ワシントン・ポストのトランプのスキャンダル探しはジャーナリズムとしてアリですけど、いい加減なゴシップを裏も取らずに報じるのは間違っている。ワシントン・ポストのホワイトハウスのキャップなんて、ウィキリークスがばらしたけど、民主党のヒラリー選対の報道係にメール送ったのを暴露されたんです。

 そのキャップはトランプのスキャンダル記事についてヒラリー側に「明日の一面トップで出ます、きっと気に入ってもらえると思います、これからもよろしくお願いします」なんて内容をメールで伝えているんです。敵対陣営のネタを記事が掲載される前に言うなんてタブーですよ。

 ニューヨーク・タイムズも似たようなことをウィキリークスに暴露されて、テレビも同じようなものです。CNNはトランプにインタビューする前に、民主党の全国委員会にメールを出して、「看板キャスターがインタビューするからトランプを追い込むような質問を集めろ」ってね。これはちょっとひどいなと思いますよ。
トランプ氏
トランプ氏
 大手メディアがこぞって今回の大統領選挙の結果を間違えたのかという点については、目の前を通っているトランプ支持者を自分たちで見えなくさせてしまったんです。あまりのヒラリー支持に凝り固まって、それが行き過ぎた。

 何がなんでもトランプが嫌だという思いが強すぎて、たとえ世論調査の結果でも社内でトランプ優勢なんて言えないような雰囲気にまでなっていたようですね。メディアとして死んでいたということです。

 メディアが政治的立ち位置を鮮明にするのはいいけど、フェアにやらないといけない。アメリカは今回、あまりに不公平だった印象が強い。こうした大手メディアの信用できない実態を国民は知っていたし、トランプもそこを逆手に取ったんでしょうね。

 トランプは大手メディアを敵に回したことで得をしたんです。集会をやると必ずトランプがやることがあって、大手メディアの記者席がある方を指さして「後ろに並んでいるウソつきどもちょっと来い」なんて言って、僕もいましたけど、聴衆が一斉に後ろを向くんですよ。そしてブーイングが起きて、大いに盛り上がる。

 トランプは政治経験もなく、スタッフの数も選挙資金もヒラリーの10分の1しかなかった。だけど、選挙参謀がネットメディアの経営者であまりに優秀だったんです。日本もそうなりつつあるけど、結局アメリカもネットメディアの勢いがものすごくて、トランプはきっちりネットメディアのすごいヤツを使っていた。

 アメリカに「ブライトバート・ニュース」というニュースサイトがあります。そこの会長がスティーブン・バノンっていいますけど、その人が8月以降、トランプ陣営の総責任者を務めはじめて、それから猛烈にトランプは勢いづいていったんです。