一大観光地・箱根に本拠を構える「箱根ベーカリー」。厳選した素材と職人技で焼き上げるパンが人気だが、実は今、あるピンチに直面していた。パン作りに欠かせないバターが足りないのだ。ここ最近、毎年のようにニュースで取り上げられる「バター不足」。実は消費者だけでなく、ベーカリーをはじめ様々な業者にも影響が広がっていた。箱根ベーカリーが頼ったのは、群馬県伊勢崎市の「MMJ」という会社。いま、全国の酪農家から注目されている企業だ。社長の茂木修一さんは酪農家から直接生乳を買い付け、牛乳をつくる中小の乳業メーカーに販売している。茂木さんは早速、仕入れた生乳で箱根ベーカリーのためにバターを作ってもらおうと加工会社を訪ね歩くが、返ってくるのは「担当者が不在」という返事。実は生乳取引は、国などから指定を受けた「指定団体」と呼ばれる組織が国内の生乳流通の95%を取り仕切っている。全国で10の指定団体があるが、すべて農協の組織だ。一方、「MMJ」は指定団体から独立して生乳を流通。つまり加工会社は、MMJと取引すると「指定団体」から睨まれ、生乳を融通してもらえなくなることを恐れているのだ。茂木さんが「指定団体」に立ち向かって生乳を流通させるのには理由があった。「指定団体」に出荷すると、酪農家が生産量や価格を自由に設定することは難しいのだ。実はこの「指定団体」をめぐる生乳の流通のなかに、バター不足の一因が隠れていた。果たして茂木さんは、箱根ベーカリーにバターをもたらすことはできるのか...。