アナル華道
「ケツの穴の小さい」と言う言葉がある。
これは物理的に肛門が細く、細いウンコしか出ないという意味ではない。
中には糸ミミズのようなウンコを出す人間もいるかもしれない。
いるだろうか? いたとしても、滅多にいないであろう。
問題はあくまでも、一般的用例としての「ケツの穴の小さい」である。
それは、人間的な器量に乏しく、器の小さい人間に用いられる言葉であろう。
端的に言って「ケチでしみったれ」と言う意味で使われる言葉。明らかに悪口雑言の類である。
しかしだ――
一方で「ケツの穴が大きい」はほめ言葉であろうか? そのような思いが胸に去来する。
高校1年生になったばかりの穴鳴 拡張は思うのであった。
己の肛門に握り拳を突き刺しながらの思考であった。
少なくとも、彼にとって「ケツの穴の大きい」ということは誇りであった。
楽々と己の握り拳を飲み込む肛門が誇らしかった。
小学校高学年でオナニーを覚えた。
中学に上がり、肛門を使った快楽を覚えた。ネットで見たのだ。
肛門深くに指を挿入し、前立腺を刺激する。その快楽を中学生で覚えた。
道具は使わない。
素手――
それによる肛門拡張と、刺激がたまらなかったのだ。
現在、高校一年生。
彼の肛門は己自身の手で拡張され、今や握り拳を軽く飲み込むまでになっていた。
かといって、ユルユルのガバガバではない。
周囲の筋肉も鍛えられていたからだ。
毎晩、肛門に拳をぶち込み、括約筋を締める。
括約筋の強さが快楽を強くすることを本能で知っていたからである。
365日、それを続けた。
インフルエンザの日も――
修学旅行で、同級生と一緒に寝たときも――
彼は鍛えた。
才能のある者は、その才能ゆえに、努力を惜しまない。いや、努力とすら思っていないのだ。
結果として、彼の括約筋は鋼となった。
その強さは、肛門に挿入したリンゴを一瞬で砕き、ジュースにすることが可能なくらいだ。
鋼の肛門――
穴鳴拡張の肛門は、そう言っても過言ではなかった。
高校1年生にして、その肛門は人類の域を超えようとしていたのだ。
ケツの穴が大きく、締りがいい――
それが、穴鳴拡張の誇りである。
そんな彼が高校入学と同時に「アナル華道部」に入部するのは運命であったといえよう。
アナル華道――
それは、主に肛門に花を活ける華道である。
その歴史は古い。
旧石器時代の石棺には、肛門に花を刺しこんだ形跡のある人骨が発見されている。
人類のアニミズムの歴史と共に歩んできた伝統的な芸術。
それがアナル華道であった。
古事記、日本書紀にすら、その原型の記述があるくらいなのだ。
(ああ、はやく部活をやりたい。肛門に花を活けたい)
彼は拳を肛門に挿入する。深く。前立腺に触れるまで。
その刺激で、おちんちんはオッキした。
それは生物として自然のメカニズムであった。
彼は自己の鍛錬を怠らない。寝る前、布団の中であっても、肛門に拳を挿入する。
前立腺をつまみ上げる。
それが、彼の習慣になっていたのだ。
◇◇◇◇◇◇
朝練である。
アナル華道部の朝は早い。
秋も深まり、季節は冬の色にそまりつつあった。
寒々しい体育館という空間に、フルチンで立つ男子高校生の集団。
それはアナル華道部の男子生徒たちであった。
フルチンこそが彼らのユニフォームであり、誇りである。
「肛門拡張、もうワンセットよ!」
顧問の女子教師の声が響く。
凛とした声。アナル華道の指導免許をもった教師であった。
まだ若いが優秀で美しいといっていい教師だった。
フルチンの男子高校生の群れの前にたっても全く顔色を変えない。
一流の指導者であるといえた。
「オッス!」
体育館にそれに応える野太い声が反響する。
鍛え上げられた括約筋から振り絞られたような叫び。
アナル華道部では「人間花瓶」と花を生ける者が分かれる。
伝統的に、人間花瓶は男性が務め、女性が花を生けるのである。
アナル華道部の男子生徒は、己の肛門を鍛え上げる。
