官房副長官といえば政権中枢のひとりである。官邸でも外遊先でも、首相側近としてその政治判断を間近に見る。若手政治家の登竜門とも言われる。

 そんな萩生田(はぎうだ)光一官房副長官がおとといのシンポジウムで、耳を疑う発言を重ねた。

 たとえば、強行採決――。

 「強行採決なんてのは世の中にあり得ない。審議が終わって採決を強行的に邪魔をする人たちがいるだけだ」。そのうえで野党議員の反対を「田舎のプロレス」にたとえ、「ある意味、茶番だ」と批判した。

 政権支持者の多い、いわば身内のシンポジウムに招かれ、本音が出たということなのか。

 国会で政府・与党が強引な態度をとれば、数に劣る野党が、さまざまな抵抗をすることは当たり前だ。

 それを「邪魔」と切り捨て、数の力で押し切ることも野党との出来レースだと言わんばかりの発言である。立法府に審議を求める行政府の要職にある者の発言としてありえない。これでは首相がいくら熟議を説いても建前としか聞こえない。

 たとえば、歴史認識――。

 戦後70年の安倍談話に触れつつ、「日本人はものすごく素直な国民」なので、「悪くないと思っていても、その場を謝ることで収める」と説明。「過去に発した文書の中には、安易なおわびを入れることによって、間違ったメッセージを世界に発信してきたという後悔と過ちがあった」と続けた。

 萩生田氏はかつて、慰安婦問題への謝罪と反省を表明した河野談話が、安倍談話を出すことで「骨抜きになっていけばいい」と語っていた。今回の発言も、河野談話や戦後50年の村山談話への批判と受け取れる。

 だがそれは、ふたつの談話を継承するとしてきた安倍内閣の方針とは食い違う。これも本音と建前の使い分けなのか。

 たとえば、首脳外交――。

 トランプ次期米大統領やロシアのプーチン大統領らと向き合う安倍首相について「お坊ちゃま育ちの割には、不良と付き合うのがものすごく上手です」。

 首相の外交面でのたくましさを強調したかったのだろうが、外国首脳を「不良」呼ばわりする感覚が信じられない。

 萩生田氏は一連の発言について、きのうの参院審議で野党から批判されると、国会審議への影響などを理由に、発言を撤回し謝罪した。

 なるほど、それも「悪くないと思っていても、その場を謝ることで収める」ためだったのですか、萩生田さん。