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<残留はしたけれど FC岐阜>(下) 経営

今季最終戦後のセレモニーであいさつする宮田社長=岐阜市の長良川競技場で

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 「来季はもっと強いチームにして、皆さんに喜んでもらいたい」。二十日の今季最終戦後のセレモニーで、FC岐阜の運営会社「岐阜フットボールクラブ」の宮田博之社長(69)は観客に誓った。同時に「目標はもっと高いところにあった」とも語り、J3への降格と入れ替え戦を回避できたとはいえ、二十位に終わった結果に悔しさをにじませた。

■費用対効果は

 クラブはこれまで、厳しい財政状況に陥りながら、県財界の支援を受けるなどして運営を続けてきた。

 二〇一五年度は広告料収入の伸びなどで営業収益が過去最高の九億九千万円に達し、J2に参入して一季目の〇八年度時の二倍以上になった。クラブ関係者は、今季も「前年度並みの規模」になると見通す。来季はJリーグの配分金も増えると見込めるという。

 ところが収支の見通しは相変わらず厳しい。一五年度の純利益はわずか約三百万円だった。広告収入などは増えたが、限られた予算内で支出も大幅に増えたからだ。その多くはチームの人件費。ラモス瑠偉前監督(59)の就任一年目となった一四年度の人件費は五億円超となり、前年比の約二倍に膨れ上がった。今季も昨季(約四億七千万円)と同額程度を費やしたとみられる。

 「スポーツチームでの投資先は人。費用対効果が重要」。クラブ関係者は強調するが、繰り返されるJ2残留争いは、的確なチーム強化ができていないフロントにも一因があることを示唆している。

■入場者は減少

 勝ちゲームをなかなか観客に見せられない現状は、ホーム入場者数にも影響している。今季は一試合平均で五千六百六十二人が来場したが、昨季に比べ8・4%減り、二季連続で落ちた。今季に一万人を超えた試合は、「断崖絶壁の状況」(宮田社長)の最終戦のみだった。

 四月の株主総会の資料によると、観客動員数の減少による興行収入の伸び悩みは否めず、「観客動員数の増加を第一の課題」として挙げていた。ラモス効果があった一四年の実績を「良すぎた」とする声はあるし、一定のサポーターも根付いてきている。とはいえ、観客を魅了する試合を重ね、収益を上げるというスポーツ興行の基本からは、まだ遠い。

■「弱み」解消を

 県や岐阜市が長良川競技場の観客席増設やクラブハウス建設を進めたことなどから、FC岐阜はJ1昇格に必要な「J1クラブライセンス」を一五年に取得した。成績が伴えば、J1に行ける環境は整っている。

 最終戦後のセレモニーで、サポーターが掲げた横断幕には「岐阜フットボールクラブとして積み上げを」と書かれていた。選手やチームの力量を高めるだけではなく、クラブに対し、これまでの低迷を糧にした変革を求める思いが垣間見えた。

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 実際、クラブ関係者の中にも「十年やってきたのに、ノウハウを蓄積できていない組織の弱さにも問題がある」との声もあるのは確かだ。

 〇六年に会社が設立されてからちょうど十年。J2を舞台に戦い始めてから十季目を迎える来季こそ、クラブとしての真価が問われている。

 (この企画は鈴木凜平、磯部旭弘が担当しました)

 

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