黒塗り南スーダン資料、一転公開で「隠した内容」が判明 

11.24 17:00 中日新聞社

 防衛省が今年六月、表題以外をすべて黒塗りにして開示した陸上自衛隊の南スーダン国連平和維持活動(PKO)に関する作成資料を今月公開し、内容が現地報道を基に反政府勢力の「支配地域」を示した地図だったことが分かった。現地で公になっている情報まで黒塗りにする姿勢に、野党は「こんなものまで隠すのか」と批判している。 (新開浩)

「こんなものまで」野党批判

 黒塗り資料は六月、フリージャーナリストの情報公開請求に対して開示。共産党が今月、同じ資料を要求し、勢力図の地図が公開された。南スーダンPKO十次隊が今年五月に出発する直前、隊員の家族向けに開かれた説明会で使われた資料の一部。「反政府派支配地域」や「戦闘発生箇所」などが記載されている。

政府が6月に黒塗りで開示した資料

(上)今月には同じ資料を一転公開(下)政府が8月にまとめた資料。タイトルなどが変わっている

 共産党の井上哲士参院議員は資料提出を受け、最近の国会審議で取り上げ「なぜ(六月は)隠したのか」と質問。稲田朋美防衛相は「当時は南スーダン暫定政府が発足したばかりで、内容を公にすれば同国に不利益を与え、わが国との信頼関係が損なわれる恐れがあった」と指摘した。公開に切り替えた理由は、七月に首都ジュバで大統領派と反政府勢力との銃撃戦が発生し、二百七十人以上が死亡したため「情勢を可能な限り国民に説明すべきだと判断した」と述べた。

後で「戦闘」を「衝突」に修正

 一方、これまで稲田氏は国会答弁で、南スーダンでは「反政府勢力が支配を確立した領域はない。武力紛争の当事者が現れたとは認識していない」と説明。戦闘の発生を否定し、衝突が起きているとの考えを示してきた。

 だが、資料には「反政府派支配地域」や「戦闘発生箇所」の表現がある。防衛省として双方とも認定していると受け取れ、自身の答弁と矛盾するが、稲田氏は「現地報道の表現を引用した。不正確な記述だった」と述べ、資料が間違っていたとの見解を示した。

 防衛省は共産党に八月にまとめた資料も公開した。「反政府派支配地域」は「反政府派の活動が活発な地域」に、「戦闘発生箇所」を「衝突発生箇所」との表現に修正していた。

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年間2億の赤字、都が負担 五輪ボート場候補「海の森」

11.24 17:00 中日新聞社

 二〇二〇年東京五輪・パラリンピックで、東京都がもともとボートとカヌー・スプリント会場として計画した海の森水上競技場(東京臨海部)は維持管理費が年間三億円と、国内の主要なボート場と比べて桁違いにかかる。最も利用されている戸田漕艇場(埼玉県戸田市)の四倍以上。利用料などの収入は戸田の二十倍を見込むが、それでも年間二億円の赤字が出て都が負担する。 (石井紀代美、森川清志)

海上のため膨らむ維持費、戸田の4倍超

 都は今月、有識者でつくる調査チームに求められ、海の森の維持管理費などを初めて公表した。本紙は、日本ボート協会がA級コース(二千メートル×六レーン以上)と認定した全国の四施設で年間の維持管理費を調べた。A級は国際大会を開く際の協会規格で、東京五輪は二千メートル×八レーンで開かれる。

 A級で利用者が最も多い荒川沿いの戸田漕艇場は七千五百万円で、埼玉県が六千五百万円を負担。ダム湖にある長沼ボート場(宮城県登米(とめ)市)は千三百万円で、宮城県が千百万円を負担する。広島と岐阜のA級コースは、ボート場として使う時だけ河川にコースを設営。広島の維持費は年二百万円程度で、岐阜は算出されていないが利用状況から多額ではないとみられる。

 海上に造る海の森は常設の場合、維持費は年三億円余で、二億円の赤字を都が負担する。維持費が膨らむ理由の一つは、潮の満ち引きで水位が上下しないよう水門で閉め切り、ポンプで水を循環させて水質を保つ特殊な構造にある。

