教師を辞めて刑事になったという異色の経歴
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東野圭吾の加賀恭一郎シリーズ。
加賀は元教師。
教師を辞めて刑事になったという異色の経歴をもつ主人公。
シリーズものになっており、彼は魅力の詰まった人間である。
剣道の達人であり、人を見抜く力、そして論理に裏打ちされた推理力。
本作は加賀が、刑事になってからまだ日が浅い中の出来事。
この作品は、主人公および登場人物が書いた手記である。
それぞれの登場人物の視点から見た事件とその周りの出来事。
そもそもそれが鍵になってくるとはまだ誰も知るよしもない。
犯人は序盤で明らかになる。
だが、わからないのは動機。
語ろうとしない犯人、徹底的に調べたい加賀。
二人の駆け引き、そして捜査が息もつかせぬ展開につながっていく。
犯人探しではなく、動機探しのミステリ。
本というものでのみ描かれうる魅力を余すところなく伝えてくれる。
小説だからこその魅力がつまっている
「真相が暴かれるまで書き続けようと、今は考えている」
野々口の手記であることがわかる一文。
そう、本小説は野々口と加賀の手記をつなぎ合わせたものになっている。
小説の中に物語があるのではなく、物語を登場人物が書いたものとして顕現しているのだ。
このような表現は、本だからこそできる。
本の魅力を余すところなく感じる。
人にモノを教えるという立場
「教師と生徒の関係なんてのはね、錯覚の上で成り立っているんだ」
元教師の野々口は言う。
彼はもともと加賀と同じ学校で働いていた。
そんな彼が、何に基いてこのようなセリフを言うのか。
教師は、教える役。
生徒は教えられる役。
お互いにその立場を理解して、そのとおりだと錯覚することが幸せだと彼は言う。
人に物を教えることができる人間など、ほんの一握りだろう。
人を信じる分、裏切られる可能性も増える
「とにかく人に不快感を与えることで歓びを得ようとしている」
世の中にはたくさんの人間がいる。
他人を貶めることに快感を覚える人間もいる。
他人に期待しすぎると、辛くなるのは自分自身である。
信じないことが自分を守ることになるが、果たしてそんな世界を望むのだろうか。
知られたくなかったのは本当の動機
「あなたにとっては殺人犯として逮捕されるよりも、その真の動機を公表されることのほうがはるかに怖かったのです」
衝撃の一文。
本作の動機、それは犯人にとって殺人犯になることよりも重かったのだ。
潜んでいるのは悪意。
唖然とさせる動機に読者は困惑する。
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