はっけんの水曜日
2016年11月23日
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人とチョウザメのかってない形でのふれあい。
日本一のサケの水族館「標津サーモン科学館」が最近注目を浴びている。サケではなくチョウザメで。
> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー サーモン科学館ふたたび北海道の東端、標津町にある「標津サーモン科学館」。昨年私がサケマイスターを取得したサケの水族館である
異彩を放ついくらタワー。
当時は取材でバタバタしていたのだが、館内のある一角が気になっていた。
「チョウザメ指パク体験」て。
1年後、その謎を解くために再び科学館を訪問した。もう遡上だ。サケだ俺は。
1年ぶりの副館長、西尾さん。手にしているのはスタッフ手作りのマスコット「サマンサ」
「サケ…いや、伊藤さん、ようこそ」
――今ちょっとサケって言いましたね。今回はチョウザメで来ました。指パクというのはやはり…..。 「そう、チョウザメに指を食べさせる体験ができます」 任務に失敗した悪い組織の人はサメの水槽に落とされがち。
「百聞は一見にしかずというわけで早速やってみましょう」
エサをまくと無数のチョウザメがとんがった頭を水面に出してこちらに向かってくる。命を吹き込まれたビジュアル系バンドの靴のようだ。 泳ぐアルフレッド・バニスター。
すごいハイテンション。
「さ、指をどうぞ」
副館長というより組長のような言い草にうながされておそるおそる指をさしだすと……。 どいつもこいつもかむ気満点……。
「あんむ」
これは!歯ぐきだ!健康的な歯ぐきで表面をぬみゃんとこそがれているような感覚。痛みはない。ただ明確に食おうという意志は感じる。
「チョウザメには歯がありません。いわゆる人食いサメみたいに鋭いキバで食いちぎられるみたいな事はないですよ」 こんな感じで食われることはない。ちなみにマスコットのサマンサは背中のフリルのおかげでゴスロリと呼ばれている。
動画で異様さをチェック!
――こんなにがんがん水面に顔を出すものなんですか?
「通常は水底を泳ぎながら顔の下のヒゲをレーダーにして獲物を探して食べていますが、彼らは浮いたエサに慣れさせています。」 エサと間違えてパクリとやる。
――へぇー、しかしなんでまたこんな試みを。
「最初は沈むエサを与えていましたが、飼育していく上で浮いたエサも普通に食べられる事がわかりました。で……」 ――で? 「 “これは指パクもいけるんじゃないか”と館長が」 サケ科魚類の研究を中心に数々の論文を執筆している館長、市村さんの思いつき。
――なんだそのインスピレーション。でも指を出してみたくなる気持ちはわかる。
表情もいちいち愛らしい。
笑いながら溺れているようにしか見えない。
チョウザメはチョウザメそもそも彼らはサメの仲間ではない。そんならなんでサメとか言ってるのだ。
「サメっぽさですね、サメ感あるじゃないですか」 確かに、パッと見はサメそのもの。
ウロコの形が蝶に似ているから「チョウザメ」(諸説あり)写真はオオチョウザメの稚魚
美しい魚体。高級なキャビアが取れるが、成熟に10年以上を要する。※現在バックヤードで飼育中、展示はされていません。
――あ、そんなノリなんだ。じゃあもうサメでいいんじゃ。
「いやいや、体の構造が違います。サメは軟骨魚類といって骨が軟骨でできていますが、チョウザメは硬骨魚……なんだけど軟骨の割合が多いという、分類上近い仲間があまりいない変な魚なんです」 現生の硬骨魚類で「軟質亜綱」に属しているのはチョウザメのみ。
――じゃあチョウザメって何の仲間なの?って聞かれたら……。
「チョウザメはチョウザメなんだよ!って逆ギレするしかないんですよね」 ――逆ギレはしなくてもいいですよね。 標津サーモン科学館は日本一のサケの水族館ですよ。
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