近年、観光収入の増大や地域再生を目指し、都市が主催する文化事業が世界各地で開催されています。1990年代から世界の注目を集め、現在の文化都市ブームの起点となったのが「欧州文化首都」と呼ばれるEUの事業です。30年以上続くこのEU事業の今を見つめ、都市の祝祭の現代的な役割を考えます。
都市がテーマパークに
注目される欧州文化首都
1990年、スコットランドの工業港湾都市グラスゴーで「文化が経済を牽引する」都市再生の成功事例(※1)が次々に起こりました。これをきっかけに、当時は「欧州文化都市」と呼ばれていたEU事業に世界の注目が集まることになったのです。
欧州文化首都(ECC: European Capital of Culture) (※2)は、EU加盟国から毎年 2 都市 (2006 年までは 1 都市) が文化の首都として選ばれ、選定された都市は独自のテーマを掲げ、市民の参加を前提とする数々の芸術文化イベントを1 年間にわたり開催します。開催テーマの設定は主催都市が練りに練ったもので、それに呼応して、いわば都市がテーマパークとなるのです。
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近年の欧州文化首都(以下ECC)は、都市のイメージ刷新、 国際社会への情報発信など、開催都市とその市民の共創から生まれたさまざまな成功事例が世界から注目されています。このECCの成功に続こうとする取り組みには、アメリカ大陸文化首都、カタロニア文化首都、イスラム文化首都、UK文化都市などがあり、近年はASEAN文化都市、2014年からは日中韓3ヵ国による東アジア文化都市も開催されています。さらに世界中でアートフェスティバルが数多く開催されているほか、日本各地でも地域の芸術祭が開催ラッシュとなっています。
(※1)1990 年に「欧州文化都市」に選定されたスコットランドの産業港湾都市グラスゴーは、コンベンション関連施設の整備と新たな観光資源の開発に成功し、衰退した工業都市から「新たな文化都市」へとイメージの刷新に成功し世界の注目を集めた。
(※2)1983年11月23日、ギリシャの文化大臣メリナ・メルクーリ(当時)はアテネのザッペイオンに欧州共同体の文化大臣を集め、「欧州文化都市(European City of Culture)」の必要性を提唱し、1985 年、アテネが初回の開催都市となった。以降、各加盟国の文化担当大臣会議の協力による多国間事業として実施され、1999 年には欧州文化都市に共通政策としての地位が与えられた。同制度は 2005 年に「欧州文化首都(European Capital of Culture)」と改称された。