「朴槿恵は日本のスパイ」と煽る「韓国のトランプ」登場
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友人に機密情報を漏洩していた問題で、韓国の朴槿恵・大統領がいよいよ瀬戸際まで追い込まれている。そんななか、さらに追い打ちをかける問題が浮上した。「朴槿恵は日本のスパイだ」という批判に晒されているのだ。
発端は11月14日、日韓両政府が軍事情報包括保護協定に仮署名したことだった。北朝鮮の脅威に備えて日韓で軍事情報を共有することを目的とした協定だが、朴大統領への辞任要求が高まるなか、政府が野党からの反対意見を無視して強行署名したとして批判が噴出した。
特に注目を集めるのが、野党・民主党の李在明・城南市長がフェイスブックに書き込んだ発言だ。
「我々を侵略し独島(竹島の韓国名)への挑発を続けている事実上の敵国である日本に軍事情報を無制限に提供するこの協定を締結するなら、朴槿恵は大統領ではなく日本のスパイだ」
すると韓国のネットユーザーから「絶対に防がないといけない」「また日本の植民地になるかと思うと怖い」と同調する声が相次ぎ、李市長を勢い付かせた。
「大統領は売国親日将校(朴正煕・元大統領のこと)の娘であり、大統領弾劾が議論されているのにもかかわらず、売国協定の締結を急ごうとしている」
「無能な皇帝と、売国大臣が国権をひとつずつ移譲した旧韓末(日本に併合される前の大韓帝国末期)の姿がそのまま再現されている」
そして「権力にしがみつく彼らを倒す道は、全国民の下野闘争と政界の弾劾手続きだ」と呼びかけると、またしてもネットが沸騰。民主党も「昨年の慰安婦合意に続く親日売国外交と規定し、総力を尽くし防ぐ」と呼応し、燃えさかる朴大統領批判に「反日」という新たな燃料が次々と投下されている。
◆次期大統領候補に
興味深いのは、これを煽動する李市長が、次期大統領候補として急浮上している点だ。李市長は城南市の行政官出身で中央政治の経験はないが、実務能力に長ける一方、「親日残存勢力の一掃」などの過激な発言で人気を博してきた。今回のスキャンダルを機に朴批判の急先鋒となり、市民デモに積極的に参加しては、壇上で朴大統領の退陣を求め支持を広げている。韓国を取材するジャーナリストの河鐘基氏が言う。
「李市長が見据えているのは、朴大統領辞任後の大統領選挙です。既得権益層の癒着体質に国民がうんざりするなか、李市長は政治家一族ではなく地方の行政官出身であることが好感を持たれて、大統領候補の支持率調査では4位に浮上した。さらに、反日・反北朝鮮でも国民の支持を集めている。韓国の既得権益層を批判し、過激にナショナリズムやポピュリズムを煽るという手法で、“韓国版トランプ”になりつつあります」
すでに李市長は、「韓国の既得権システムを制止し、新たな秩序を作るのに寄与すると心に決めた。今年中に公式に大統領選出馬宣言を準備している」とトランプさながらの発言を始めている。もっとも、支持率のために「反日」を利用する姿勢は、日本から見ると既視感しかないのだが。
※週刊ポスト2016年12月2日号
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