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ノーサンバーランド伯爵夫人はイタリアへ旅行したとき、メディチ家の植物園に強く興味を惹かれた。そして、かつてのイタリアの支配者と同じく、公爵夫人もアニックの城に世界から集めた100種以上もの毒草が生える庭園「ポイズンガーデン」を作ろうと決めた。
そこに生える毒草の多さには驚くことだろう。動物界の存在とは異なり、植物は危険が迫っても逃げることができない。棘を生やす種やスパイシーな種、そして紛れもなく致死的な種が存在するのそういったわけだ。ここでは世界でも最も危険と言われている10種の植物を見ていくことにしよう。
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10. タバコ
何も嫌煙キャンペーンを行おうというのではない。だが、このタバコの全体(特に葉)には、アナバシンとニコチンアルカロイドが含まれている。
筋肉繊維を刺激する天然の分子であるアセチルコリンの効果を真似するニコチンは、主に自律神経系に作用する。50mgも口にすれば、呼吸器不全や進行麻痺を起こす。それより少ない量でも動悸、高血圧、悪心、めまいなどを引き起こす。
紙タバコ1本にはおよそ3mgのニコチンが含まれるが、これは快感受容体を”くすぐる”ために、非常に依存性が高く、禁煙しようとしても禁断症状が現れる。
液状のニコチンは油のような見た目で、スプーン1杯分でも成人の命を奪うことができる。皮膚に付着するだけでもめまい、血圧上昇、発作といった症状を引き起こす。なお、液体ニコチンは電子タバコや殺虫剤に含まれているものである。
9. ベラドンナ
悪魔のベリーとの別名があるベラドンナは、南/中央ヨーロッパ、北アフリカ、西アジアに自生するが、ヨーロッパ人の入植によってアメリカ大陸にも持ち込まれている。トマト、ジャガイモ、ナス、唐辛子、タバコなどが属するナス科の植物である。東半球に自生する毒草の中でも最大量のトロパンアルカロイドを含む。
トロパン抽出物には薬効があり、様々な治療に利用されているほか、大昔には手術の際の麻酔としても用いられた。理論上は3、4個の実で精神活性媚薬として作用する。しかし季節や成長の段階に応じてベラドンナの各部位の毒性は異なるうえに、そうした作用は個人の健康や体調にもよるので、誤って致死量を服用してしまうリスクは非常に大きい。美味しそうにも見えるので、子供が口にしてしまう危険もある。
ベラドンナという名は、イタリア語で”美しい女性”を意味する。これは、中世において女性が瞳を拡大させて綺麗に見せるための散瞳剤として利用していたことに由来する。学名をアトロパ・ベラドンナというが、これは命の糸を切るハサミを持つ、運命の三女神アトロポスにちなむ。古代ローマでは鏃に塗る毒としても利用された。
8. ドクゼリ
こちらも北部の温暖な地域に広く自生する。ソクラテスは一時期覇権を握ったスパルタに通じていたとして死刑を言い渡されるが、このとき飲んだ毒がドクゼリであると言われている。
ニンジン、セロリ、コリアンダーといったセリ科の仲間の一部と同じく、沼地や淡水の湖の付近など湿度の高い土地で育つ。そこに含まれるシクトキンは中枢神経系に直接作用し、ひどい痙攣を起こす。ごく少量でも危険である。
6、7月頃になると一斉に花を咲かせるため、よく目立つ。花の形は、小さく、白い、傘のような花が房状に密集したものだ。最も毒が含まれているのは根の部分で、牛が誤って食べて死ぬこともある。ドクゼリを食べると、6時間〜15分で強直性の痙攣、頻脈、呼吸困難などを引き起こし、死に至る場合もある。
7. トウアズキ
インドネシア原産種であるが、他の地域でも見られる。明るい赤と黒の種で知られ、マラカスなどの楽器や装飾品としても利用される。
英名をロウザリー・ピーというが、これは種を紐で繋いで、ロザリオ風ネックレスが作られることに由来する。宗教的な目的で利用されるため、世界各地に運ばれ、ベリーズ、ハワイ、ポリネシア、フロリダなどの温暖地域や熱帯地域では外来種として広まっている。
