世界80カ国・地域 国際会議で展示へ
日本の母子健康手帳(母子手帳)をモデルにするなどして世界80カ国・地域で作られた母や子の健康状態を記録する手帳が23日、東京都渋谷区の国連大学で展示される。「第10回母子手帳国際会議」(国際母子手帳委員会など主催)に合わせたもので、会議出席者だけでなく一般にも公開。専門家によると、これだけの数の手帳が展示されるのは世界的にも初めてとみられる。母子の命を守るための有効なツールの世界への広がりが分かる。
1942年に「妊産婦手帳」として始まった母子手帳は、妊娠期から乳幼児期までの健康記録を1冊にまとめ、出産や子育てに必要な情報を得る手段としても活用されている。国際的な公衆衛生が専門の東大大学院の神馬征峰(じんばまさみね)教授によると、導入によって日本の乳児と妊産婦の死亡率は劇的に下降した。80~90年代ごろから官民が協力し、海外への普及を後押ししてきた。
今回、世界の手帳を展示するのは福田康夫元首相夫人の貴代子さん(72)が顧問を務める一般社団法人「親子健康手帳普及協会」(東京都港区)。2011年から年3回、アジアを中心とした駐日大使夫人らを集めて勉強会を開いてきた。展示品は主に貴代子さんが個人的に収集したという。
80のうち18の国・地域の手帳は、日本のように母子の情報を1冊に記入する形式。サイズやページ数に差があり、識字率が低い国は栄養や衛生面で気をつけることを絵を大きくして伝えるなどの工夫をしている。子だけの手帳や母と子の記録が別冊の国や地域もあり、必ずしも日本と関係はないとされる。
協会の勉強会をきっかけに母子手帳を導入した中国は、今春から2年かけて全域で配布するという。だが、全域に普及した国はまだわずか。貴代子さんは「普及には、国の事情によって中身をどう変化させるかが重要。展示を通して会議に出席する世界の人々に母子の記録を1冊にするメリットを知ってもらい、活用の仕方を参考にしてもらえたら」と話す。【黒田阿紗子】