 早稲田大の原田宗彦教授(スポーツマネジメント論)は「コンクリートは海水で劣化しやすく、ポンプの維持費も想定以上にかかると思う。どれだけ利用されるか分からず、実際に造れば見通しの甘さが露呈するのでは」と指摘。都の鈴木一幸開設準備担当部長は「根拠のあるしっかりとした見積もりで、赤字はこれ以上、膨らませない。縮減していく」と話す。

◆仮設レベル案でも高コスト

 東京都は国際オリンピック委員会(IOC)などと競技会場の見直しを協議中で、今月末に結論が出る見通しだ。ボートなどの会場は海の森の常設案(建設費328億円)と仮設レベル案(298億円)、長沼案(最大200億円)を示す。仮設レベル案は大会後も使い続ける前提で観客席などを簡素化する案だが、維持費がかかる水門やポンプは常設で造る。

 維持管理費と大規模修繕費から収入を差し引いた50年間の都の負担額は、常設案が都の試算で202億円。仮設レベル案が調査チームの見込みで最大152億円。長沼案は改修後の試算が公表されていない。

 海の森は今年7月に着工したが、今は中断している。長沼案に決まった場合、都は建設業者への損害賠償などで100億円が必要としている。

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トランプ氏「TPP離脱」 米大統領選後初の表明

11.22 15:23 東京新聞

 【ワシントン=石川智規】トランプ次期米大統領は二十一日、国民向けのビデオメッセージを発表し、来年一月二十日の就任初日にも「環太平洋連携協定(TPP)離脱を通告する」と宣言した。大統領選勝利後に離脱方針を確認したのは初めて。広域連携を目指し日本など十二カ国が署名したTPPの発効には米国の批准が不可欠で、発効は絶望的となった。

 二十日に閉幕した南米ペルーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は、トランプ氏を念頭に「あらゆる保護主義に対抗する」とした首脳宣言を採択。TPP署名各国の首脳が国内手続きを進めることで一致したばかりだった。

 トランプ氏はTPPについて「われわれの国にとって災いになり得る」と強調。「二国間での貿易交渉を進め、米国に仕事と産業を取り戻す」と訴えた。

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東京五輪の経費2兆円前後 組織委など調整、29日にも提示

11.22 15:14 東京新聞

 二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの開催経費について大会組織委員会などが総額二兆円前後とする方向で調整していることが二十二日、関係者の話で分かった。国際オリンピック委員会(IOC)、組織委、東京都、政府の四者はトップ級会合を二十九日に開催し、そこで総経費の案が示される可能性がある。

 組織委は一~三日に開催された四者の実務レベルによる作業部会で、警備、輸送、仮設会場などについて一部の試算を示したが、IOCから高額過ぎるとの指摘を受け、IOCとともに再検討を進めている。四者は二十七日にも再度作業部会を開き、費用などを議論する見通しとなっている。

 組織委はコスト削減の作業を進めている最中であることから「年内にも取りまとめを行いたい」とするコメントを発表するにとどめた。大会の総経費は招致段階の一三年に当時の招致委員会がIOCに提出した立候補ファイルでは七千三百四十億円だった。これには、都や国が負担する輸送や警備などの費用の多くは計上されておらず、施設整備費も本体工事費のみで設計などのコストは盛り込まれていなかった。

 都の調査チームは総経費が三兆円超になる可能性があるとの試算を示し、削減のためにボート、カヌー・スプリントなどの会場計画見直しを提言した。

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福島第二核燃料プール冷却一時停止 揺れで「水位低下」

11.22 15:05 東京新聞

 二十二日早朝の地震で、東京電力福島第二原発3号機の使用済み核燃料プールの冷却が一時間半にわたって停止した。東電の説明では、プールに併設されているタンクの水位計が、揺れに伴う水位変化を「水位低下」と判断。冷却ポンプが壊れるのを防ぐため、ポンプを自動的に停止させたもので、故障などのトラブルではないという。

