NTTドコモが11月17日と18日の2日間、超高速・大容量通信をめざした通信規格「5G」へのプログラムとして、2017年5月以降に開設予定の「5Gトライアルサイト」での実証実験を見据えた「DOCOMO R&D OPEN HOUSE 2016」( http://docomo-rd-openhouse.jp )を開催しました。
オープンハウスではALSOKやジャパンディスプレイ(JDI)、凸版印刷などの提携企業が5G通信を活かしたサービスやソリューションの展示を行ったほか、NECやノキア、エリクソン、ファーウェイといった通信機器ベンダーによるアンテナ技術の公開を行いました。またDeNAが運用を開始している自動運転バス「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」に5G通信機器を搭載しての試験運行なども行われました。
今回は一般公開に先駆けて11月16日に行われたメディア向けツアーでの取材の様子などを写真や動画でご紹介します。
■世界規格としての5Gを牽引したいNTTドコモ
メディアツアーは5Gを活用したサービスやソリューションを中心とした展示を紹介する「5Gコース」と技術解説が中心の「5G Techコース」の2つがあり、筆者は5Gコースを選択。それぞれの企業が持つ技術がどのようにして5Gと連携し運用されていくのかについて解説をして頂きました。
ツアー開始前には5Gについての簡単なプレゼンも行われ、4Gに対して5Gが代替していくのではなく4Gを拡張・発展させる技術として5Gが定義される点や5G通信の現状と今後についてスライドで説明。国際規格としての5Gに対しても日本が積極的に提案や意見を行っていくことで技術的な牽引役を担いたいという同社の思惑のようなものも垣間見えました。
■5Gを活かせる技術を模索する各企業
「5G時代のサービス創出に向けた取り組み」と題された展示コーナーではJDIや新日鉄住金ソリューションズ、クレッセント、東武グループなどが5Gを活用した技術やデバイスを展示・実演。大容量通信を活かした4K映像や8K映像の送信、遠隔操作支援システム、映像をリアルタイム処理しバーチャル空間上に表示する自由視点映像技術などを披露しました。
これら展示コーナーの様子や各技術の紹介などは以下の動画からもご覧いただけます。
S-MAX:DOCOMO R&D Open House 2016 展示内容を一部紹介
動画リンク:https://youtu.be/EwPPdSI8qbI
■自動運転車の安全確保やリッチコンテンツ体験に5Gを活用
DeNAはすでにイオンモールなどで導入事例のあるロボットシャトルを使った5Gでの映像伝送試験を公開。バス自体は各種センサーやGPSによる独立制御ですが、バスからの映像を5Gによって高品質に伝送することで乗客の安全性を確保したり、バス内に設置されたディスプレイへ映像を送信することでデジタルサイネージやリッチコンテンツの提供を可能としています。
先に紹介した東武グループによる東京スカイツリータウン・浅草エリアでの5G実証実験も含め、NTTドコモは移動体における5G利用を特に重視しており、これらの他にも時速150kmで移動しながらの5G通信のテストの模様なども大々的にアピールしていました。
ロボットシャトルの解説や搭乗時の様子などは以下の動画からもご覧いただけます。
S-MAX:DOCOMO R&D Open House 2016 「Robot Shuttle」走行テスト
動画リンク:https://youtu.be/eJBAlL7sf3g
■アンテナ開発もNTTドコモが全面バックアップ
メディアツアー後半ではアンテナ技術について参加型の実験などを用いて紹介。電波暗室では5Gに利用されるビームフォーミングによる電波の最適化や指向性のテストが行われ、非常に高い精度での電波制御が行われていることを解説しました。
この他、NECやノキア、エリクソンなどの5G用MIMOアンテナが紹介され、それぞれのアンテナで扱う電波の特性の違いや送信方法の違いなどを解説。ファーウェイは横浜市のみなとみらい地区からテストの様子をライブ中継し、実際の街を使った広域エリアでの4K映像伝送実験などを披露しました。
■2020年サービス開始をめざして
超大容量で超高速通信、なおかつ低消費電力で低コスト。このように文字だけ読めば夢のような技術である5Gですが、現状はまだまだ超えなければいけない技術的ハードルが多数あり、また規格の標準化を進める各国でも利用できる周波数帯が微妙に異なるなど足並みを揃えることの難しさから、各通信機器メーカーや通信キャリアの進捗は想像以上に険しいのが実情です。
しかしNTTドコモの5G 推進室長を務める中村武宏氏は「我々は楽観視している」と前向きに語り、各社の努力や技術革新によって各ハードルは超えられるだろうと見解を示しました。5Gの本格的な商開始時期については明確には明言しませんでしたが「非常にアグレッシブなスケジュールで標準化が進んでいる」として東京オリンピックが開催される2020年を1つの目標としている点を強調し、「海外では2020年よりも前倒しで計画が進んでいる」と、日本も遅れることなく追従していく姿勢を見せました。
今回のオープンハウスの展示内容が移動体通信にフォーカスしていたように、5Gの運用目的については世界的にもシステム管理やセキュリティ目的などのIoTを中心とした動きからモバイルブロードバンドを重視した動きへとシフトしている点を挙げ、NTTドコモの強みが活かせると意気込みを見せていました。
日本国内においてはNTTドコモのみならずKDDIやソフトバンクもまた5Gのサービス開始を見据えた技術開発競争を繰り広げています。2020年まであと4年。東京オリンピックを自動運転バスの中から観覧する日が来るかもしれません。
記事執筆:あるかでぃあ
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