今回の米国大統領選後、米国マーケットでのドル高株高の流れを受けて、世界的に「トランプラリー」が続いている。
開票中、トランプ候補の優勢が伝えられる中、「トランプリスク」に敏感に反応した東京市場では、急激な円高株安が進行したが、その後、世界の主要マーケットでは株価の上昇が始まった。
誰もが、クリントン女史の当選を信じて疑わなかった状況で、全く予想外のトランプ氏勝利の報を受け、多くの投資家が米国、もしくは世界経済の先行きに懸念を抱いたことは想像に難くない。
だが、このような局面で、著名投資家のスタンレー・ドラッケンミラー氏は、開票が進む中、トランプ当選を確信し、保有していた金を全額売却し、同時に、ドルのポジションをロング(買い)に、債券のポジションをショート(売り)にしたといわれている。
ドラッケンミラー氏は「ヘッジファンドの帝王」の異名を持つジョージ・ソロスの「弟子筋」といってよい人物だが、「親分」にあたるソロス氏が、「Brexit(イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票)」の際に、ドイツ銀行の株を大量に売り建てたという投資行動同様、並みの投資家とは全く異なる発想で、いち早く投資ポジションを転換させ、現在の流れに乗ったことは尊敬に値する。
多くの投資家は、圧倒的大多数のリベラル系メディアのトランプ氏に対するネガティブキャンペーンにもとづいた誤った情報に踊らされていたが、彼はそのような情報に惑わされず、冷静な判断をしたということだろう。
マーケットはこうした情報がどこからともなく伝わるものなので、そういうごく一部の優れた投資家の行動に追随する動きが徐々に広まっていき、いつのまにか「トランプラリー」の流れが定着していったのではなかろうかと筆者は想像する。
ところで、筆者は、トランプ氏とクリントン氏の経済政策のメニューを見比べた際、トランプ氏の経済政策を選択した方が、米国経済の「長期停滞」を抜け出す可能性が高いと考え、当コラムでも、トランプ氏の経済政策は当時メディアで伝えられたようなネガティブなものではない点を指摘した。
参照)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49775
当コラムが掲載された段階では、それほど注目されていなかったようにも思えるし、誰も信じていなかったように思うが、トランプ当選後、他の識者からも「トランプ氏の経済政策はレーガノミクス(レーガン大統領の経済政策)に似ている」という意見が多く聞かれるようになった。
だが、「過ぎたるは及ばざるが如し」ではないが、最近のマーケットはやや行き過ぎた感が否めない。時間軸を無視して、トランプ大統領の経済政策が額面通りに実行され、それが成功した局面を急速に織り込みに行っているように思えて仕方がない。
さらにいえば、トランプ大統領の経済政策を誤った認識で過大評価している「ふし」がある。
確かに筆者は、当コラムで、トランプ大統領(当時は候補)の経済政策は、「レーガノミクス」と類似点が多いと指摘した。これは、トランプ大統領が、家計、企業に対する大型減税と公共投資の拡大等の財政支出拡大を経済政策の主軸においた点であった。
筆者がこの「トランプノミクス」を「レーガノミクス」になぞらえたのは、これらの財政政策が、典型的な「オールドケインジアン」的な需要拡大効果をもたらし、これによって、現在、実質で平均2%程度の経済成長率をリーマンショック前までの3%弱の水準まで引き上げる可能性があると考えたからであった。