 現在、3号機のプールには二千五百四十四体の核燃料が貯蔵されている。二〇一一年の東日本大震災発生時は稼働中だったが、緊急停止し、その後一五年三月に原子炉内にあった七百六十四体の核燃料は全てプールに移された。

 プール横には「スキマーサージタンク」と呼ばれるプールの上澄み水が流れ込むタンクが併設。この中の水を浄化し、プールに戻す仕組みになっている。このタンクの水位計で、プールの水位を監視している。

 午前六時十分、水位低下の警報が出て、冷却用の循環ポンプが自動停止。東電は漏れなど異常がないことを確認し、同七時四十七分にポンプを再起動させた。その間、プールの水温は二九・三度から二九・五度へ上がったが、東電は「いずれも機器が正常に作動した結果で、プールの水温変化もほぼ想定していた通りだった。ルール上の制限温度(六五度)までは約七日間の余裕があった」と説明している。
  (山川剛史)

地震の影響で使用済み核燃料プールの冷却装置が一時停止した東京電力福島第二原子力発電所3号機(左から2番目)=22日午前11時52分、本社ヘリ「まなづる」から

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「5年前思い出した」高台目指し夜明けの渋滞 福島沖M7.4

11.22 14:54 東京新聞

 二十二日午前五時五十九分ごろ、福島県沖を震源とするマグニチュード(M)7・4の地震があり、福島、茨城、栃木の三県で震度5弱を観測した。仙台市に一四〇センチ、福島県の東京電力福島第一、第二原発にそれぞれ一〇〇センチ、岩手県の久慈港に八〇センチの津波が到達した。その後も震度1~3の地震が続いた。各地で十人以上が負傷した。

 早朝の地震と津波発生を受け、海沿いの住民たちは続々と高台に避難し、ガソリンスタンドも車であふれた。東京電力福島第一原発の事故収束作業員を派遣する「東北エンタープライズ」(福島県いわき市)の名嘉(なか)幸照会長(75)は「五年前の地震を思い出した」と語った。

 名嘉さんは、いわき市内の自宅で、ぐらぐらと揺れて目が覚めた。長い揺れを覚悟したが、揺れは続かなかった。

 すぐに福島第一に通う社員に連絡を取ったところ、既に四人は作業現場に向かっていた。万一に備え、登録している作業員は駆けつけるルールになっているという。

 自宅は高台にある。海に近い小名浜の人たちが逃げてきて家の周りは車でいっぱいだった。近くのコンビニでは揺れでワインの瓶が倒れていた。「片付けるまで待ってください」と張り紙がしてあり、入れなかった。

 ガソリンスタンドには車の列ができた。東日本大震災の時、ガソリン供給が断たれ、避難途中で乗り捨てるしかなかった人も少なくない。名嘉さんは「港の船は沖に避難して大丈夫だったみたい。久しぶりに五年前を思い出してしまった」と話した。

 早朝から福島第一で働いていた作業員は津波の恐れもあるため、東電から午前中は免震重要棟などで待機の指示が出た。いわき市在住の作業員は原発に向かう途中だった。記者がメールで安否を尋ねると「無事です。どの道路も大渋滞になっている」と返信があった。 (片山夏子)

津波警報が発令され、避難する車で渋滞する福島県いわき市の道路=22日午前6時32分

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原発避難いじめ「氷山の一角」 大人の偏見、子に影響

11.22 13:40 東京新聞

 東京電力福島第一原発事故で福島県から自主避難した子どもが横浜市立小学校で数年間にわたり、いじめを受けていた問題が波紋を広げている。東京都内に自主避難する複数の母親が本紙の取材に応じ、子どもがいじめに遭った経験を打ち明けた。避難者団体にも同様な訴えがあり、親たちからは「横浜の問題は氷山の一角」との声も聞かれる。 (中山高志)

 二〇一四年夏ごろ、福島県いわき市から一家で自主避難した女性(46)は、当時小学生だった長男の胸元に、同級生に蹴られたという靴跡を見つけた。訳を聞くと長男は「『東京にただで住んでいるのか』って言われるのツラいよね」とつぶやいた。

