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『君の名は。』大ヒットの理由を新海誠監督が自ら読み解く(上)

新海誠・映画『君の名は。』監督インタビュー

週刊ダイヤモンド編集部
2016年9月22日
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──運命の人との恋物語に古典の要素を加えたということですね。『君の名は。』は、時代の空気感をうまくとらえていたこともヒットにつながったように感じます。キーワードを三つ挙げるとすれば、一つ目に東日本大震災を思い起こさせる「自然災害」があると思います。

 自然災害については、意図して取り入れたというわけではありません。むしろ、必然的に出て来たという方が正しい感覚です。2011年の東日本大震災をモチーフにしたわけではないのですが、それ以来、日本社会はきっと変わったのでしょうし、私たちの考え方も変わったのだと思います。

 「明日は我が身になるかもしれない」。少なくとも私はあの日以来ずっとその気持ちを持ち続けています。意識しているのか、意識していないのかの違いはあっても、多くの人にそういう気持ちが根底にあるのだと思います。

 それが映画のベースになっているので、一つのモチーフとして自然に生まれてきたのです。取り立てて災害を中心に語ろうと思ったわけではなくて、すっと入ってきたというわけです。

2016年のスマホ、SNSを
登場させたかった

──二つ目ですが、作品には「スマートフォン」が頻繁に登場し、LINEといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も重要な役割を担います。これらも2011年以降、日本の社会構造に変革を起こしました。

 スマホも災害の話に近い感覚ですね。2016年に公開が決まっていたので、2016年のスマホにしたいと思いました。そう考えると、LINEでやりとりをするのが日常になっているだろうと。私たちが普段使っているSNSと同じようなものを登場人物も使っているように設定しました。

 それも、自分と地続きの世界を見てほしい、映画の登場人物を我がこととして見てほしかったからです。そのためにはスマホの使用が必然だったというのが、シンプルな理由ですね。

──三つ目のキーワードが「男女の境界」です。作品は男女の入れ替わりを描いており、「女子力」と言った言葉も出てきます。2015年に東京・渋谷区で同性婚が事実上認められ、LGBT(性的少数者)もここ数年、企業が積極的に受け入れるなど、社会における男女の境界が曖昧になりつつあります。

 LGBTに関してのご指摘は初めて受けましたが、そのような意識はしていません。男女の入れ替わりは、あくまでも物語の仕掛けに使おうとしていたものです。逆にジェンダー(社会的な性差)はテーマにしないでおこうと決めていました。

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