言いにくいことを伝える「とっておきの一言」
自分の気持ちをうまく伝えられずに、苦い経験をしたことがありませんか? それが相手の間違いを指摘したり、頼み事や断ることならば、「伝えたいがどうしよう?」と、あなたの心は右往左往しているかもしれません。
積極的で行動力もあるという方でも、「こんなことを口にしたら、嫌われるかもしれない」「上司の間違いを指摘したら、あとが怖い」などと考えがちです。
ですが、気持ちを言葉にするのは自然なこと。それが相手にとって好ましくない情報であっても、伝えなければ後に大きなトラブルが生じることもあります。
まずは、伝えたいという心をおさえこむ必要はないと捉えましょう。そうでないと、喜びや楽しさなどの「プラスの気持ち」もうまく伝えられなくなります。
「喜怒哀楽」の感情がない人の話ほど、退屈なものはありません。そうなれば、あなたの話に耳を傾けてくれる人はいなくなります。感情は、素直に出していいのです。
ただし、誤解を生じさせない話し方やトラブルが起きてしまったときに、的確に対処する方法を知っておくこと。そんなあなたならば、誰とも円満な人間関係が構築できます。
人間関係の「消化不良」を起こさないために
頼みごとをする、反論やクレームを伝える、誘いを断るなど。自分から相手に切り出すのは、苦手な方が多いものです。そして、言いにくいことを伝えようとすると、「え~と、あの……」「実は、その……」「どうしようかな?」などと、誰しも前置きが長くなりなかなか本題に触れませんから、相手はイラついてきます。
その様を目にすれば、ますます口ごもり「やめておきます」「後にします」などと、発言を控えてしまう。こういう状況は人間関係の「消化不良」。あなただけでなく相手にとっても、気持ちが悪い以外の何物でもありません。
言いにくいことも、切り出しのひと言を知っておけば大丈夫。問題なく、本題を伝えられます。ここで私が日ごろ活用している言いにくいことを伝える時の「切り出しのひと言」を紹介します。
言いにくいことを伝える時の「切り出しの一言」
1.たいへん申しあげにくいのですが
自分から相手の間違いや勘違い、クレームなどを切り出すときに使います。このひと言には、「今伝えなくては問題が生じかねない」「だから伝えるのです」というニュアンスが、あります。
それに「たいへん申しあげにくいのですが」と切り出せば、相手は真剣に聞く姿勢になりますから、後に続く本題を誤って解釈することもなくなります。
2.失礼かとは思いますが
さりげなく相手をフォローするひと言です。また「出過ぎたまねとは思いますが」というフレーズもよいでしょう。
一方、「あなたのためなのだから」とか「心配しているのだから」と切り出せば、恩着せがましさに嫌気がさしてきます。こういうたぐいの言葉は、上から目線の印象を拭えない「レッドカード」です。言いにくいことを伝える時には、相手の立場を尊重することが欠かせません。
3.私の勘違いかもしれませんが
明らかに相手が間違った言動をしていたとしても、ストレートに「それは違う」「おかしい」と言われたら、気分を害するでしょう。そこは一歩退いて、「私の勘違いかもしれませんが」と切り出してから、「○○ではなくて△△ではないでしょうか?」あるいは「○○ではないように、聞いていますが?」とお伺いをたてます。
「私の勘違いかもしれませんが」というフレーズには、さりげないですが反論のニュアンスがあります。相手は冷静に考えることができ、面目も保てますから人間関係に問題が生じることもありません。
断る時は相手を自分だと思ってこの一言を使おう
1.よく考えさせていただいたのですが
断る際の基本は、「引き延ばし作戦」をしないことですが、その場で断るのは気が引けたり、仕事の案件ならば上司の決裁も必要でしょう。保留することもあります。
そういう場合は、次にお会いしたり電話で答えを伝える際に世間話などしないで、「(先日の件ですが)よく考えさせていただいたのですが」と、切り出してから断る理由を示しましょう。その際、「時間がない」や「忙しいから」は断る理由にはなりません。誰もが時間に追われ仕事に追われているのですから。
同じ意味でも、「スケジュールの調整がどうしてもできない」「きちんとした仕事をしたいので(今回は遠慮したい)」と伝えれば、相手は納得します。
2.ほかのことでしたら、お役に立てると思いますが
自分にとって負担が大きい、相手の期待に応える自信がないというような依頼を断るときに使うとよいでしょう。断りながらも、相手への気遣いが示せるフレーズです。
ただし、相手から「それならば、何ができますか?」と質問を受けることを想定して、答えを用意しておきましょう。
たとえば、講演会の司会を頼まれて断ったのならば、受付を手伝う。プロジェクトの立ち上げの出資を頼まれて断ったのならば、発足後に何かを手伝う。そんな腹積もりでいればいいでしょう。決して自分から申し出ないのが鉄則です。
3.お役に立てず残念ですが
本当に残念な表情で口にしましょう。相手の思いを大切にしながら断るフレーズですから、思いが表情からも伝わらなくては、社交辞令になってしまいます。
トラブルには話し合いにつながる「一言」を伝えよう
1.ご指摘いただかなければ気づきませんでした
悪気はないのに、人を不快にさせたり、間違った行動をしてしまうことはあります。相手から指摘されたら、たとえきつい物言いであっても、「ご指摘いただかなければ気づきませんでした」と謙虚に伝えましょう。人間関係を保つためには、怒っている相手のペースにはまらないことです。
2.教えていただきありがとうございます
誰しも人に意見や忠告をするのは、嫌なものです。それをきちんと教えてくれたのですから、「教えていただきありがとうございます」と伝えましょう。まずは、受け止めることが大切です。そうはいっても、言い分がある場合には、「ただ、私としてはこう思うのですが」というように伝えるとよいです。
3.言い過ぎました、ごめんなさい
仲直りしたい、関係を修復したいという気持ちがこもった一言です。こう伝えられたら、相手の怒りも収まります。「こちらこそ、ごめんなさい」と、返ってくるはずです。
「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は11月30日の予定です。
[2016年11月8日公開のBizCOLLEGEの記事を再構成]
臼井 由妃(うすい・ゆき)
1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。
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