蹴球探訪
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【首都スポ】ルーキーズの素顔by瀬川ふみ子 ソフト1位・田中正義「自分の未来に期待している」2016年11月23日 紙面から
今年もドラフト会議が終わり、指名された選手は続々とプロ入りへの準備を進めている。その中で、首都圏のチームからプロへと旅立つ来季のルーキーズたちの素顔を、本紙「みんなのスポーツ」を23年にわたって担当してきた瀬川ふみ子記者(45)が随時紹介する。まず最初は、5球団から1位指名され、ソフトバンク入りが決まった田中正義投手(22)=創価大。 今年のドラフトで超目玉だった正義。彼を初めて知ったのは、創価高時代。正義と同学年でエースだった池田隆英(楽天2位)を私は佐賀の東松ワンダーボーイズ時代に取材しており、彼を見にいったら、そこで4番を打っていたのが正義だった。話をするようになったのは大学に入ってから。 正義が中学時代にいたのは川崎中央シニア。「家の近くにグラウンドがあって、チャリンコでみんなとワイワイ帰ったりしたことが楽しかった」というあのころは、ピッチャーもやっていたけど、変化球がとにかく決まらず、外野手の出場も多かったという。中学2年になる春休みの全国選抜大会に出場。初戦の小松加賀シニア戦、大事な場面で正義がセンターでバンザイをしてしまい負けた…。正義はそのことは覚えているそうだ。 中3の春季大会でエースになり、最後の神奈川県大会(卒業生大会)決勝で強敵・横浜東金沢シニア相手に抜群のピッチング。でも、一塁けん制球悪送球でボールが転々とする間に取られた1点で0−1の敗戦。こっちのことは覚えていないそうだ(笑)。 創価高では1年夏にエース番号を背負ったが、その後、肩を故障して外野手に。肩痛から解放され、創価大に入ってから、ついにピッチャーに専念することができた。正義はうれしかったみたい。だって、正義はピッチャーが好きだから。「ピッチャーをやらないと野球やってる気がしないんです」「自分が主役でいたいっていうのもあるし、ピッチャーは充実感もあって楽しい」と目を輝かせる。逆に「野手は?」と聞くと、「向いてないですよ。守備はまだいいけど、バッティングは難しいです。いいピッチャーがきたら打てないですもん…」という。 大学時代にアマ球界きっての注目選手になった正義は、昨年6月の大学日本代表の壮行試合で、若手主体のNPB選抜から7連続三振を奪い、大フィーバーに。でも本人は浮かれることもなく、「僕はまだそんな選手ではない。メディアに取り上げていただくことはありがたいけど、僕自身は客観的に自分を見ていけたらなと考えています」。そう話す姿に、大人すぎる! とビックリした。 そんな正義の普段は、とにかく野球第一。マイペースともよく言われるが「野球のことをいつも考えていたし、野球のために動くようにしてます。その中で自分の時間を大事にしたいので、そこは意識して過ごしてます」と話す。もちろん協調性もあり、仲間と楽しく過ごす時間も多いが、野球のために意識してマイペースを貫き一人でいることも多いのだ。 先日、連絡をしたときも「これからご飯です」と言うので、誰かと一緒かなと思ったら「一人です」。みんなでワイワイ食べるのも好きだけど、「自分のペースで食べるならやっぱり一人がいいので」と、一人を選ぶことも多いそうだ。その食事に関してもなかなかストイック。母親からおかずを冷凍パックにして送ってもらい、寮の冷蔵庫に保存し、解凍して食べていた。ケガをしたり、上を目指すようになってからは食事の重要性をさらに感じ、栄養学も勉強。「タンパク質を何グラム、炭水化物を何グラム」なんてことも考えて食べていた。 ただ、マイペースの一方で仲間への思いは熱く、今年のチームでは自ら手を挙げてキャプテンになった。「キャプテンをやらずに自分のペースで自分のことだけやっているなら、自分は満たされるかもしれない。でも、やっぱり仲間と勝ちたい。