はい、こんにちは。lifeです。
今回はマンガの神様と呼ばれる手塚治虫先生の『時計仕掛けのりんご』という短編集を読んだのでその感想を書いていこうと思います。
おそらく私がこれまで読んできた漫画の中で1番古い作品になりますね。
手塚治虫先生と言えばマンガの神様なんですけど、あまり読む気になれず避けていました。
というのも私は現役高校生なのですが、こんなに時代が違う作品を読んで果たして楽しめるのかという疑問があったからです。
なので、今回はそんなことも踏まえて書いていけたらなと思います。
この作品は5つの短編で構成されているので、1つずつ簡単な内容紹介と感想を書いていきますね。ではでは、早速行きますよ!
追記:いつもよりも重いテーマを扱ってしまったため、書き方も重くなってしまいました。笑
いつもと違うlifeさんをお楽しみ下さいということで。(リライトは面倒臭いのでしません。許して)
1.ペーター・キュルテンの記録
過去に実在したドイツの連続強姦殺人犯のペーター・キュルテンの事件を題材とした話。
手塚治虫先生と言えば、子供向けの明るい作品が多いという印象があったので話を読み切った時は衝撃が走りました。
まず、私はペーター・キュルテンという人が実在していたことを知らなかったので、最後の一コマで実話であることを知り本当に鳥肌が立ちました。
絵に関しても背景とか本当に上手すぎる。
ページ数の少ない短編であるのに、これはまるで1本の映画を見ているかのような錯覚に陥りますね。それぐらい綺麗に詰まっている。
そして、この短編を読んで私が感じたのは人間というものの怖さでした。
作中でペーターは自分が人を殺す理由は不平等な社会への復讐だと言っています。
これは歴史的に考えてもどこの国でも少なからずあること。それは大きな場合はテロという形で現れたりするのですが、思想の傾倒は人を壊すのだなと感じました。
そして、ペーターはそう思っているので自分の犯罪に誇りを持っています。捕まった後も悪びれる様子が無く、処刑されます。
だけど、そんなペーターは妻だけは本当に愛していたよう。私にはそれが一層狂気を感じさせました。
とにかく、私ごときの文章力では言い表せない”何か”がありました。
2.時計仕掛けのりんご
長野県天竜川中流近くの架空の都市「稲武市」を毒薬により占領しようする自衛隊の反乱部隊と、その思惑に気づきそれを阻止しようとする一市民の戦いを描いた話。
話的には自衛隊の反乱部隊(革命派)が、国を占領するため、その予行演習として1つの町に毒薬をばら撒き占領しようという話。
今の時代はここまでの反乱はありませんが、昔は本当に日本でも軍によるクーデターというものがありました。
そして今でも海外では政府と革命軍の内乱などが起きています。そんなことを考えながら読むと、日本の「if」を見ているかのようでとても怖かったです。
毒薬により正常な判断を出来なくなった市民はまるで憲法9条による空想の平和を盲信する日本人を見ているかのようでした。
手塚治虫先生からの現代人への警鐘が乗せられたような短編に感じました。
3.カノン
主人公の加納が廃校となった小学校のクラス会に30年ぶりに招待され、そこで小学生のままの同級生と初恋の相手の先生と会い、自身の小学校時代の悪夢のような出来事を次第に思い出していく話。
ネタバレになってしまいますが、実は主人公の加納(あだ名はカノン)は小学校時代に空爆にあうのですが、そこで自分以外が死んでしまったため、同窓会で小学生のままの同級生の霊に会うことになるんです。
話自体はありふれた大したことのない話かもしれませんが、この話で先生が伝えたかったのは「戦争の悲劇を忘れるな」ということかと思います。
ここで私がずっと疑問に思っていることを書きます。
現在広島には原爆死没者慰霊碑がありますが、そこにはこういう言葉が刻まれております。
「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」
これを読んで違和感を抱かないですか。
問題は後半の”過ちは繰返しませぬから”という言葉。普通に読めば主語は日本人になってしまいます。だけど、原爆を落としたのは紛れもなく米国です。
日本は戦後、GHQにより押し付けられた自虐史観がありますが、それも少しずつ変えていかないと、戦争で日本のために闘い亡くなられた方が不憫かなと思っています。
少し政治的な話になっちゃいましたが、日本人であるならば少しは感じることのある話かなと思いました。
4.白い幻影
海難事故で恋人の則夫を失った娘は、その後白い壁や舗道、シーツを見ると彼の姿の幻影を見てしまうようになる。医者に診てもらうとどうやら網膜に焼き付いているらしく一生治らないと告げられる。最初は怖がっていたが、その幻影に愛情を覚えていき、ひっそりと”彼”と暮らすことを決めた。そんな幻影と娘の2人の物語。
これはとても短い短編だったのですが、オチがとても切なく読了後はとても遣る瀬無い気持ちになりました。
とても話が上手く、手塚治虫先生のブラックジョークかなと思われる話ですね。
今回の5つの作品の中では最も後味の悪い作品とも言えるかもしれませんが...笑
というより、雷などによりその光景が網膜に焼きつくという話がこの頃にもうあったのだということが何より驚きでした。
さすがは医学博士だっただけありますね。
最近の下手な短編を読むより圧倒的に面白いなと思いました。
5.最上殿始末
天下を狙う領主「最上殿」は人間を信じることが出来ないため自分の影武者を立てようとし、領地の農民で自分に良く似た「しょんべ」をつかわせるのだが、この時子供と妻は最上殿の家来により口封じのため殺されていた。
しょんべはそのことを知り、最上殿に復讐することを思い立ったのであった。
世にも奇妙な物語でもリライトされた話。
正直、原作とは全然違うものになっていましたが。
この話を読んで思ったことは「復讐は復讐を呼ぶ」ということです。
この話でもそうなんですけど、実際そういう事件が何件も起きてますよね。
でも、普通はやられたらやり返してしまうと思います。やり返さなければ、さらにやられる場合もあるので。うーん、難しい問題。
話の構成としてもとても完成されていて、楽しく読むことが出来ました。最後の毒のあるページは鳥肌が立ちました。
まとめ
はい、今回は手塚治虫先生の『時計仕掛けのりんご』を読んでみました。
冒頭に書いた通り、読む前は時代が違いすぎるので楽しめるかどうか不安だったのですが、見事にそんな不安を払拭していきました。
むしろ、現代人はみんな読むべきだなと思いました。本当に感じられるものも多く、漫画の歴史にも少しは触れられた気がしました。
表現方法なんかも今と全然違う部分もあるので、すごく感心してしまいました。
表の顔の漫画としては、とても明るく正義感の満ち溢れた手塚治虫先生の裏の顔としての短編集を読み、これがマンガの神様と呼ばれる所以かと思いました。
手塚治虫先生の持っている世界がどこまで広いのか気になったので他の作品も読んでみようかと思います。
高校生の拙い感想記でしたが、ここまで読んで頂きありがとうございました。
ではでは、ぐっばいです。lifeさんでした。