HOME > レビュー > Inter BEE 2016の見どころ(3)ドルビーからふたつの新提案。AC-4と、ドルビービジョンの生中継
2016年11月23日/月刊HiVi編集部・泉哲也
先週末まで開催されていたInterBEE 2016の続報をお届けしたい。
Stereo Sound ONLINE読者にも馴染みの深いドルビージャパンがブースを設け、ふたつのデモを行なっていた。
まずは音声圧縮方式のAC-4だ。ドルビーではこれまでもAC-3(ドルビーデジタル)やドルビーデジタルプラス、ドルビー・トゥルーHDといった圧縮フォーマットを提案、多くの光ディスクメディア等に採用されている。
AC-4はその最新版で、放送や配信といったメディアに向けて開発されている。それもあり、圧縮としてはロッシー方式で、これまでよりも少ないビットレートで伝送出来るのが特長という。具体的にはドルビーデジタル5.1ch(384kbps)と同等の音質を96kbpsで再現できると担当者は解説してくれた。
またもうひとつの特長としてオブジェクト方式を採用している点が挙げられる。といってもドルビーアトモスの使い方とも違い、音楽、セリフといった音楽要素を個別に扱うことで、ユーザーが解説などを選択できるようにしているという。
例えばスポーツ中継でAC-4を使った場合、ホームチームファン向けの解説や、アウェイ側向けの解説、あるいはピッチ上の選手の会話だけを聞くといったように、再生する音を画面上で選べることになる。もちろんすべて5.1chで楽しむこともできるそうだ。
その他に視覚障害者向けの音声解説を加えることもできるそうで、384kbpsのレートがあれば、最大4ヵ国語の音声と解説を伝送出来るスペックを備えている。
AC-4を再生するには、テレビ等に対応デコーダーが必要だが、既にソニー、サムスン、LG等が北米向けモデルでの採用を発表しており、今後は携帯やタブレットへの展開に向けて標準化を進めていくようだ。
そしてもうひとつが、ドルビービジョンを使ったライブ伝送のデモだ。ドルビービジョンはHDR(ハイ・ダイナミックレンジ)再生方式のひとつで、同社が提案したPQ(Perceptual Quantization) カーブを採用している。さらにシーン毎の最適な再生をサポートするダイナミックメタデータと呼ばれる情報を備えている点も特長だ。
ドルビービジョンは、これまでは映画やドラマといった、作り込み型のコンテンツで採用されることがほとんどだったが、今回はそれをさらに進めてライブ中継でもドルビービジョンを使ってもらおうという展示を行なっていたわけだ。
ブースにはGrass Valley社のカメラが設置されている。このカメラはHDR(ドルビービジョン)とSDR(BT.709)の信号を同時に出力でき、その信号が目の前のモニターに再生されていた。
ふたつの映像の違いは一目瞭然で、画面全体の明るさやピーク感、さらに中央に置かれた白い額縁のディテイルなど、HDR映像の方が格段に細かく再現されている。
さらにドルビーはプライベートブースも準備して、より細かいデモも行なっていた。ここには先ほどのGrass Valleyカメラやサーバーからの信号が引き込まれ、スイッチャーを経由して4台のモニターで比較視聴できる環境が準備されていた。
順番にHPU(HDR Processing Unit)でダイナミックメタデータを付加、さらにHEVC圧縮/解凍したHDR信号、カメラ出力そのままのHDR信号、HDRから変換したSDR映像、カメラのSDR出力、が再生されていたが、やはりSDRとHDRの違いははっきりしている。
2種類のHDR信号については極端な違いは感じなかったが、SDR映像はふたつでかなり差があった。HDRから変換したSDR映像の方が輝度のピークもきちんと出ているし、色の階調も多い。ドルビーの担当者によると、もともとカメラではここまでの情報が収録できており、きちんとSDRに変換することで、より高画質に再現できるとのことだった。
その変換を受け持つCMU(Content Mapping Unit)は既にリアルタイムで動作できるので、ライブ中継でもドルビービジョンのHDR/SDR同時放送は可能だという。
HDRについてはNHKとBBCが共同開発したHLG(ハイブリッド・ログガンマ)が放送等で採用される方向だが、インターネット等のIP放送であればドルビービジョンを使った高品質HDR/SDR同時ライブといった展開も期待できるだろう。
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