そのためには、自分が前に出て引っ張ったり、自分がチームの顔になってやっていくことかな、と」。この言葉を聞き、あらためてスゴいやつだと思った。 今春のリーグ戦中、右肩を痛めた。そのことには「しんどかった。でも、落ち込んでもしょうがないんで前を向きました」と振り返りつつ、「今回故障をしたことで肩の動かし方の仕組みがわかりました。強化するところはして、肩が正常に回るようにリハビリをしてそれで思い通りに治ったので、すごく自信になりました。チームの優勝に貢献できなくて申し訳ないということでしんどかったですが、間違いなく自分にプラスになるケガではありました」と話した。 プロへ向けてのことを聞くと、「見てて楽しいワクワクするような選手になりたいです」。球速は「まずは160キロですかね」と言い、「チームを勝たせるピッチャーになりたいです」と正義。さらにはこう言った。「自分の未来には期待してるんです。いいエンジン、やれる器は親から授けてもらったと思っているので、これからうまくトレーニングして、うまく体を使いこなして成長していければ、いい感じになっていける可能性はあると思うんです。だからしっかりやっていこうって思います」。客観的に自分を見て、的確に分析している正義の言葉にゾクゾクした。私も、正義の未来に期待している。 今年、正義がこんなことを言ったことがある。「自分が監督で、相手投手が今の田中正義だったら、そんなに怖くないんです。球種を絞りやすいし、張ったら打てそうじゃないですか」。そこで、「じゃ、自分が監督で相手がどのピッチャーだったらイヤ?」と聞くと、「柳(明大=中日1位)」と即答し「投球術があってスキがない。最初悪くてもきっちり修正してくる」と続けた。さらにロッテに1位指名された佐々木(桜美林大)も挙げ、「要所でベストボール放りますよね。スゴイ」と話した。 同学年のライバルと自分をこう分析する正義もまた、興味深かった。プロで彼らとどう対峙(たいじ)していくかも、今後の楽しみの一つだ。 ドラフト直後の会見で「大谷選手とは“ジャスティス”“翔平”と呼び合う仲だそうですが」と質問されていたので、「そんなに仲いいの?」って聞いてみたら、一度食事に行ったことがあるぐらいだそうで、「向こうが上すぎてこっちからなんて連絡できないですよ」と正義。まだ“ジャスティス”“翔平”と呼び合う仲でもないそうだ(笑)。 ただ、これから何度も投げ合う姿を、私も多くのファンも待っている。「投げ合うっていうより、まずはナマで見られることが楽しみすぎます。ワクワクしちゃいます。あの球、ナマでみたことがないので、グラウンドレベルで見てみたい。一番いいところでね」。今は少年のように話す正義が、グラウンドでどんな表情を見せるのか。これもすごく楽しみだ。 <田中正義(たなか・せいぎ)> 1994(平成6)年7月19日生まれ、横浜市出身の22歳。186センチ、90キロ、右投げ右打ち。小1から「駒岡ジュニアーズ」で野球を始め、中学は川崎中央シニアに所属。創価高では3年夏に西東京大会4強で甲子園出場なし。創価大3年時には大学日本代表になり、ユニバーシアード競技大会で金メダルに貢献。東京新大学リーグで通算20勝1敗。 <瀬川ふみ子> 本紙「みんなのスポーツ」のリトルシニア担当。中学硬式野球の取材を通じて出会った選手を、高校、大学、社会人、独立リーグと応援。さらにはプロ野球もチケットを買ってでも追っかけて応援にいき、アマ球界だけでなくプロ野球選手にも親交の深い選手が多い。福島県出身。高校時代はソフトボール部の「4番・ショート」で3年春は県準V、夏は県3位。夫はリトルシニアチームの監督、高2の長男は甲子園球児、長女は来春から高校野球の女子マネジャーになる予定と、野球にどっぷりの45歳。 ◇ 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。 PR情報
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