肛門拡張訓練である。己の拳を難なく飲み込めるようにならねば、高校生レベルでは通用しない。
プロ・アナル華道家の中には、スイカすら飲み込み、それを砕くほどの怪物がいるのである。
砕かれたスイカにより作られたジュースはファンにとっては正にアムリタであった。
極めて高額で販売されているのである。それでも奪い合いであった。
「穴鳴のやつ、すげぇぇ…… なんて腸液だ」
生徒の一人が声を上げた。
拡張するアナル。強い括約筋。
そして、それだけではなかった。芳醇な腸液だった。
まるで、ルルドの泉を思わせる聖なる滴が、穴鳴拡張の股をヌルヌルながれていた。
彼は、腸液の分泌量でも、また超高校級の存在だったのだ。
腸液は腸壁を守る存在だ。
いかに、鍛えられた肛門とはいえ、何本もの花を活けられた場合、粘膜が傷つく可能性があるのだ。
それを守るのが腸液である。
そして、花の美しさを演出するのも腸液であった。
泉に活けられたかのような美を造りだすには、芳醇な腸液が必須であったのだ。
「じゃあ、チングリ返しの体勢になって、ふたりひと組で撃ちこみ開始」
「オッス!」
チングリ返しとは、でんぐり返しを途中で止めたようなポーズである。
ケツの穴を天に向け、そこで静止する。
手で足を抱え、ポーズを決める。
人間花瓶としての基本ポーズといえた。
ひとりがチングリ返しの体勢となり、もう一人が空手の正拳突きのように、肛門に拳を叩きこむ。
その拳を、飲み込む肛門。
グボッ、グボッ、グボッという湿った音が響くのであった。
そして、生徒たちも声を上げる。
「アゥゥゥゥ!! アゥゥゥゥ!! アゥゥゥゥ!! アゥゥゥゥ!! アゥゥゥゥ!!」
肛門に拳を叩きこまれる生徒の声。まるで、快楽と苦痛の境界線で、身をよじるかのような叫びであった。
それはまた、美しい青春のきらめきの一瞬でもあった。
「あああ! バカ、射精しやがった! この根性なしが!」
それは恥ずべき行為であった。
アナル華道にとって、オチンチンから精を漏らすことは厳禁である。
肛門の奥の前立腺刺激により、エレクチオンし、射精が促される。
それは、保健体育でも習う常識ではあった。
しかし、アナル華道は「神事」という側面も持っているのだ。
排出物を出す穢れた肛門を美しく穢れのない花で飾る。
そのような意味があるのだ。
『ちはやぶる神の見る目に晴れがまし
身を捨ててこそいざらい清めし』
このように詠ったのは平安時代の歌人である。
いざらいとは、肛門のことだ。
身を捨て、肛門を清めることが、神の目からも誇らしく見えるというと詠ったものである。
原始的なアニミズムではあったが、それはいまだに伝統として「アナル華道」の中に息づいていたのだった。
そのような場面での穢れの存在ともいえる射精は禁忌である。
「すいません…… でも、先輩の拳がいい感じで奥にガンガンあたるんでつい……」
「バカ、それを耐えるのが、アナル華道だろうが! 女子に花を活けられたらこんなもんじゃないぞ!」
「うッ……」
射精したのは穴鳴と同じ1年であった。
「女子に花を活けられたら――」先輩はそう言うが、1年では女子に花を活けられるなどということはほぼない。
ケツ穴を鍛えまくる毎日なのである。
ああ、いつの日か――
女子高生の嫋やかな指が持った華――
それが、己の肛門に突き刺さることを夢見る。
それが、アナル華道部の1年男子の全体的な思いであった。
人間花瓶として、天才的な素質を持つ少年。
穴鳴拡張にしても、その思いは同じであった。
◇◇◇◇◇◇
放課後。
アナル華道部は体育館ではなく、アナル華道室に集まっていた。
40畳ほどの畳が敷かれた部屋であった。
部員たちが正座をしている。
男女合わせ50人以上の部員がいる。
アナル華道は「クールジャパン」として海外でも人気を集め、世界レベルの大会まであるのだ。
小さな声で生徒たちが話していた。
「今日は、プロの先生が来るんだろ」
