金利や融資実行日交渉の力関係で優位に立つため
どうも千日です。トランプ氏が当選してから2週間、世の中は少し落ち着いてきました。しかし、長期金利の上昇は止まりません。
まだまだ予断は許されない状況です。
トランプ相場の上昇は「期待先行」であることに変わりはありませんからね。
なお、フラット35の金利であれば、毎月20日前後に発表される機構債の表面利率で翌月の金利が上がるか、下がるか、かなり正確に予測できます。
詳しいやり方はこちらの記事をご一読ください。毎月の機構債の表面利率発表の都度、翌月のフラット35の金利予想を更新しています。
なので、引渡しと融資実行予定日はできるだけ月の後半に設定しておき、翌月に下がることが分かれば、引渡しの日を翌月に延期してもらうことで安い方の金利を選択できます。
交渉のポイントなどはこちらをどうぞ。
でも、この交渉が上手くいかない場合があるんですよ!
特に新築マンションでデベロッパーの提携ローンで1行だけしか審査を通していない場合はこの交渉でかなり不利となります。
では今日の内容です。
目次
交渉のキーは「力関係」
過去に公開した記事にも書きましたが、一旦決まった引渡し日を変更するのは不動産会社にとっても銀行にとっても「余分な仕事」になり、事務負担を増やします。
進んでやりたいなんて人はいません。
なので、相手の風下に立たないような布石を打っておくことが交渉を有利に進めるために必要なんです。
審査を通したのが一行だけでは足下を見られる
至極シンプルな話です。
あなた:「融資実行を来月にしたいんですが…」
A銀行:アッサリ「できません」
ここから、担当者を圧倒するようなトークを展開して粘り強く食い下がり、相手を根負けさせて要求を通せるような人は少ないでしょう。
『では延期に応じてくれるB銀行にせざるを得ませんね、今月御行で借りるより来月B銀行の方が安いのでしょうがないです、残念ですけど…』
この位は返したいですよね。
しかし、このA銀行しか本審査を通して無ければ、ブラフです。相手が引き留めに来なければ、即手詰まりです。
複数の銀行から審査を受けても信用情報に影響はない
複数の金融機関から本審査を受けても信用情報に影響はありません。
銀行が融資の審査をするために、信用情報機関に信用情報を問い合わせした時、他にどの銀行が信用情報を問い合わせしたのかまでは分かります。しかし、審査に通ったか落ちたのかまでは分かりません。
あまりに多すぎると、不自然かも?というくらいです。3行位までなら普通です。
それに、信用情報は審査されるのが「常識」のように思われてますけど、実はそうでも無いんです。
最近では信用情報の審査を実施しない金融機関は全体の22.5%あります。詳しくはこちらをどうぞ。
金利の交渉もできるし本審査後に断ることもできる
複数の審査を通しておけば、がぜんこちらが強くなります。A銀行よりもB銀行の方が金利が高ければ、金利の交渉もできます。
両銀行の条件を揃えておけば、金利面ではどっちで借りても同じという状況を作れます。日程交渉はさらに有利となるでしょう。
ホームページに載ってるのが最優遇金利じゃありません。
それに、本審査に通ったからといって、そこで借りなければならないということもありません。
住宅ローンは金融機関との金銭消費貸借契約書にハンコを押さないと始まりませんから、引渡し日までは「キープ」なんです。
違約金もありません。文字通り、金融機関が債務者を「審査しているだけ」なんです。それが仮審査だろうが、本審査だろうが、金融機関と利用者の間に何ら契約関係はありません。
いわば、売買契約の前の見積り書みたいなものです。
ですから、こんなことがサラッと言えるようになるんです。
イイよ、銀行は1つじゃない。
本審査の時に準備する書類は多いですから、面倒ではありますけど、このひと手間で力関係が全然変わってきます。
今月か翌月かという直前のタイミングで他の銀行から審査を受けようとしても、到底間に合いません。
不動産会社の提携ローンで交渉が困難な理由も「力関係」
マンションデベロッパーなどの不動産会社の提携ローンの場合、基本的に金融機関は不動産会社のメインバンクです。
つまり、不動産会社が行う土地開発や建築会社に払う建築代金を融資している銀行です。
つまり、銀行にとって不動産会社はいわゆる大口顧客なわけです。
それに対して、住宅ローン利用者は?
ちっぽけな小口顧客ですよね。
企業として、どっちを大事にすべきかは、自ずと明らかではありませんか?
