韓国の徴用工訴訟 不二越に賠償命令 ソウル中央地裁

韓国の徴用工訴訟 不二越に賠償命令 ソウル中央地裁
太平洋戦争中に徴用され日本の工場で働かされたとする韓国の元労働者5人が、日本企業に対して損害賠償を求めた裁判で、ソウル中央地方裁判所は原告側の主張を認め、1人当たり940万円余りの支払いを命じる判決を言い渡しました。
この裁判は、太平洋戦争中に徴用され、富山市の機械メーカー「不二越」で働かされたとする韓国人の元労働者5人が、過酷な労働を強いられたとして損害賠償を求めたものです。

日本政府は、元徴用工といった個人を含め請求権に関わる問題は、1965年の日韓国交正常化に伴って両国間で結ばれた協定で、すでに解決済みだという立場です。しかし4年前、韓国の最高裁判所が「個人の請求権は消滅していない」とする初めての判断を示して以降、日本企業を相手取った裁判が相次ぎ、日本企業の敗訴が続いています。

ソウル中央地方裁判所は23日、「個人の請求権は消滅していない」として原告側の主張を認め、不二越に対し1人当たり1億ウォン(日本円で940万円余り)の賠償を命じる判決を言い渡しました。判決のあと原告の1人、キム・オクスンさん(87)が記者会見を開き、「一日でも早く問題を解決してほしい」と話していました。

元徴用工をめぐっては、現在、最高裁のほか各地の地方裁判所や高等裁判所でも審理が進められていて両国の懸案となっています。

最高裁で3件審理中 いまだ確定せず

韓国で、太平洋戦争中に徴用され日本の工場で働かされたとして元労働者らが損害賠償を求めている裁判は、これまでのところ判決が確定したケースはなく、3件の裁判について、現在、最高裁判所で審理が行われています。

このうち、三菱重工業と新日鉄を相手取った2件の裁判では、いずれも1審と2審で元労働者側が敗訴しましたが、最高裁が「個人の請求権は消滅していない」とする判断を示して審理が高等裁判所に差し戻され、やり直しの裁判では企業側に賠償を命じる判決が言い渡されています。いずれも企業側が上告し、最高裁で審理中ですが、元労働者側の主張を認める可能性が高いと見られています。

仮に日本企業側の敗訴が確定すれば、今後の日韓の経済交流に影響が及ぶのではないかという懸念もあります。その一方で、最高裁は3年余りにわたって判断を示しておらず、原告らは23日、最高裁に要請書を提出し、早期に判断するよう求めました。