最近は「当然の権利」とばかりに退職時に軽いノリのような感じで請求してくることも少なくありません。
もちろん、本当に過重な労働があれば、それはそれで問題ではありますが、労働法の前に社会のルールというものもありますので、何事もそのバランスが大切です。
さて、そんな軽い感じで請求をされるサービス残業代請求の場合は、元社員の方が適当にノートに勤務時間を書いて請求されてくることもあります。
これが実に大雑把で・・・
会社で検証し、他の社員に聞いてみると、一般的によく言われるトラブル社員ほど実際の勤務時間は短かったりします。(仕事への熱意がないため、終業時間後すぐ帰っていたり、残業を拒否したりするケースが多いようです)
しかし、このような大雑把な記録による請求がなされても、会社がそれに反証できる時間管理をきっちりしていない場合、その社員の請求に一定の信憑性が生れてしまうことも事実です。
また、時間管理をタイムカードでしている場合、タイムカードは出社・退社時間の記録であって、実際の勤務時間と大きな乖離が有ったりする場合などもあります。
このような場合に、会社のパソコンのログが勤務時間を推測するのにとても役立つことがあります。(特に事務職の場合は)
ログデータとはコンピュータや通信機器が一定の処理を実行したこと、又は実行できなかったことを記録したデータの事で、この中には、パソコンのOSの起動と終了の記録やイントラネットへのログオン・ログオフの記録なども含まれますので、これらの記録から、労働時間を推測するのに有効な資料となることがあるのです。
そこで、今回は、パソコンログの取り方をお伝えします。<あくまでウインドウズ7の場合ですが>
① パソコンの「コントロールパネル」を開いてください。
(スタートボタンのところをクリックすると右側の列に出てきます)
② コントロールパネルの中のシステムとセキュリティを開きます
③ 開いたら、「管理ツール」を開きます
③ そうすると中に、「イベントビューアー」というショートカットがあるはずですのでこれを起動させます。
④ イベントビューアーが開きましたら、ウインドウズログの中の「システム」のログデータをクリック
⑤ そうすると、システムに関するログの一覧が見れます
⑥ この中から、OS起動と、OS終了のデータだけを抽出しましょう!!
右側にあると「操作」の欄から「現在のログをフィルター」を開きます
⑦ そうするとフィルターをかける内容を選択するウインドウが開きます。
この中でフィルターに欠けるイベントIDを入力します。
「6005」がOSの起動「6006」がOSの終了を意味しますので、この数字を入れます。
⑧ そして、「OK」ボタンを押すと・・・
パソコンの起動、終了時間だけが出てくるというわけです。
このログデータ、左の列にある「システム」の右クリックすると「フィルタされたログファイルの名前を付けて保存」でテキストとしてメモ帳に保存する事ができます。これを印刷すると証拠のして提出する事ができるようになります。
他にもいろいろこのログを使った管理はできるのですが、今回は入門編という事で、その他の事は別の機会にさせて頂きます。
PCログ、これが必ずしも労働時間を明確に示す、という事ではありませんが、労働時間管理の一つの資料とはなると思いますので、ご利用いただけましたら幸いです。
PCログを確認したところ・・・
「請求よりもっと労働時間が長いかも!!」なんていうことが無いようにしたいものです (笑)
ちなみに、裁判においてPCログが証拠として採用された判例としてはPE&HR事件(東京地判平18.11.10)などがあります。
【PE&HR事件(東京地裁 平成18年11月10日 判決)】
会社との間でパートナー契約を結んでいた者の管理監督者性が否定され、パソコンのログデータで労働時間が推定された事例(管理監督者性とログデータによる労働時間の推定)
【事実概要】
Xは、インターネットを通じてYの求人を知り、これに応募して平成17年4月からパートナー契約を結んで就労していた。
勤務時間は「9時-18時」とされていた。なお、Yは、従業員が10人に満たない会社であり、就業規則は制定されていなかった。
Y社では、タイムカード等による出退勤管理・時間管理は行われておらず、日課として朝9時過ぎにスタッフ全員が集まって予定を確認しあい、日中はホワイトボードで勤務状況を明らかにする方法がとられていた。
Xは同年9月末日退職後、勤務期間中の時間外労働賃の支払いを求めた
【判決概要】
Xの時間外労働の時間についてXの手帳に記載されていた始業・終業時間はXの主観的な認識によるもので、必ずしも正確なものとはいえず、全面的にこれによることはできない。
しかしデスクワークをする人間は通常、パソコンの立ち上げと立ち下げをするのは出勤と退勤の直後と直前であることを経験的に推認できるので、他に客観的な時間管理資料がない以上、その記録を参照するのが相当というべきである。
よってパソコンのログデータで労働時間を推定される。
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