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学力足りても学費足りず…進学悩む子供たち

日本テレビ系(NNN) 11/23(水) 19:05配信

 返済の必要がない「給付型奨学金」。これまで国の制度がなかったが、与党は「月3万円を基準」として来年度から一部先行して導入することで一致した。背景にあるのは、経済的理由で進学に悩む学生たちの存在。その現状を取材した。


■学力は足りても、学費が足りず

 東京・八王子市の貸し会議室の一室で行われていた「つばめ塾」。経済的に苦しい子どもたちの学習を支援する「無料塾」だ。英語を教えてもらっているのは、高校1年生の女子生徒。父親がうつ病にかかって仕事を辞め、現在はその障害年金などで生活しているという。高校はより学費の安い学校を選んだという。大学進学を希望しているが、学費のために諦めることになるのは耐えられないと不安を感じている。


■「返済不要の奨学金」国が制度化

 こうした子どもたちの支えになるのが「給付型奨学金」だ。「給付型奨学金」とは、返済義務がある「貸与型」とは異なる、返済を必要としない奨学金のこと。しかし、現状では成績要件などのハードルが高い民間によるものしかなく、国の制度はない。

 今年9月、安倍首相は、国による「給付型奨学金」の実現を明言。そして、22日、自民・公明両党は、給付金額を「月3万円を基準」とすることなどで合意した。本格的な実施は再来年4月の新入生を対象としているが、経済状況が特に厳しい学生については、来年度から一部先行して給付を開始するという。


■父が自殺、母から虐待―

 都内で一人暮らしをしている、大学4年生の久波さん(23)。学費の全てを民間からの「給付型奨学金」でまかなっている。金額は、民間企業やNGOなど6つの団体から4年間で約250万円。奨学金を受けるようになった理由は―

 久波さん「小学2年生の時に父親が自殺しまして、そのあと母親から虐待を受けるようになって」

 親から虐待を受けているとみなされ、小学5年から高校卒業まで約7年間、児童養護施設で過ごしたという。


■大学進学の話題に加われず―

 高校2年生までは、行事などでリーダーシップを発揮していたという久波さん。しかし、高校3年になって、進学を意識し始めた頃、ある変化が起きた。

 「一番のひっかかりというのが、経済的な壁といいますか」「学校の話とか進学の話とかってなってくると、どんどん自分がこう…輪にも入れないし、入ろうともできないし」


■今度は自分が支援したい

 友達との間に生じた“疎外感”。欠席が続き、高校は卒業したが、大学進学を一度はあきらめた。しかし、1年後、久波さんは「お世話になった施設に恩返しがしたい」との思いから、児童福祉を学べる夜間の大学に行くことを決意。現在、経済的な理由で十分な教育を受けられない子どもたちを支援する団体でインターンをしている。

 「将来そういう仕事に就けたらいいなと思っている自分からしたら、ここでの経験が間違いなく糧になるだろうと」

 まもなく実現する、国による初めての給付型奨学金。ただ、現時点で財源確保のメドがついていないなど、課題も残されている。自民・公明両党は、11月中にも提言をまとめ、政府側に提出する方針だ。

最終更新:11/23(水) 20:49

日テレNEWS24