種子にはアブリンという猛毒が含まれる。これは他の毒草に含まれるリシンの75〜100倍の毒性を示し、たった3mgで人を殺すことができる。
幸いにも種子は堅い殻に覆われているため、飲んでしまったからといって必ずしも大変なことになるわけではない。しかし、殻を割ってしまえばたちまち牙を剥く。トウアズキでロザリオを作っていた人が、針で指を刺してしまい、命を落としたという事故も起きている。
6. キョウチクトウ
古代ローマの時代から愛でられてきた美しい花を咲かせるが、猛毒を持つ植物である。原産はアジアとされるが、ポルトガルから中国南部、アラビア半島、サハラまで各地に広まっているため確かなことは分からない。亜熱帯/熱帯地域に多く植えられており、北アメリカでも装飾樹として人気だ。
2〜6メートルに成長し、花は房状に咲く。万が一口にしてしまった場合、ほぼ即座に心臓や胃腸の症状を感じるが、特に危険なのは、出血性下痢、嘔吐、流涎、視力低下、悪心、失神、不整脈、そして死である。
強心配糖体、ネリイン、オレアンドリンはいずれも致死作用を高めており、口にしてしまった場合は速やかな医療的処置が必要となる。どの部位にも毒が含まれており、枝を薪にして料理をしようとした者が、煙を吸って中毒症状を起こしたという報告もある。
5. キダチチョウセンアサガオ属
南アメリカ原産で、野生種は7種どれもが絶滅危惧種に指定されている。一方、地域によっては外来種にも指定されている。
どの部位にも毒が含まれるが、特に種子と葉に多い。スコポラミンやヒヨスチアミンなどのトロパンアルカロイドが豊富で、食べると平滑筋の麻痺、混乱、頻脈、口渇、下痢、偏頭痛、幻覚、幻聴、毛様体筋麻痺、死を引き起こす。
なお上記のアルカロイドには医療的な利用価値がある。また先住民は伝統的な儀式等で利用している。王が死んだ際、コーンビールやタバコなどと混ぜたものを妻や奴隷に飲ませ、生き埋めにするのだ。
また、”世界最恐のドラッグ”という意見もある。粉末状のスコポラミンは人の記憶形成や自由意志を阻害する効果があり、極端なまでに周囲の影響を受けやすくしてしまう。つまりゾンビにしてしまうということだ。
4. トリカブト
別名“クイーン・オブ・オール・ポイズンズ(全毒の女王)”の名は伊達ではない。他にも”ウルフズ・ベイン(狼の毒)”、”ウィメンズ・ベイン(女の毒)”、”デビルズ・ヘルメット(悪魔の兜)”など様々な呼称がある。北アメリカ、ヨーロッパ、アジアの一部の湿気のある山岳地帯に自生し、数多くある呼び名はその毒に言及したものがほとんどだ。
1.8メートルほどに成長し、その全体に毒を有する。アコニチンは20〜40ミリリットルで平均な成人を2〜6時間で死に至らしめる。
中毒の初期症状は悪心、嘔吐、下痢などだ。次にしびれ、灼熱感、ヒリヒリ感が始まり、すぐさま運動麻痺や心室性不整脈が現れる。その後、よく知られる心臓麻痺と呼吸麻痺に至る。葉に触れるだけでも、皮膚から毒が吸収されるので注意が必要である。
アラスカやギリシャ、日本に至るまで、古来から世界中で狩や戦争に利用されてきた。例えば、アラスカではアレウト族が槍に毒を塗り、クジラやアザラシの狩猟を行なった。ヨーロッパでは最も危険な植物だと考えられている。
3. マルバフジバカマ
北アメリカ東部や中央部の原産種。高さ1.5メートルほどに成長し、通常は森林地帯を好む。ただし適応能力は高く、開けた土地の影になっている場所などでも見ることができる。夏の中頃から秋口にかけて白い房状の花を咲かせる。種子には風に乗って運ばれるように綿毛が付いている。
毒はトレメトールであり、これを牛などが口にすると肉や牛乳が汚染されることがある。汚染された食品を食べた人間も中毒症状を起こす。
19世紀、アメリカ大陸に大量に入植したヨーロッパ人はマルバフジバカマのことを知らず、大勢が命を落とした。やがて、この謎の症状は当時の人から”牛乳病”と呼ばれるようになる。
エイブラハム・リンカーンの母親も1818年に牛乳病で亡くなったと言われている。真犯人が判明したのは1830年代になってのことで、ショーニー族の女性から話を聞いた植物学者によって明らかにされた。