 住居は、原発事故の避難者を対象に、福島県が家賃を負担している「みなし仮設住宅」。放射能への不安から、仕事などこれまでの生活を断ち切り避難した一家にとって、無償の住宅は命綱に等しい。理不尽さを感じつつ、女性にできたのは、息子を抱き締めてやることだけだった。

 横浜市のケースでも、「賠償をもらっているだろう」と同級生からゲームで遊ぶお金を負担させられた。「賠償や自主避難の意味が、大人にも子どもにも分かってもらえていない」。女性は悲痛な表情で語る。

 いわき市から自主避難した別の一家は、小学生の長女、長男が感情的に不安定になったため、いったん転入させた小学校から学区外の学校に転校させた。

 四十代の母親が長女から「ママ、学校を代えてくれてありがとう」といじめ被害を打ち明けられたのは、転校から数年後だった。「○○ちゃんって、中学生になれば死ぬんじゃない」「放射能を浴びたから長くは生きられない」などの陰口を言われていたという。中学生になった長女は最近、母親の財布から現金を持ち出した。同級生から「避難者でお金に困っている」と思われたくなくて、友人にお菓子などを配っていたという。

 長男は実際、前の学校で「貧乏人だから帽子を取った」と同級生から言い掛かりをつけられた。

 各地の避難者らでつくる「ひなん生活をまもる会」が、横浜のいじめが発覚した後の十六日、メールを通じいじめ被害について会員に尋ねたところ「いじめと縁を切るため転校したいと言っている」「金を取られた」などの訴えが、五件寄せられている。代表の鴨下祐也さん(48)は「周囲が傍観者にならず支えてほしい」と訴える。

◆正しい認識持って

 避難した子どもの心のケアをしている福島大の本多環(ほんだたまき)特任教授(教育学)の話 福島から避難した子どもがいじめられる例は全国的にあり、過去には「おまえが給食当番をやると放射能が入る」と言われたなどの相談があった。いじめが起きるのは、放射能について大人が正しい認識を持っていないから。大人が持つ偏見が、子どもにも影響している。福島の子だからといって特別な配慮は必要ないが、学校などでは差別的言動をその都度注意し、困っている子に手を差し伸べることが大切だと思う。

長男がいじめられた経験について話す母親

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<ストップ プール事故> 文科相「飛び込み禁止検討」

11.22 13:18 東京新聞

 水深の浅い学校プールに子どもが飛び込んで首などを骨折する重傷事故が相次いでいる問題で、十六日に開かれた衆院文部科学委員会で松野博一文科相が、高校の授業での飛び込み禁止を検討する姿勢を示した=写真。事故が起きれば学校側は損害賠償や刑事責任を負う可能性があり、法律の専門家も「授業での飛び込み指導を見直す時期に来ている」と指摘する。 (細川暁子)

 文科委員会で松野文科相は、七月に都立高で高三男子が授業中に水深一・一メートルのプールに飛び込んで底に頭を打ち首を骨折した事故について「大変、遺憾」と言及。事故はデッキブラシを掲げた教師が、それを飛び越えるよう生徒に指示して起きたことをふまえ、「今回の不適切な指導事案を取り上げるなど、事故防止のポイントを分かりやすく示して注意喚起する」と述べた。

 また「学習指導要領を改定して、高校の授業で飛び込みを禁止することについてはいかがか」と質問した初鹿明博議員(民進党)に対して、松野文科相は「高校の学習指導要領改定については現在検討が進められている。水泳指導における飛び込みの取り扱いについては実施状況を教育委員会から聴取し、水泳指導の有識者の意見を交えた上で検討する」と答弁。高校授業での飛び込み禁止を検討する姿勢を示した。

 水深が浅い学校プールの飛び込み事故は全国で多発しており、名古屋大の内田良准教授(教育社会学)の調べでは一九八三~二〇一四年度の三十二年間で障害が残る事案は百七十二件発生。そのうち三十一件が高校の授業中に起きた。

 一九九九年には、都立高校で高一男子が水面からの高さが約四十センチのスタート台から、水深一・二メートルのプールに飛び込み、頭を打って死亡。男子生徒の身長は約一八〇センチで、体重は約九〇キロもあった。