「誰が来るんだろう……」
一年男子の間でも、噂になっていた。
プロのアナル華道家が指導にやってくるのだ。
「菊門アナスキシア先生だって話だぜ」
「えッ!」
驚きの声だった。
当然だった。
部員の話を聞くとも無しに聞いていた穴鳴拡張も、ドキリとした。
(菊門アナスキシア先生――)
それは、アナル華道の世界でも超スターである。
北欧系の血を引く日本人。
まだ、30代そこそこの年齢で、人間国宝にまで指定されている存在だった。
アナル華道をする人間にとっては神にも等しい存在だった。
「なんで、そんなすごい人が……」
「なんでも、顧問の大学時代の先輩らしい」
「マジかよ……」
「すげぇなぁ。俺もケツ穴に花を活けられたところを見てほしいぜ。指導してくれねぇかなぁ……」
「俺ら一年には関係ないよ。どうせ、見学だろ」
穴鳴拡張の胸はときめいていた。
見せたい。自分のアナル華道を、菊門アナスキシア先生に見せたい。
ジリジリと燃えるような思いが胸の内に生じる。
しかしだ――
一年生にその機会はないであろうという、諦観も同時に存在した。
穴鳴拡張は、肛門のキレ、パワー、拡張性において素質の高さを評価されてはいた。
次世代のエースであろうと目されていた。
しかし、1年であることは変わりはない。
1年がいきなり人間花瓶に抜擢されることはほとんどなかった。
それが伝統なのである。
「こら、一年静かにしろ!」
部長が声を上げた。
超高校級のアナル華道家として、すでに複数の家元、つまりプロや大学から誘いを受けている存在。
彼のケツラインの美しさ。
チングリ返し時のバランスの良さは、プロからも即戦力と思われている。
更に、肛門の拡張性や括約筋の力も高い。
信じられない量の花を刺しこまれても、それを支えた。
全国高校芸術展では、文部科学大臣賞を受賞している。
部活内の存在として、穴鳴拡張が目標としているアナル華道家だった。
そして、やってきた。
顧問の女教師と一緒にやったきたのであった。
菊門アナスキシア先生だった。
アナル華道部の全員が息を飲んだ。
美しかった。
菊門アナスキシア先生は凄まじい美形だった。
それは、ネットやテレビなどで知られていたことであったが、リアルでみたときのオーラは格別だった。
スラリとした長身。
北欧系のハーフらしく金髪だった。
穴鳴拡張も、その美しさに見とれていた。同性であることを忘れるほどの美麗な存在がそこにいたのである。
「えー、今日は、プロ・アナル華道家の菊門アナスキシア先生に、皆さんの作品を見てもらいます」
顧問の女教師が言った。その声もかなり緊張しているように聞こえた。
「先輩、いえ―― 先生お願いします」
「ふ、いいですよ、先輩で」
優しげな笑みを浮かべ、菊門アナスキシア先生は言った。
先輩後輩の間であるという噂は本当らしかった。
菊門アナスキシア先生は生徒たちに向かい一礼をした。
その所作ですらため息が出るほど美しかった。
そして、彼は口を開いた。
「アナル華道―― 2000年の歴史。それを受け継ぎ次世代へつないでいくのは、若いキミたちです。今日はじっくりと、作品を鑑賞させてもらいたいと思います」
声まで美麗であった。
主人公ではないが、こう主人公のライバル的なクールな美形キャラ的な声音である。
その声を聴いたとたん、女子生徒の何人かと男子生徒ひとりが失禁して崩れ落ちた。
それほどの、艶と魅惑のある声だったのだ。
そして、3年生を中心とした部員が花を活けはじめるのであった。
◇◇◇◇◇◇
まずは男子はフルチンである。
これは、古来より連綿と続く伝統だ。
畳の上ででんぐり返しを途中で止める体勢となる。
尻を上にし、人間花瓶となるのである。
鍛え上げられた肛門。アヌスを天に向ける。
そして、ペアを組んだ女子生徒が前に座り、肛門に花を活けていくのだった。
ブスブスと突き刺さる花の茎。それは、直腸を通過し、前立腺をダイレクトに刺激する。
