【レポート】

子どもどうしのけんかでケガ、慰謝料・治療費はどこまで請求できる?

子どもどうしのけんかでケガ、慰謝料・治療費はどこまで請求できる?

子どもどうしのけんかによって、ケガをした場合には、慰謝料や治療費が請求できることもあります。誰に、どのように請求できるのか、法的観点から考えてみます。

保護者だけでなく学校に責任を問うことも

子どもどうしのケンカでケガをした場合、誰が責任を負い、治療費や慰謝料を支払うことになるのでしょうか。子どもは未成年だし、子ども自身が責任を問われることはないのでは? とも思えますが、行為の内容や子どもの年齢によっては、子ども自身が責任を負うこともあります。

民法では、自分のやったことがどんな意味を持つのか、どんな結果を生じさせるのか、を理解できない状態の人がやった行為については、行為者に責任を問うことができないとされています(民法712条)。

この、自分のやった行為の責任がわかる能力を「責任能力」といい、行為態様にもよりますが、12歳前後で責任能力の判断が分かれると言われています。相手を殴る、蹴る、突き飛ばすといった単純な加害行為であれば、相手がケガをするだろうなという自分の行為の意味や結果もわかりやすいので、12歳よりもっと低い年齢でも責任能力ありとされる可能性も出てきます。

では、小さな子どもの場合、子どもに責任能力がないので誰にも責任を問えないかというとそうではありません。責任能力がない人の行為については、その監督者が責任を負うとされています(民法714条1項)。

一方、責任能力があると判断されるおおむね中学生以上の子どもであれば、子ども自身が責任を負うということになります。でも、実際問題、子ども自身が治療費等を負担できるようなお金を持っているわけではないでしょうから、親にも責任を問いたいところですよね。このように、子どもに責任能力がある場合でも、親に監督義務違反があって、そのせいでケガをさせたといえる場合であれば、親に責任を問うこともできます。

そうすると、どちらにしろ親が責任を負うから一緒ではないかと思うかもしれませんが、子ども自身に責任を問える場合と問えない場合では、請求額が変わってきます。

子どもに責任能力がない場合、被害者の親は「相手の子どもにケガをさせられた」ということを証明しさえすれば、後は加害者の親の側で、自分たちに監督義務違反がなかったと証明しない限り、原則として親に責任を問えます。

一方で、子どもに責任能力がある場合、被害者の親の側が、相手の親の監督義務違反や因果関係を証明しなければならないので、実際に請求するとなったときの負担が大きく変わってくるということです。

また学校は、生徒が安全に過ごせるよう配慮する義務を負っているので、子どもたちの間でケンカや暴行が行われていて、ケガをしそうだとわかっていたのに、何の注意もしなかったということであれば、学校に対しても責任を問うことができると思われます。

入通院が長引けば、数百万円以上の請求も

ケガをさせられた場合、責任を負う相手に対して、損害賠償として、かかった費用等を請求することになります。損害賠償というのは、相手の行為によってマイナスになった部分をゼロになるように補填(ほてん)させようというイメージを持ってもらうと、分かりやすいかもしれません。

具体的な内容としては、実際にかかった治療費、通院の際の交通費、顔等の外から見える場所であれば傷跡を目立たなくするための手術費用等も請求できるでしょう。また、重大なケガで後遺症が残ってしまった場合には、慰謝料や、将来の労働能力喪失の割合に応じて逸失利益分を請求できることになります。

入通院が長引いた際の費用や、後遺症が残った場合の慰謝料、逸失利益等は、数100万円以上の単位になることもありますので、後々のトラブルを防ぐためにも、弁護士等の専門家に相談した方がよいでしょう。

家庭でもやっていいこと・悪いことを教えよう

わざと大ケガをさせたということであれば話は変わってきますが、子どもどうしの小さなトラブルやケガは、日常的に起こりうるもの。学校でのことは学校に任せっぱなしというのではなく、家庭でも、やっていいことと悪いこと、やりすぎたらどのようなことになるのかを、教える機会が持てるとよいですね。

※本文と写真は関係ありません

筆者プロフィール: 島田さくら

アディーレ法律事務所所属(東京弁護士会所属)。大阪大学大学院高等司法研究科卒業。司法修習第65期。東京弁護士会所属。元カレからのDVや、妊娠が発覚した翌日にカレから別れを告げられるなど、過去のオトコ運の無さからくる、波乱万丈な人生経験をもとに、悩める女性の強い味方として男女トラブル、債務整理、労働問題などの身近な法律問題を得意分野として扱う。また、離婚等の豊富な知識を有する夫婦カウンセラー(JADP認定)、2級知的財産管理技能士の資格も有する。家庭では1児の母として子育てに奮闘している、シングルマザー弁護士。報道・情報番組「キャスト」(ABC朝日放送)にレギュラーコメンテーターとして出演中。 その他、さまざまなメディアで活躍中。

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