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1980年代はプラクティカル・エフェクトの全盛期だった。プラクティカル・エフェクトとは、アニマトロニクスや特殊メイクなどで実現する特殊効果のことだ。
その後こういった特殊効果はCGに取って変わるわけだが、シリコンや血のりなどを利用して作られたクリーチャーはCGとはまた別の不気味さがある。
ここでは映画史上に残る当時革新的だった10本の映画内のプラクティカル・エフェクトを見ていくことにしよう。
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1. 狼男アメリカン―狼男の変身(1981年)
すでにハリウッドでは名の知れた人物であったリック・ベイカーであるが、この作品で特殊効果の専門家として不動の地位を築いた。狼男の変身シーンをリアルタイムで表現することは、映画製作者の長年の夢であった。それを最初にリアルかつ痛々しく実現したのがベイカーである。このシーンには大勢のスタッフが投入され、6日間かけて撮影された。
American Werewolf in London - Complete Transformation
本作品以降、これに匹敵する変身シーンは滅多に存在せず、35年経った今でも視聴者に身悶えするかのような感覚を味わわせる。
2. スターウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還―ジャバ・ザ・ハット(1983年)
スペシャルエディションでデジタル修整されたジャバ・ザ・ハットは間抜けに見えるが、『ジェダイの帰還』で最初に登場したときは、素晴らしいパペットワークの作品だった。
Jabba the Hutt's Bargain with Boushh (Princess Leia) - Star Wars Episode VI: Return of the Jedi
ブヨブヨとした体、ナメクジのような尻尾、カエルのような口はどれも手作業で動かされている(アニマトロニックを利用しているのは目と舌だけで、こちらも人間の手で操作することができた)。
パペット操作スタッフはジャバを本物らしく見せるためにリアルタイムで操作していた。そのため他の俳優たちは、本当にジャバがそこにいるかのように演技できたのである。もちろん、これを実現するのは容易なことではなかった。ジャバは今もなおこれまで作成されたパペットの中で最も高価なものである。
3. 2001年宇宙の旅―無重力のジョギング(1968年)
本作品はいくつもの点で画期的な映画である。だが特にその後の特殊効果に影響を与えたプラクティカル・エフェクトとして、無重力下で行われるジョギングのシーンが挙げられる。
Centripetal Motion - 2001 A Space Odyssey
スタンリー・キューブリック監督はカメラを回転させる代わりに、セット自体を回転させて映画史上に残るシーンを撮影した。
4. トロン―ネオン効果(1982年)
80年代に制作された『トロン』に登場するネオンのように輝くスーツを見た者は、デジタル技術で加工したものだと普通は考える。だが、実はモノクロで撮影し、そこに一コマ一コマ手作業で塗ったものである。
Walter Cronkite demos "Tron" special effects
5. スキャナーズ―頭部の爆発(1981年)
デヴィッド・クローネンバーグ監督の1981年の作品『スキャーナーズ』では、特殊効果を担当したゲイリー・ケラーが頭部の爆発シーンを演出し、そのリアルさのあまり気分が悪くなる観客まで現れた。
Best Horror Kills - Scanners - Head Explosion
ケラーは空気を利用して撮影しようと考えていたが、いくつか試した後にそれでは求める効果を得られないと悟る。結局、ダミー人形の頭をショットガンで吹き飛ばした。
6. ダーククリスタル―ランドストライダー(1982年)
ジム・ヘンソンが描いた人間とパペットが入り乱れるランドストライダーのシーンは、映画の撮影技術が新次元に到達した瞬間であった。
ランドストライダーは、竹馬に乗るスタントマンがコスチュームを着込んで演じている。ランドストライダーが走るシーンでは、スタントマンは転倒防止のためにクレーンから吊られていた。
The Dark Crystal - Landstriders
キーラとジェンはアニマトロニクスである。本作品で主役を演じたのはパペットであり、単なる物珍しさが売りであったパペット映画が本格派の映画としても通用することが証明された。
7. 遊星からの物体X―犬の”それ"のシーン(1982年 )
