかねません。(中略)
 したがって、売り手のオーナー社長としては、「組織でビジネスをやっていて、(引き継ぎは責任を持ってやるにしても)自分が抜けても、顧客が離れたり売上が落ちたりすることはなく、自分がリタイヤする影響が極めて軽微であること」をアピールすべきです(もちろんそれが事実ならばですが)。


■5.相手の言うことを素直に受け入れられない3つのバイアス
 交渉していると、なぜ相手方はそんなに理不尽なことを主張するのかと思うことがよくあります。でもじつは相手もあなたのことを「なんてわからず屋だ」と同じように思っているかもしれません。
 相手の言うことを素直に受け入れられないバイアスを3つご紹介します。
▼フォールス・コンセンサス効果
 自分の考え方は正しく常識的で、相手も自分と同じように考えるべきで、そのように考えない相手はおかしいと思うことです。
▼反射的低評価
 立場を異にする人の意見や提案だからという理由だけで反対したくなる心理のことです。
▼帰属のエラー
 自分や他人の行動を判断するとき、他人に対しては人柄や性格をもとにして判断し、自分に対しては置かれた状況や外的環境で判断しがちであることをいいます。


【感想】

◆最初、本書のタイトルにある「プロフェッショナル・ネゴシエーター」というフレーズを見たときに、著者の藤井さんは、てっきり「とにかく強気」で押す、いわゆる「タフネゴシエーター」なのかと思ったのですが、全く違いました。

では、「お互いの落としどころ」を探すタイプかというとそうでもない、とのこと。

そもそも、藤井さんは弁護士でも会計士でもなく、また、何か強力なコネクションがあるワケでもないのだとか。

そんな中、M&Aの仲介者・アドバイザーとして、毎年5件ほど成約させている(平均は年間1件程度とのこと)秘密は、その「交渉力」にありました。


◆というわけで、「交渉力」とは何ぞや、という話については、本書の第1章にある、上記ポイントの1番目のとおりです。

なぜか恋愛中の男女になぞらえられていますが、まさに本質をとらえているかと(詳細は本書を)。

というか、ある意味類書にある交渉術のポイントの多くが、この部分でまとめられているようなものなので、ここを押さえておけば、交渉術の基礎はクリアできると思います。

続く第2章では「信頼ベースの交渉術」と題して、反目し合うの交渉術とは一線を画すためのスキルを伝授。

一般的に弁護士系の交渉は、「その場限り」となりがちですが、藤井さんの手がけるM&A系ですと、交渉後もビジネスとしてお付き合いがあることが多いのだそう。

ですから「信頼」という要素も重要になってくるわけですね。

上記では割愛しましたが、「交渉相手と信頼を築く6つの方法」というTIPSも見逃せないところかと。


◆ただ、本書の読みどころは第3章以降がメイン。

上記ポイントの2番目の「間違った相手と交渉しない」なんて、「目の前の交渉相手をいかに攻略するか」という考えに凝り固まっていたら、絶対出てこない発想です。

おまけに第4章の「ワンランク上の心理交渉術」では、大々的にこの本を紹介した上で、その「法則」を「6つの武器」として援用。

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか
影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

参考記事:【速報!】最強のビジネス本「影響力の武器」の[第二版]がいよいよ登場!!(2007年08月18日)

『影響力の武器』が交渉に使えることは重々分かっていましたけど、その説明から実際の使用例まで紹介しているのがマニアとしてもありがたかったです。


◆さらには、同じ第4章では「行動経済学」の知見まで活用しているという。

上記ポイントの3番目は、まさにダニエル・カールマンのプロスペクト理論のお話であり、なぜに価格交渉がまとまりにくいのかが腑に落ちました。

また、続く第5章では実際の「価格交渉術」が展開されているのですが、俗にいう「保有効果」(自分が実際に持っているものを高く評価する)も、行動経済学に属するお話でしょう。

たとえば、学生の自分の持ってるバスケの試合のチケットの売却希望価格と、はずれた学生の買い取り希望額の差が14倍あったというお話は、当ブログでもご紹介したこの本にも載っていました。

予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

参考記事:【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)


◆一方、第6章では、「売り手」「買い手」「仲介者」それぞれの立場での交渉術を指南。

上記ポイントの4番目の「個人の能力はアピールしない」なんて、IT系の会社ならやってしまいがちですけど、これはNGのよう(正しいアピール法にも触れられていますが)。

また、入札方式だと、売値が吊り上りそうですが、実はそうではない……なんてお話は、本書を読んで初めて知りました。

何でも具体的な価格オファーが10社以上ないと、入札方式は止めた方が良いのだとか。

……まだ書きたいことが一杯あるのですが、スペースの都合上この辺で。

個人的には今まで読んだ交渉本の中では、一番面白かったです。


この本が今日中なら激安なんですから、オススメしないわけには参りません!

プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中―「決まる!」7つの交渉術
プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中―「決まる!」7つの交渉術
はじめに
第1章 「交渉」を知らなければビジネス界では生きていけない
第2章 信頼ベースの交渉術
第3章 満足する交渉術
第4章 ワンランク上の心理交渉術
第5章 相手には知られたくない価格交渉術
第6章 これだけは押さえておきたい立場別交渉術
第7章 自分の感情をコントロールする方法
おわりに(交渉術から交渉道へ)


【関連記事】

【50%ポイント還元】「東洋経済新報社 Kindle本セール」始まりました!(2016年11月25日)

【速報!】最強のビジネス本「影響力の武器」の[第二版]がいよいよ登場!!(2007年08月18日)

【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

【オススメ!】『交渉で負けない絶対セオリー&パワーフレーズ70』大橋弘昌(2014年07月07日)

【交渉術】『最強交渉人のNOをかならずYESに変える技術』島田久仁彦(2013年08月08日)


【編集後記】

◆本日のKindle日替わりセールから。

マンガ 日本最大のビジネススクールで教えているMBAの超基本
マンガ 日本最大のビジネススクールで教えているMBAの超基本

元々本日終了の「東洋経済新報社 Kindleセール」対象だったとは思いますが、今日限りでそれを上回る叩き売り状態に突入中。

中古も多少値崩れしているものの、「61%OFF」&「50%ポイント還元」により、Kindle版が500円弱お得になっています。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「コミュニケーション」へ

この記事のカテゴリー:「ビジネススキル」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
Posted by smoothfoxxx at 08:00
TrackBack(0)コミュニケーションこのエントリーを含むはてなブックマークYahoo!ブックマークに登録BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク

スポンサーリンク




この記事へのトラックバックURL


●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。
http://trackback.blogsys.jp/livedoor/smoothfoxxx/52238987