やがて、男子高校生のおちんちんは怒張し、パンパンにエレクチオンするのであった。
それは、生物学的な理論上当たり前のことである。
古代において――
不浄なるケツ穴に花を挿すことで、生命を生み出す器官が大きくなる反応は、穢れが清められたと考えられたのである。
そして、その穢れを体内で浄化することが大事であった。精を放つことは厳禁である。
いかに、前立腺にダイレクトな刺激があろうともだ。
さかさまになり、人間花瓶として花を活けられる男子高校生たち。
それは、まさに荘厳であり、神事というしかない美しさを持っていた。
(先輩、すごい。ヒマワリを挿すのか――)
部長だった。
温室栽培された巨大ヒマワリ。茎の直径は5センチはあるだろう。
それがぶっすりと、肛門に突き立った。
超高校級華道家といわれる部長でなければ、支えきれない花である。
凛としたヒマワリがケツ穴に突き立ち、その存在感を示すのであった。
その肛門にはヒマワリを軸として、様々な種類の花が突き立っている。
そして、芳醇な腸液が泉のごとく流れ出している。
朝露のように葉を湿らせ、キラキラと輝く。
あふれ出す腸液は、会陰部からおちんちんへと伝わり、滴となり畳にたれ流しとなる。
そこに泉を作るかのように。
上級生のアナル華道の作品が完成した。
ずらりと並んだ、男子高校生のケツ。
思春期真っ盛りの男子のケツ。
それは、いまや人間花瓶として、花を活けられる存在になっていた。
美しかった。
言葉がでない。
しかし――
穴鳴拡張は、自分であれば…… と言う思いが湧いてくる。
負けない。今の自分は、上級生以上の人間花瓶となることができるのではないか?
そのような思いも同時に胸の内にあったのだ。
それは、チクチクとする嫉妬といってもいい気持だった。
「なかなか、素晴らしいです。さすが、名門高校のアナル華道部の生徒たち、よく鍛えらています」
妖艶ともいっていい笑みを浮かべ、菊門アナスキシアは言った。
「それでは、プロである。私も人間花瓶となってみましょう」
そう言うと、菊門アナスキシアはハラリと服を脱いだ。
和服なので、帯をとくだけで全身が露わとなった。
(なんて、キレイな…… すごい。これがプロ)
穴鳴拡張は、息を飲む。
無駄な筋肉などどこにもない。そして、ハリのあるおしりのライン。
トンっと、一瞬で尻を天に向け、人間花瓶となるアナスキシアだった。
これが、人の技であろうか、そこに出現したのは、ひとつの芸術品であった。
それは神の創りだした至高の花瓶であった。
「お願いします」
「は、はい――」
顧問の女教師が花を活けていく。
彼女も免許を持っている素人ではない。しかし、人間国宝という存在。
いかに、先輩、後輩といっても、相手はそのような存在なのだ。
菊門アナスキシアに花を活けるのは、凄まじいプレッシャーだった。
手が震えている。
「緊張しているのですか?」
「はい―― すいません」
「まとめて、ずぶっと挿し込みなさない。その花、全てを―― 一気にです」
アナスキシア先生が静かに言った。
その言葉を聞き、顧問の女教師は、用意された花をまとめて、ズブっと挿した。
「ああああッ」
声にならない様などよめき。
見学している生徒たちの目が釘付けになる。
無造作に肛門に突きたてられた花たちがウネウネと動き、生きているかのように位置を変えていくのだった。
括約筋の微妙な操作により、花の位置を調整していたのだ。
「もっとです。もっと、もっと大量にぶち込むのです。私のケツ穴を人と思ってはダメです。もっと乱暴に激しく叩きこむのです。肉の花瓶―― 私はそのような存在なのです」
アナスキシア先生が催促した。いや、催促というよりは「おねだり」という表現がしっくりくるのではないか。
肛門に花を突き立てられたい。もっと、更に―― まるで肛門がそう主張しているかのようだった。
そして、ドカドカと花が突き立てられる。
その量がケタ違いだった。