ロブ・ボッティンとスタン・ウィンストンによって生み出されたシーンがトラウマになっている人もいるかもしれない。その効果はそれほどまでにリアルで不気味だったのだ。特に観客を釘付けにしたのが、犬が”それ"に変形するシーンだ。
The Thing (2/10) Movie CLIP - It's Weird and Pissed Off (1982) HD
どこかエイリアンにも似ており、恐ろしいと同時に哀れささえ感じさせた。スクリーンでの登場回数は少ないが、その後のホラー映画の類で何度も真似されている。パペット、アニマトロニクス、油圧システムで作成された”それ"は、特撮アーティストに限界などないことを教えてくれる。関連記事:「遊星からの物体X」で公開されなかったクリーチャーたち(※閲覧注意)
8. ターミネーター2―ターミネーターの再起動(1991年)
特撮アーティストのスタン・ウィンストンは、アンドロイドの機械の体と人間の体をシームレスに融合させる方法を考案した。あるシーンは完成版からはカットされているのだが、プラクティカル・エフェクトを一歩前進させたものであることは間違いない。それは、ジョン・コナーとサラ・コナーがターミネーターの皮を剥ぎ、再起動させるシーンだ。
Terminator 2: Judgement Day, Deleted Scene- Rebooting the Terminator (High Quality)
ここではリアルでありながら、電動ドライバーを持つサラが頭部をリアルタイムでいじれる必要があった。映画館では観ることのできなかったシーンでありながら、以降の映画作品で繰り返し模倣されている。
9. アルゴ探検隊の大冒険―スケルトンとの戦闘(1963年)
1960年代の観客に特殊効果の未来を垣間見せたのが本作品だ。テーベで繰り広げられるスケルトンの軍勢との戦いは、スーツを着た人間やプラスチックの操り人形などではなく、当時の観客を仰天させた。
この驚きの効果はレイ・ハリーハウゼンJrによるストップモーションと、トッド・アームストロングの巧みな演技によって生まれた。
Jason and the Argonauts skeleton fight
ハリーハウゼンJrは『シンドバッド七回目の航海』でも同じようなストップモーションを用いているが、大勢のスケルトンをアームストロングと同じ場面にいるかのように感じさせることはさらに難易度が高く、後の作品に影響を与えることになった。
10. レイダース/失われたアーク―溶ける頭(1981年)
アクションシーン満載の本作品では、観客は頭が溶けるという夢に出そうなシーンを見せつけられた。恐ろしいまでに真に迫っており、デジタル技術なしで作られた本シーンに観客は仰天しただろう。
だが実は本リストにおいては最も他愛のない技術によって撮影されている。この頭部は石の頭蓋骨にゼラチンの皮膚を貼り付けたものだ。ヒーターで熱を加えるだけで素晴らしい効果を得ることができる。
Raiders of the Lost Ark - Face Melt Scene
via:10 Of The Most Groundbreaking Practical Effects In Film History/ translated hiroching / edited by parumo
もっとも最近では、プラクティカル・エフェクトが見直されてきており、「マッドマックス 怒りのデスロード」などはCGをほとんど使用していないそうだ。
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コメント
1. 匿名処理班
2001年宇宙の旅のジョギングシーンは見るたびに不思議に思ってた。
そうやって撮ってたのね!
2. 匿名処理班
ゴジラなんてまさにそうだったと思うんだけどな。
3. 匿名処理班
ジャバ・ザ・ハットは当時見た時にあの動きの不自然さ?不自由さ?が、とても太った醜い怪物に的中していると思ったよ
4. 匿名処理班
狼男アメリカンよりハウリングが好き
5. 匿名処理班
プラクティカルエフェクトと言えば日本のミニチュア着ぐるみ特撮だけど海外の人からはおもちゃの中でふざけているようにしか見られないのが残念。
6. 匿名処理班
骨の奴クオリティ高いなぁ
7. 匿名処理班
※2
ゴジラは映画作品としては素晴らしいと思うけど、特撮技術自体はキングコングの日本版みたいなものだからね。
8. 匿名処理班
最近ザ・フライを初めて見たんだけど、グロさへの嫌悪感よりも当時の技術でアレを作ったことに対する感動の方が大きかった
9. 匿名処理班
※5
またそうやって日本を貶める嘘を息を吐くように・・・
じゃーなんでゴジラはハリウッドで映画化されるまでに浸透したの?
パシフィック・リムでモンスターを敢えてKAIJUと呼ぶのはなぜ?
