【ワシントン=河浪武史】米政府は23日、中国を世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国」と認定しない方針を明らかにした。同協定では中国を「非市場経済国」と位置づけ、反ダンピング(不当廉売)などで厳しい条件を課している。条件は加盟15年の12月に見直すことになっているが、米国は中国の鉄鋼などのダンピングを厳しく批判しており、要件緩和を見送ることにした。
プリツカー米商務長官が23日、ワシントンで開いた米中合同商業貿易委員会後の記者会見で「市場経済国への移行は機が熟していない」と述べた。市場経済国と認定すれば、反ダンピング関税などの措置がとりにくくなる。米国はトランプ次期政権でも中国に対抗措置を打ち出す可能性があり、米中の貿易摩擦がじわりと強まりそうだ。
2001年にWTOに加盟した中国は、当初15年間は「非市場経済国」としての地位を受け入れるとしていた。WTO協定では、政府が為替相場や生産活動を統制する国を非市場経済国と指定。貿易相手国は対象国には厳しい反ダンピング関税を課すなど対抗措置をとりやすくしている。
中国は加盟から15年がたつ今年12月11日に、自動的に市場経済国に移行すると主張してきた。日米欧は自動的な移行ではなく個別に判断するとしており、プリツカー氏も「WTO協定は中国が市場経済国に自動的に移行するとは定めていない」と主張した。
中国は過剰生産設備の解消が遅れ、鉄鋼などのダンピングが世界的に問題視されている。欧州連合(EU)の欧州委員会も中国を市場経済国と認定しない方針を決めており、対中政策で米欧が足並みをそろえた。米商務省は市場経済国への移行の条件として、外資進出の自由度など6項目の基準を示している。
米商務省は2016年に入って、冷延鋼板や耐食鋼、炭素合金鋼など幅広い中国の鉄鋼製品に、200%を超える高率の反ダンピング関税を課すと立て続けに決めた。中国勢との安値競争で米鉄鋼メーカーの業績悪化は深刻で、中国への対抗措置や米雇用の確保などが米大統領選でも大きな論点となった。