『種まく旅人 夢のつぎ木』 農林水産省のコネを持ってる連中が町おこし映画と結びついて、現実から遊離した農政ユートピアを訴える! (柳下毅一郎)
→公式サイトより
監督 佐々部清
脚本 安倍照雄
撮影監督 阪本善尚
音楽 田中拓人
出演 高梨臨、斎藤工、池内博之、津田寛治、田中麗奈、永島敏行、井上順、海老瀬はな、安倍萌生、川藤幸三
農林水産省特別後援の第一次産業礼賛映画『種まく旅人』シリーズ、2015年の『種まく旅人 くにうみの郷』に続く第三弾が早くも登場。舞台は西へ移動して岡山県赤磐(あかいわ)市! 聞いたことない名前だと思ったら平成17年(2005年)に合併で誕生した市だそうで昨年が合併十周年! 出ました平成の大合併の負の遺産十周年記念映画! なんかこう次々に予言があたっていくのも嬉しいと言うより怖いというか、本当に日本映画界の未来を憂うしかないわけです。で、この手の町おこし映画の典型的パターンとして、立ち位置的に微妙な感じの女優が都会で挫折して地方に帰り、町おこしをするというストーリーがあることをさんざん指摘してきたわけですが、この映画、そのパターンにも見事に合致する。農林水産省のコネを持ってる連中が町おこし映画と結びついて、これ本当にヤバいんじゃないですかね……
謎のダンサーが踊っている舞台の真ん中には女性器にしか見えない岩が立っている。その岩が真っ二つに割れて、そこから出てきて歌をうたいはじめたのが片岡彩音(高梨臨)。いい湯加減で歌ってると、なぜか川からどんぶらこと桃が流れてくる。なにこれ!と叫んでいる彩音ちゃんですがまああまりに酷いんですぐに夢だとわかる。そう彼女は岡山県赤磐市暮らし安全課に勤務、赤磐市のゆるキャラ「あかいわモモちゃん」の中の人もつとめるアラサー公務員なのだった。公務員のかたわら、彩音は実家で桃を育てている。新品種「赤磐の夢」を育てるのは亡き兄(池内博之)の夢だった。その夢をつぐべく、二足のわらじで頑張っている彩音なのである。実は彩音は七年前、女優を目指して上京したのだが、地元に残って桃農家に夢をかけた兄が若くして病を得たときに帰ってきて、そのまま兄の夢をついだのであった……って設定を書いただけでもう話のすべてが理解されてしまうという恐ろしさ。彩音は桃の酒なんかを造ってる地元の宝町酒造の御曹司から「結婚してよ」と迫られているモテっぷり。
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