米連邦準備理事会(FRB)のフィッシャー副議長は21日、インフラと教育の改善に対する支出拡大によって、経済を下支えするFRBの負担は軽くなりうると述べた。数年来の予算制限の後で、米議会は大幅な財政拡張を押し通せるのではないかとの観測が広がる中での発言だ。
フィッシャー氏は、FRBの金融政策が唯一の手段である必要はなく、的を絞り込んだ財政政策によって米国経済の潜在的成長力を押し上げられると語った。具体的には公的インフラの改善や民間投資の促進、規制の見直しなどの改革を挙げた。
「マクロ経済政策は金融政策に限らない。とりわけ生産性を高めるような財政政策は、潜在成長力を高め、長期の経済的な課題に立ち向かう助けになる」と、フィッシャー氏はニューヨークでの外交問題評議会の講演で述べた。
トランプ次期米大統領の側近らは、数百万人の雇用創出と4%以上の国内総生産(GDP)成長率という公約の実現に向け、大型の財政刺激策について議論している。トランプ氏は、10年間で6兆1000億ドルの歳入減につながる減税策と大規模なインフラ整備計画を掲げる。一方、下院の共和党幹部は、それよりも控えめな計画を示唆している。
トランプ氏が首席戦略官に指名したスティーブン・バノン氏は、新政権はマイナス金利の利点を生かして1兆ドル規模のインフラ計画を断行すべきだと語っている。「あらゆるものを再建する最大の好機」だという。
トランプ氏はまだ経済チームの人選中で、来年の議会で最終的にどのような予算が成立するのかは見通せない。だが、共和党の財政保守派が劇的な財政拡張を押し戻す公算が大きい。また、工場の雇用の海外流出を反転させるとしてトランプ氏が公約した保護主義政策を懸念するアナリストも多い。
■利上げペースの加速につながりうる
ニューヨークにある米国野村証券のチーフエコノミスト、ルイス・アレクサンダー氏は、財政刺激策を強めていいという考え方にFRBは共感するはずだと語る。潜在的生産量と中立金利の上昇につながり、景気下降時の利下げ余地が広がるからだという。
ただし、同氏はこう付け加えた。「今のFRBは様子見モードで、議会が実際に財政政策をどうすることになるかを見守る構えだ。米国経済は完全雇用に近い状態にある。議会が大型の財政刺激策を通せば、金利の軌道に影響が及ぶ可能性はとても高い。FRBの利上げペースの加速につながりうる」
イエレンFRB議長は先週、今のところ選挙結果がFRBの金融政策スタンスを変えるには至っていないと述べ、来月の利上げを示唆する姿勢を保った。「実施されるかもしれない経済政策についてもっとはっきりしてくれば、(連邦公開市場委員会は)それが雇用とインフレに及ぼす影響を評価に織り込まなければならなくなり、私たちの見通しも調整されるかもしれない」と、イエレン氏は語っている。
By Sam Fleming & Mehreen Khan
(2016年11月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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