アップル創業者の1人であるスティーブ・ジョブス氏を追い出した男として知られるジョン・スカリー元アップル(当時はアップルコンピューター)最高経営責任者(CEO)が先頃来日した。都内でインタビューに応じたスカリー氏は、主力のスマートフォン「アイフォーン」の販売不振に苦しむアップルの現状に言及するとともに、イノベーションが起きにくい日本企業の問題を指摘した。筆者は1992年にアップルCEOのスカリー氏にインタビューしており、24年ぶりの再会となった。現在、ベンチャー投資やコンサルティング活動を精力的にこなすスカリー氏の髪は白くなったが、眼光鋭く持論を展開する姿は四半世紀前とほとんど変らなかった。
スカリー氏は伝説の経営者だ。かつてジョブス氏から「このまま一生砂糖水を売り続けたいのか、それとも私と一緒に世界を変えたいのか」といわれたスカリー氏は、ペプシコーラの社長職をなげうって苦境のアップルに転身した。しかし、主力パソコン「マッキントッシュ」の販売不振に端を発した経営方針の違いからジョブス氏と決定的な亀裂を生じ、自身を追い出そうとしたジョブス氏を取締役会に諮って逆に追い出した男として知られる。スカリー氏はマッキントッシュに代わる端末として「PDA(パーソナル・デジタル・アシスタンス)」の製品化を目指したり、マックOSのライセンス提供を模索したりしたが、業績不振で1993年にはアップルCEOを退任した。
92年2月のインタビューの際、53歳だったスカリー氏はPDAについて、「基本的な概念は5年ほど前に考えた“ナレッジ・ナビゲーター”だ。いまのパソコンより使いやすくデジタル技術で通信も取り込めて、単なる“道具”以上に人間のいろいろな活動に役立つ。例えば、電子書籍やインテリジェント機能を持つ移動通信機器もその対象だ」と述べている。スカリー氏は四半世紀前にスマホのようなモバイル端末をイメージしていたわけだ。
アップルに戻ったジョブス氏はその15年後にアイフォーンで一世を風靡(ふうび)したが、2011年10月にはジョブス氏が急逝し、いまやアイフォーンの売れ行きも鈍化。新たなヒット商品を打ち出せずに業績にも陰りがでてきた現在のアップルをどうみるか。スカリーにアップルの課題を聞いた。
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