ですから、提携ローンの場合は特に不動産会社の意向を優先させがちなんです。
- 不動産会社に交渉したら「銀行が融資しないから」と断られ…
- 銀行に交渉したら「不動産会社が引渡さないから」と断られ…
提携ローンでこういうたらい回しになるケースは不動産会社の意向が優先されているからと見て、間違いないと思います。
提携ローンは利用者にとってもメリットが多い
不動産会社の提携ローンとは、住宅ローンを貸し出すまでの審査や引渡しの業務を一本化して事務コストを下げるのが狙いです。
銀行、不動産会社、利用者にとって三者三様のメリットがあります。
銀行にとってのメリット
住宅ローンの利用者を囲い込めます。対象となる物件の担保価値も一つ一つバラバラに調査するのではなく一括して調査することが出来ます。
審査の事務コストを削減できます。
不動産会社にとってのメリット
メインバンクですから、不動産会社の意向が通しやすく、融通が利きます。物件の引渡し業務についても事務を一本化できますので事務コストが削減できます。
また、真偽のほどは分からないですが、審査も甘い傾向があるといいますね。信用力は低いけど買いたいというお客さんを逃さずに売り切ることが出来ます。
これも不動産会社の意向が通りやすいと考えればうなずけます。
利用者にとってのメリット
上記の二つのメリットがいわば利用者にとってもメリットになるものが多いですね。
審査のスピードが速く、審査に通りやすいです。
提携ローンで通らないようであれば、他の金融機関では、さらに通りにくいと考えていいでしょう。
また、銀行の事務コストの安さと顧客の囲い込みのため、公表されている金利よりも0.1%~0.2%位さらに優遇金利が適用されることも多いです。
提携ローンのメリットに隠されたデメリット
だが、しかしです。これら利用者にとってのメリットは、あくまで不動産会社と銀行にとってのメリットの「おこぼれ」なんです。
利害が一致している時には何の問題もありません。
しかし、交渉ごとになり、我々と不動産会社、銀行との利害が相反した局面ではデメリットが顕在化するんです。
つまり、
- 銀行は住宅ローン利用者よりも、大口顧客である不動産会社の意向を優先する。
というのは、前に述べたとおりですが、この他にもあります。
一人だけ例外的な扱いが出来ない
- 交渉による例外的な処理に応じられなくなる。
提携ローンでは大多数の顧客の審査から引渡しまでの事務代行を不動産会社がやりますので、取扱いの公平性が大事になってくるんです。
一部の顧客だけ、金利が安くなるからという理由で引渡し日を遅らせたら、他の人達からは、不公平だと不満が出るかもしれません。
今はSNSとかですぐ拡散しますからね。(千日みたいなブロガーもいますし)
ネガティヴな風評を恐れるでしょう。
仮に全員が団結して交渉したら普通に応じてくれると思います。しかしそんなこと、まずあり得ませんよね。
ですから、新築マンションの提携ローンのように一斉に完成して一斉に引渡しになるようなケースでは、面倒とか事務コストかかかるという以前に、一部の人だけ特別扱いする訳にはいかないんです。
まとめ~市場の原理で臨むこと
いかがでしたでしょうか。今回はちょっと生々しい内容だったかもしれません。
そこまでがめつくしなくても…
もしかしたら、このように思われるかも知れません。しかし、相手はそうじゃないですよ。こちらに他行へ移る構えが無いと見ると、どこまでも強気で出てきます。
そんな時、悔しい思いをするのは自分です。
数千万円もの不動産を担保として住宅ローンを借りるという事は、同額の元手で金融市場に参加するのと同義です。
あくまで市場の原理で金融機関に相対する心構えが必要なんです。
以上、千日のブログでした。
《あとがき》
この記事は、読者様からの質問への回答と情報提供に基づいて執筆致したました。千日のブログでは、随時、質問やお題を募集しています。
住宅ローンや物件選びについてはメールでの質問(無料)も受け付けてます。お答えした内容は今回のように、個人を特定出来ない形で記事にすることがあります。
住宅ローンの疑問は千日のブログに聞いてみよう~親愛なる読者様へ - 千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える
金利動向に関して不安を煽る発言など、あまりに担当者の対応が信義に反し、目に余ると感じた場合は会社のお客様相談室に相談するのも良いです。
レストランの食事に異物が入っていたら、私なら近くのウェイターに小声で「こんなの入ってますよ」と教えてあげるしょう。
それと同じ事だと思いますよ。
2016年11月23日
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