 男子生徒の両親はプールの安全性の不備と教員の指導不足が原因だったとして、都を相手に一億円の損害賠償を請求。裁判所は、学校側には生徒に事前に危険性を説明する義務があったなどとして、都に約四千四百万円の賠償を命じた。

 この裁判を担当した虎ノ門協同法律事務所(東京都港区)の望月浩一郎弁護士は「スイミングクラブと異なり、学校では水泳指導に関して専門教育を受けていない教員が多い」と指摘。「水深の浅い学校プールを使った授業で安全な飛び込み練習を求めることは、教師にも生徒にも無理を強いることでしかない」と話す。

 文科省はホームページでも公表している「水泳指導の手引」で、危険な飛び込み例=イラスト参照=を示すなど、これまでも注意喚起を促してきた。だが子どもが犠牲になる事故は、毎年数件起き続けている。

 学校事故に詳しい法律事務所アルシエン(千代田区)の高島惇弁護士によると、公立学校で事故が起きた場合は国家賠償法が適用されるため教師は賠償責任を負わない。裁判になったときに被告となって賠償金を支払うのは自治体だ。一方で、私立校の場合は教師と学校が賠償責任を負うことになる。

 「公立私立を問わず教師の指導や監督がずさんで事故が起きた場合は、刑事告訴される可能性もある。教師がそこまでのリスクを負って高校の授業で飛び込み指導をする必要があるのか、見直す時期に来ているのではないか」と指摘する。

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寅さんが愛した味覚ずらり 柴又で26、27日「サミット」

11.22 12:53 東京新聞

 人気映画シリーズ「男はつらいよ」のロケ地が集まる「寅(とら)さんサミット」が、東京都葛飾区柴又で二十六日から二日間の日程で開かれる。昨年に続き二度目となる今年は、岐阜県の下呂市や中津川市など四市が新たに加わり、計十七地域が参加する。シンポジウムや物産展で「寅さんが旅したまち」の魅力をアピールする。 (大平樹)

 山田洋次監督の「男はつらいよ」は、主人公の車寅次郎が旅先で騒動を巻き起こしては、故郷の柴又に舞い戻るというのがおきまりのストーリー。サミットは「日本の原風景を守り、後世に伝える」をテーマに、人情味あふれる寅さんのイメージをまちおこしにつなげていこうと企画された。

 メイン会場の柴又帝釈天では二十六日正午から、山田監督の別作品に出演した演歌歌手徳永ゆうきさんをゲストに招き「風景を彩るまちの音」と題したシンポジウムがある。風景写真展などの会場にもなる。

 境内の鳳翔会館では、二十六日午後一時から四十五作目「寅次郎の青春」を、二十七日午後一時から三十五作目「寅次郎恋愛塾」をそれぞれ上映。二十六日は俳優・タレントの山口良一さん、二十七日は寅次郎の妹さくら役を務めた倍賞千恵子さんのトークショーがある。

 柴又駅と帝釈天をつなぐ参道では地元の団子店や和食店が、参加する地域の特産品を使ったメニューを限定販売する。長野県小諸市のリンゴや茨城県つくば市のブルーベリーを使った団子、長崎県有明産ののりを使った天ぷらなどを、サミットに合わせて開発した新メニューだ。寅次郎の角張った顔を模したトンカツやせんべい、寅次郎を演じた渥美清さんが好んだサトイモの煮物など「寅さんメニュー」も用意する。

 帝釈天近くの「葛飾柴又寅さん記念館」では、寅次郎ら作中の人物に仮装した来場者に、特製缶バッジを贈る。仮装は、帽子やかばんなど一部でも人物にちなんだ物を身に着けていれば可。各日先着百人。

 問い合わせは、葛飾区観光課=電03(3838)5558=へ。
     ◇
 【寅さんサミットの参加地域】秋田県鹿角市▽茨城県常総市▽同県つくば市▽群馬県中之条町▽千葉県松戸市▽東京都新島村▽長野県小諸市▽岐阜県中津川市▽同県下呂市▽滋賀県長浜市▽奈良県斑鳩町▽兵庫県たつの市▽岡山県津山市▽佐賀県小城市▽宮崎県日南市▽オーストリア・ウィーン市▽東京都葛飾区

