■わざとではない
幼い頃、寒い日の早朝。
薄手でリビングに行くと母によく怒られていた。
「そんな薄手で!!! もう!!! 風邪でも引いたらどうするの!!!」
眠くて「うーん」と適当な返事で返すと、母は自分が着ている上着を私の肩にかける。
「ちゃんと着なさいよ!」
「うーん」とまた適当な返事を返しながら、私はとっても嬉しかったりしていた。
わざと、上着を着てこないわけではない。
朝起きるとリビングはもう暖かいし、眠くて忘れている。
本当にわざとではない。
でも、母が着ていた上着は暖かくて好きだった。