超高校級といわれた部長のヒマワリが貧弱に見える。
まるで、花で構成された密林のごとく、尻は満開となるのであった。
さらに、腸液は噴水のように噴き出す。
まるで、聖なる泉の湧水のように―― ザバザバと湧き出すのであった。
無限に湧き出るアムリタ――
そのような腸液だった。
女生徒がゴクリと唾を飲む音が聞こえる。
飲みたいのだ――
分かる。
あの先生のアムリタのような腸液を飲みたい。
その思いは、この場にいる者ほとんどに共通する思いだった。
しかし、ひとりだけは違っていた。
穴鳴拡張だった。
たまらなかった。
穴鳴拡張は、思わず立ち上がっていた。
「先生! ボクも、ボクも花を活けて欲しいです。肛門に花を大量にぶち込んで欲しいのです」
言ってしまって、しまったと思った。
1年生の自分がこんなことを言ってしまうとは――
「穴鳴! 1年にはまだ早い! ダメだ。鑑賞することも、アナル華道の道だ」
肛門にヒマワリの花を挿されたまま、部長が言った。
ブルブルとヒマワリの花が震える。
怒張したオチンチンが今にも顔にくっつきそうだった。
その間も腸液が滴となり、流れ出しているのだった。
「で、でも部長…… 僕も……」
「オマエの才能は認める。おそらくは、俺以上の逸材かもしれん。しかし、伝統は伝統だ――」
「いいではありませんか。やらせなさい。私は見てみたいです」
菊門アナスキシア先生が静かに言った。
一瞬、沈黙がその場を支配する。
「見てみたいです。この子の人間花瓶。そこに活けられた花を――」
彼は静かに、そして歌うように言った。
逆らえなかった。いかに部長とはいえ、彼の言葉には黙るしかなかったのだ。
肛門を花の蜜林とし、芳醇な腸液を流す存在。彼は神に最も近い存在といえたのではないだろうか。
その言葉は、預言者の神託のようなものだったのかもしれない。
「穴鳴…… 特別だ。今回だけ、オマエも人間花瓶になってみろ。しかし、半端は許さんぞ」
部長は言ったのであった。
その言葉には、次世代のアナル華道部を担う逸材に対する様々な思いが込められていた。
「はい! 部長!」
穴鳴拡張は、くるりと尻を天に向けた。
柔軟な肉体。そして、真っ白く傷一つない尻。
思春期の少年の美しい尻がそこに出現したのであった。
「ほう……」
菊門アナスキシアが声を上げた。そこには、称賛の色があった。
「先生、ぶち込んでください! ありったけの花を! ボクの肛門に! ボクは花瓶です! 花を活けられる花瓶なのです!」
尻穴をくぱぁと開き、まるで意志をもったかのように動かす。
それは、肛門が美しき花をおねだりするかのような、光景であった。
そして、女子生徒たちが、ドカドカと余った花を彼の肛門に突っ込んで行く。
余った花である。それほど立派な花は無い。
まるで、雑草やペンペン草のようなものまで、肛門に突きたてられた。
(足らない。こんなんじゃ、ボクの肛門は満足できない)
おちんちんが大きくならないのだった。
中学時代から、アナル刺激によるオナニーを続けていた穴鳴は、生半可な刺激ではおちんちんまで響かなかった。
「もっと、大きな花はないんですか」
「もう、用意している花はないわ……」
顧問の先生が言った。残念そうであった。
「え! でも、もっと欲しいんです。ボクの肛門がもっと欲しいとおねだりしているのです! 先生!」
「でも……」
「掃除用具―― ここには、掃除用具はないのですか?」
菊門アナスキシアが静かに言った。
なにを言っているのか?
掃除用具――
その言葉の意味はほとんどの者に理解できなかった。
しかし――
穴鳴拡張には、分かったのだ。
「先生、掃除用具をボクの肛門に突っ込んでください!」
「え? でも……」
ふっと笑みを浮かべ、菊門アナスキシアが言葉を紡ぎ出した。
「花とはなんでしょうか? 野に咲く花を肛門に活ける―― それはなぜでしょう。花であること、その命を奪い、肛門に突き立てる。その本質はなんでしょう?