2. マンチニール
中米、南米からカリブ地域にかけて自生する。世界で最も危険な木と考えられており、通行人がうっかり触らないよう警告が掲げられている木もある。
軽く擦れるだけでも酷い火傷のような症状が起きる。また雨の日に雨宿りするのも危険だ。樹液を含んだ雨が皮膚に触れれば、水ぶくれを起こす。さらに燃やすのも危険あり、煙によって失明したり、呼吸困難を起こしたりもする。
最も毒が含まれているのは果実の部分だ。スペイン語で”死の小林檎”を意味し、これを口にすればほぼ間違いなく命を落とすことになる。
カリブの先住民は、樹液を井戸に垂らしたり、毒矢に用いたり、人間を幹に縛り付けて苦しませた末に殺すということを行なっていた。スペインのコンキスタドール、フアン・ポンセ・デ・レオンは1521年にこの毒で殺されたらしい。
1. セルベラ・オドラム
ランキングトップを飾るのは、自殺の木という呼び名のあるセルベラ・オドラムだ。インド原産。キョウチクトウの近種であり、毒の作用も似ている。
実際、自殺に使われており、インド、ケーララ州では毎年50人もの人間がこれによって自殺を図っているという。だが自殺に有効なら、他殺にも有効だろう。その毒は種子にあり、これを砕いて誰かの食べ物にでも入れようものなら・・・
その毒のセルベリンは毒の専門家ですらなかなか検出できないという。セルベリンを検出するには、高度な液体クロマトグラフィーと質量分析の技術が必要になる。
しかし、これはインドにおいては解析にコストがかかる。そのためセルベリンによる中毒死のほとんどのケースが、原因を特定されることなく見過ごされているようだ。それでもケーララ州では毎週1人は犠牲者が出ているというのだから、実際の数は相当に多いのだろう。
マダガスカルでは、19世紀中頃まで魔女の疑いがある者にセルベラ・オドラムの種子を飲ませるという裁判が行われていた。
ごくわずかな生還者は無実とみなされたが、ほとんどは……死んでいる。この裁判は1861年にラダマ2世王によって禁じられた。推定によれば、これによって毎年、島の全人口の2パーセントが殺されたらしい。マダガスカルの僻地では、現在でもこの裁判が行われているという噂もある。
via:10 Plants That Want to Straight Up Kill You (And Can)/ translated hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
7の画像が虫に見えた。つーか、今でも虫に見える。まさか、虫?
2. 匿名処理班
綺麗な花にはってやつ
3. 匿名処理班
やっべえぞ
4. 匿名処理班
ゲルセミウム・エレガンスは?
5. 匿名処理班
イギリスの貴族で今も夫人が、この植物園を維持管理してるんですよね
6. 匿名処理班
ハイキングの時に箸を忘れる→そこらへんの枝を折って箸の代わりにしよう→夾竹桃でした→中毒って事故が実際ありました。
7. 匿名処理班
現代だとトウモロコシや大豆がサイレントキラーかもね
食品だとファーストフードなどの外食に始まり、家庭だと
朝食から夕食、間食まで知らない間に食べてる
産業でも印刷や自動車の燃料、牛や家畜の飼料にも
重要な役割演じてる必要不可欠素材
8. 匿名処理班
創作物ではお馴染みのトウゴマさんは載ってないのか。
9. 匿名処理班
ギンピ・ギンピが無い…だと…
10. 匿名処理班
結構地味な花が多いよねえ
赤い実とかベラドンナとか、下手したら食べてしまうわ
11. 匿名処理班
スコポラミンはアメリカのドラマで何度か見たな
相手の顔に粉を吹きかけるだけで効果があるとか何とか
12. 匿名処理班
タバコの危険性はよくよく理解しているつもりだけどやめられない
病気かな
13. 匿名処理班
料理の飾りにアジサイを使って中毒なんて事故もありました
14. 匿名処理班
キートン思い出した
15. 匿名処理班
葉っぱで尻拭いた人が自殺したって奴なんて名前だっけ
16. 匿名処理班
スコポラミンといえばKGBが自白剤に使ってたヤツですね。
テラフォーマーズでもチョウセンアサガオベースはロシアチーム。