大統領を弾劾することは国会議員に与えられた権限の中で最も厳粛なものだ。共に民主党、国民の党、正義党など野党各党は朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の弾劾を目指すことで一致したが、この決定の重要性について本当に理解しているのか疑わしくなってきた。まず野党3党は22日中に直接協議を行い、今の弾劾政局を今後どう進めていくか話し合うべきだったが、協議は実現しなかった。理由は各党の代表が会うのか、あるいは事務総長が会うのかという協議のレベルで一致しなかったからだ。しかも共に民主党と国民の党は「根拠のない話で相手の党を侮辱している」「文在寅(ムン・ジェイン)氏はすぐにでも政権が取れると錯覚しているのか」などと相手に対する非難まで始めた。野党各党が完全に認識を一つにしても乗り切るのが難しい今の状況で、相も変わらずまたも対立を始めたのだ。
弾劾後に大統領の代行を務めるのは「責任首相」だが、野党各党はこれに誰を指名するかについても一致していない。国民の党は大統領弾劾が成立した場合に備え、大統領の職務を代行する責任首相をまず決めることを提案した。ところが民主党は「首相推薦問題を理由に弾劾案提出を先送りすべきでない」との理由でこれに反対した。野党が合意して首相を推薦した場合でも、朴大統領がこれを受け入れるかどうかさえ現時点では分からないが、野党はそれ以前の段階でもめているのだ。一方で文在寅・共に民主党前代表は「朴大統領が協力すれば、名誉ある退陣を保証する」などと的外れなことを言い出した。文氏にはこのようなことを言う権限も資格もなく、単に混乱を深める結果しかもたらしていない。
要するに野党3党は弾劾手続きを進めることでいったんは合意したが、その後の協議を全く進められないため、今の混乱を大きくする結果を自らもたらしているのだ。各党間の大統領選挙を意識した主導権争い、神経戦、プライドばかりを前面に出した対立は一向に収まる気配が見えない。その結果、国会による弾劾訴追案の採決が12月中に行われなくなる可能性もささやかれ始めた。
大韓民国は今、経済危機に加えて安全保障でも大きな不安を抱えているにもかかわらず、米国では経済政策と安全保障政策を一層不確実なものとする政権交代が現在進行中だ。今の国政の空白を一日も早く終わらせるには、まず野党各党が協議を行い、国会で首相を推薦するかどうかを最初に決め、次に国会で弾劾訴追案の採決を行う時期と、それに向けたスケジュールを提示しなければならない。これだけでも今の混乱は多くの部分で収拾できるはずだ。
それにはまず国会で121議席を持つ最大野党・共に民主党がリーダシップを発揮すべきだが、現状ではそれができていない。あらゆる問題を次の大統領選挙で有利になるか不利になるかを基準に考え、キャンドル集会と支持者の顔色ばかりうかがっているからだ。このように国政の収拾を自ら妨害することで、結果として今の行き詰まり状態を自分から招いた。国民は朴大統領への怒りを隠さないが、一方で野党の無能、無責任な行動にも注目しているのだ。