昨年の「寅さんサミット」。柴又帝釈天前でイベントを盛り上げるそっくりさん=東京都葛飾区で(2015年11月撮影)

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養子縁組、ネットで紹介 年収や職業情報から実親が選択

11.22 12:38 東京新聞

 特別養子縁組のあっせんを手がける大阪市のNPO法人が、インターネットのサイト上に養親希望者の年収や職業を掲載し、その情報を見た実の親が子どもを託す相手を選ぶ会員制の紹介システムの運用を始めたことが二十一日、分かった。NPO側は、仲介手続きを簡略化し養子縁組の件数を増やすと説明。だが専門家は、養親希望者との面談をせずにサイトで紹介する点を問題視し「育児能力の見極めが不十分」などと指摘している。

 NPO法人は「インターネット赤ちゃんポスト」というサイトを運営する「全国おやこ福祉支援センター」(阪口源太代表理事)。二〇一四年に特別養子縁組のあっせん事業を始め、大阪市に第二種社会福祉事業として届け出ている。今年十月、「赤ちゃんマッチング コウノトリ」と題した会員制サイトを新たに開設した。

 養親になりたいと希望する人は月額三千円を払えば誰でも会員登録できる。その際、センター側が面談などにより審査することはないという。サイトでは実名は伏せて年齢や職業、居住地、年収、資産を公開。センターはこれらの情報を基にランク付けして紹介する。

 実親については妊娠中から会員登録を受け付け、センターが出産予定日や赤ちゃんの性別を確認。サイトを見た実親が養親を選び、センター側が推薦することもある。その後、センターが養親側と面談し、問題がないと判断すれば妊娠段階でもあっせん契約をする。

 現在、養親希望者の会員は約百人で実親は十数人。阪口代表は取材に「養親希望者をランク付けすれば実親が選びやすくなる。対面して人格などを判断する仕組みをあえて壊し、物流のようにシステム化したいと考えた」と話す。センターが一四年以降にあっせんしたのは約三十件だが「このサイトで年三千件の成立を目指す」としている。

 一方、別のあっせん団体などは「収入や職業の情報で育児の適性を判断できるのか」と批判。東京の民間四事業者でつくる「日本こども縁組協会」は「養親希望者には複数回面談し、養子を望む理由や育てる覚悟を慎重に見極めて、子どもにとってベストな判断をすることが重要。効率性の追求は危険だ」としている。実親側の安易な決断を危惧する声もある。

◆育児能力の判断に疑問も

 全国養子縁組団体協議会の白井千晶代表理事(静岡大教授)の話 特別養子縁組は自己決定ができない乳幼児の命に関するやりとりであり、単に生みの親と養親の希望が合致すればいいわけではない。社会福祉の観点から慎重な判断が必要で、インターネット上のマッチングシステムで生みの親の状況や養親の育児能力を十分に判断できるか疑問だ。

 そもそも現状は、生みの親の同意プロセスや養親選びの明確な規定がなく、各事業者の判断基準に任せられてしまっている。常識的には仲介者は双方と面談を重ねることが必要で、社会福祉士ら複数の人で協議したり、自治体への養育里親登録を義務化したりしている団体もある。不適切な事業者の参入を防ぐ根本的な規定とモデル作りが必要だ。

<特別養子縁組> 原則として6歳未満の子どもを養父母と縁組する制度。実親との法的関係が残る普通養子縁組とは異なり、戸籍上も養父母の実子と同じ扱いになる。望まない妊娠など実親が育てられない事情があり、家庭裁判所が必要と認めれば、6カ月以上の試験養育期間を経て成立する。全国の児童相談所のほか、都道府県などに、第2種社会福祉事業の届け出をした民間団体があっせん事業を営んでいる。営利目的でのあっせんは禁止されている。厚生労働省によると、2015年の成立件数は544件。

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