花―― それは穢れを祓う存在としての象徴なのです。
生きた花に拘るのは、アナル華道家として、視野がせますぎます。肛門にぶち込める物は全て花なのです。穢れを祓い、己の肛門の力で花に見せる。それが、美という物なのです」
まるで、教え諭すような菊門アナスキシアの言葉であった。
彼の肛門がプシューッと音をたてた。
腸液が噴出したのだ。その滴がキラキラと空間を舞っている。
光が七色に分解され、虹が出来あがる。
「分かりました。皆さん、掃除用具をもってきなさい!」
「はい!」
顧問の指示で女子生徒たちが動き出した。
そして、持ってきたのだった。
モップ、ホウキ、チリトリ、バケツ、そして、便所用のグッポンまで手にしてる生徒もいた。
それらの掃除用具が次々と、穴鳴拡張のケツ穴に叩きこまれていく。
「ああああああぁぁぁ――ッ!!」
彼は、清廉な思春期男子にしか出せない声を上げた。
女子高生の手で、己が肛門に掃除用具をぶち込まれる――
それは、叙情的な思いをかきたてる幻想をその場に展開するかのようなものだった。
美を意識する感覚が肉の内に溶けだし、己の存在が何かに変質していくかのような錯覚を覚えた。
そして、フルチンのオチンチンがどんどんと怒張する。それはまた、美であった。
フルエレクチオン。
完成であった。人間花瓶・穴鳴拡張が完成したのだ。
掃除用具と雑草のような植物をブチこまれたケツ穴。
その重量を彼の肛門はしっかりとグリップしていた。
半端な括約筋の強さでは無かった。
ただ花だけを活ける――
それだけでは、表現できない「わび、さび」「ものあわれ」と言うべき物。
無造作に突き立った、モップや便所グッポン、ホウキ、チリトリがそのような風情を演出していたのだ。
英語で表現するならば、エクセレント――
フランス語で言うならば、トレビアン――
そこに、存在する穴鳴拡張は、そのような存在だった。
「素晴らしいです―― しかし、まだ……」
そう言うと、ポンと菊門アナスキシア先生が立ち上がった。
肛門に突き立った大量の花はまったくこぼれない。
括約筋がしっかりと保持しているのだ。
そのまま、華麗といっていい歩みで、穴鳴拡張のところまで進んだ。
「ジッとしていなさい―― これで完成です」
そう言うと、菊門アナスキシアは、自分の肛門に刺さっていたチューリップを1本抜いた。
「あああ!! 先生そこは! ああああああああああああああああああああああああ!!」
甲高い声を上げる穴鳴拡張。
菊門アナスキシアは、穴鳴拡張にチューリップを刺した。
菊門アナスキシアの肛門、腸液でヌルヌルとなった茎がプスっと穴鳴拡張に突き立ったのだ。
肛門では無かった――
そこは肛門ではない。
おちんちん。おちんちんの先に、それを突きいれたのだった。
天才的な外科医のような正確さで、尿道を捉え、チューリップの茎を突っ込んでいた。
一気にだ。
おちんちんの先に、一輪のチューリップが咲いた。
「古来より、尿道への一輪挿し。それも、アナル華道の神髄といわれています」
菊門アナスキシアは静かに言った。
「ああああああ、先生、先生。ボクは―― ボクは……」
言葉がでなかった。
穴鳴拡張の思い。様々な思い。それを言葉にすることができなかったのだった。
肛門に刺さった掃除用具。
オチンチンの先のチューリップ。
それは、上級生の造り上げたアナル華道のどの作品よりも、美しかったのだ。
見学の部員たちを沈黙が支配していた。
真の美しさ。それを前にして、人には言葉による表現などできはしなかった。
口にした瞬間、それは偽物となり、思いのデッドコピーとなるしかなかったのだ。
「キミの名は?」
「穴鳴拡張です」
「いい名だ。卒業したら、私のところに来なさい――」
それは、出会いであった。
ふたりの天才の会遇――
その瞬間、アナル華道は新たなるステージに向かうことが約束されたのであった。
■参考文献
性タブーのない日本/橋本治
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