おまえらプルサガリでも見てろよ(これも日本の着ぐるみ怪獣への憧れだけどなw)
10. 匿名処理班
アイデアだなあ
黒澤明は水に墨を溶かして雨のシーンをとったらしいけど
11. 匿名処理班
ダーククリスタル取りあげてもらって嬉しい
久しぶりにDVD観たくなった
12. 匿名処理班
※7
キングコング着ぐるみ使ってないで
13. 匿名処理班
骸骨戦士はこの当時見たらものすごい衝撃だろうね
レイダースはトラウマ
14. 匿名処理班
CGは人間の計算通りの物しかできないが、こういった特撮は計算以上の物ができることがあるのでCGには無い生々しさがある。
15. 匿名処理班
うわぁ、狼男アメリカンとかスキャナーズとかレイダース/失われた聖櫃とか思いっきりトラウマ映画だったわ。
邦画だと野生の証明とか八つ墓村、戦国自衛隊の手作り特殊効果のトラウマ感が近い気がする。
16. 匿名処理班
ダーククリスタルはDVDにメイキングが入ってて色々な手作業の撮影に感心した
17. 匿名処理班
物体Xなら。落ちた人の首から蜘蛛みたいな足が生えてカサカサ走って行くのが一番気持ち悪かった。
18. 匿名処理班
技術的には古い物の応用だとしても昭和三十年代のガス人間辺りからの
マタンゴまでの怪奇路線特撮の特殊メイクなんかも白黒映画って言うのもあって結構怖い。
19. 匿名処理班
特撮のアイディアと技術ってすごいよなぁ
※14のCGには無い生々しさには同意だよ。真に迫るものがあるよね。
20. 匿名処理班
初代ゴジラの、町並みや電柱を蝋で作って強烈なライトで照らして溶かすことで、熱線放射の破壊力を想起させた特撮なんかは、当時の技術と能力と発想の点で素晴らしいモノだったことに間違いは無い
21. 匿名処理班
物体Xのオレノイヌダーは、触手の動きは赤いエアーホース繋げてコンプレッサー回してるのかと思ってた
エアー工具作業していてカプラーが壊れて取れるとあんな動きする
22. 匿名処理班
※7
キングコングは アルゴ探検隊と同じストップモーションで
ゴジラはキングコングを見た円谷さんがこんな映画作りたいなーでもストップモーションとかやるお金ないから怪獣の着ぐるみで撮ろう
みたいな話を聞いたことがある
23. 匿名処理班
狼男に変身するシーンなら水谷豊の「バンパイヤ」もなかなかだと思う。
24. 匿名処理班
トロン好きだった、シド・ミードのデザインも良かったし。
まぁ懐かしむべき未来、デッドフューチャーなのかもしれないけど。
25. 匿名処理班
CGも物によってはかえって嘘くさく見えるときもある
プラクティカル・エフェクトは確かにCGによって少なくなるだろうけど消えはしないだろうな
※5
その意見を裏付ける証拠は?
26. 匿名処理班
昔は「いったい何をどうしたらこんな映像撮れるの!!??」
っていう純粋な驚きがあったよね
素晴しいアイディアと熱意のこもった工夫に
本物っぽく感じられる臨場感があった
今はどんなに本物っぽく見えても
「ずいぶんCGにお金かけてるね」
という感想が先に来るのが悲しい
27. 匿名処理班
ダーククリスタル好きだ
マペットいいよね カーミットの表情も本当素晴らしい
28. 匿名処理班
トロンとアルゴ探検隊の映画好きだったなー。
29. 匿名処理班
>「マッドマックス 怒りのデスロード」などはCGをほとんど使用していないそうだ。
いや、かなり使ってますよ。メイキングをご覧ください。
30. 匿名処理班
こういうの大好き❗
CGより、味があって好きだったなぁ。
グレムリンとかグーニーズとかネバーエンディングストーリーとかそう言うのも大好きだったなぁ。
初めて見たときの感動は、今でも鮮明に覚えているよ。
またこういう、コンピューターに頼らない
手作業制作の映画が見たい。
31. 匿名処理班
※11
オレもダーク・クリスタルがこの中に、しかもトップ画像に使われていることが嬉しい。
あの世界観・アートワークは今見ても素晴らしいと思う。
32. 匿名処理班
昔はCGを使った怪獣描写は筋肉などの物理的に理に適った動きを再現することに
力を入れていたけど、最近は着包みっぽさを表現する方に力を入れている。
パシフィック・リムもゴジラ2014もシン・ゴジラもそう。
スーツアクターへのリスペクトもあるし、そちらの方が画になるんだよ。
33. 匿名処理班
部屋回転はフレッド・アステアもやってたね
見せ方はインセプションのそれに近いけど
34. 匿名処理班
画面から伝わる立体感や湿度温度はCGよりもはるかに優れていると感じる
やっぱり実物としてその現場に「在る」というのは重要なんだね。
35. 匿名処理班
エイリアン2のクイーンが入って無いよ
あれも実物大のスーツ作って人が二人横並びになって腕を動かしてたらしい
36. 匿名処理班
挙がってないけど有名どころでロボコップとかもなかなか
特撮的見どころ盛沢山よ